江戸時代

語源がムゴい。"土壇場"は罪人を斬首する刑場の意味だった

「土壇場」はもともと罪人を横たわらせた場所だったという雑学

生き胴の図。下の台が"土壇場"…。

日本語は、世界でも面白い言語だと評価されることが多い。ひらがな・カタカナ・漢字を使い分け、慣用句や表現が無数に存在する。

たとえば、雨にまつわる言葉は1200種あまりもある! しとしと・どしゃ降り・夕立・霧雨・梅雨・狐の嫁入り…これらは、たいていの外国語ではまとめて「雨」とひとくくりにされてしまう。

日本で生まれ育ち、日本語を母国語としている私たちには当たり前のことだが、こんな複雑な言語を習得しようとする外国人はさぞかし苦労するに違いない。

しかし、そんな日本人だって「言ったことはあるが見たことはない」ものがある。

たとえば、スポーツを観戦していて「土壇場で一発逆転!」とか、「首の皮一枚つながりました!」とかアナウンサーが興奮しながら実況しているのを聞いたことがあるだろう。

土壇場がどんなものか見たことないし、「首の皮一枚ってもう死んでるやんけ!」と思う人がほとんどのはずだ。この不思議な言い回しは、どのようにして生まれたのだろうか?

今回の雑学では、「土壇場」の由来についてお教えするぞ!

【歴史雑学】「土壇場」はもともと罪人を横たわらせた場所だった

「土壇場」とは斬首の際、罪人を横にさせた場所だった!

【雑学解説】「土壇場」は斬首のための土台

江戸時代の刑罰は、身分や罪状によって細かく分けられていた。たとえば、切腹は武士だけに許されたいわば名誉の死、放火犯は火あぶりにされるのが決まりだった。

平民が対象の死刑のうち、もっとも軽いのは「下手人(げしゅにん)」というもので、いわゆる斬首の刑である。

この次が「死罪(現在の死刑という意味ではない)」で、斬首の刑に処した後、死体を試し切りに使う。主に盗みや詐欺をはたらいた者に科せられた刑罰だ。

この死罪は、別名「生き胴」という処刑方法としても伝わっている。これに使われるのが土壇場だったのだ!

そもそもの「土壇場」とは文字通り、土を盛って築いた土台のこと。「死罪」および「生き胴」は、刑場に60cmほどの土を盛って「土壇場」を作り、そこに手足を縛って目隠しした罪人をうつぶせに横たえる。そして、2名の処刑人が同時に首と胴体を切り離すのだ!

刀の切れ味を確認する試し切りと、罪人の処刑を一緒にやるとは…なんとも物騒な一石二鳥である。

こうして「土壇場」は「斬首の刑場」を暗喩する言葉となり、それが転じて現在のような「どうにもならない、せっぱ詰まった状況」に使われる表現となったのだ!

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【追加雑学】みんな知らずに使ってる?語源が怖~い言葉

「土壇場」の語源は、残酷な歴史にまつわるものだった! この他にも、語源が怖~い言葉はたくさんある。今回はせっかくなので、「土壇場」と同じく、首にまつわるラインナップをそろえてみたぞ!

首の皮一枚でつながる

「ぎりぎりセーフ」の意味で使われるこの表現、実は切腹にまつわる語源をもつ。

切腹には決まった作法があり、まずは横にまっすぐ腹を切る。さらにみぞおちに刀を突き立て、へそまで一気にかっさばく…という、想像を絶するもの! しかし実際は、腹を横に切った時点で、あまりの痛さにのたうち回って死ぬ武士が多かった。

切腹は武士にとって名誉の死なので、ここで醜態をさらすのは武士の恥だし、なにより苦痛が長引くのは気の毒である。そうした事情から、江戸時代中期以降は、刀を腹に突き刺した時点で、背後から首を落として絶命させる「介錯(かいしゃく)」を行うようになったのだ!

この介錯で重要なのは、首の皮一枚で頭と胴体がつながっている状態にすること。そうすれば、頭の重みで体が前のめりになり、首が飛んでいくこともない。見苦しい状態にならずに済むのだ。

このように「首の皮一枚でつながる」とは、もとは文字通りの意味であり、ひいては「なんとか名誉を保った」という意味の言葉でもあったのだ!

槍玉に挙げる

「1人だけが非難や攻撃にさらされる」という意味の表現は、現代人なら卒倒するような光景が由来である。なんと、討ち取った敵の首を槍で突き刺し、「俺の勇姿を見ろ~!」とばかりに高く掲げて見せびらかしているのだ!

「槍玉」の玉とは、お手玉のことで、槍を自由自在に操っている様子を表している。敵を討ち取ると、その首を「やった、やったー!」と槍から槍へとぽんぽんバトンタッチして、士気が上げているというわけだ!

戦が日常的だった時代ならごく当たり前の光景なのだろうが、現代の感覚でいうとスプラッタな世界である…。

寝首を掻く

「油断している敵の不意を突いて陥れる」という意味。なんと、もとは夫を暗殺する妻を表した言葉である!

戦国時代、武家社会では敵方に人質として娘を嫁がせる政略結婚が当たり前だった。その際、娘に小刀を渡し、「これで寝ている夫の首を掻き切れ」と指示していたのだ!

「美濃のマムシ」と恐れられた斎藤道三(さいとうどうさん)の娘・濃姫(のうひめ)も織田信長に嫁ぐ際、父から「信長が本当にうつけだったら首を持って帰れ」と言われたそうだ!

ちなみに、同じく戦国武将・宇喜多直家(うきたなおいえ)はこの手が得意で、娘や姉妹・養女を使い、数多の武将を葬ったとか…。

雑学まとめ

今回は「土壇場」の由来についての雑学をご紹介してきたが、「なるほど!」と思っていただけただろうか?

「首の皮一枚つながった」など他の言葉も合わせて、実際には決して見たくない残酷な光景がもとになっているが、それにも関わらず、今も使われていると思うとなんだか不思議だ。

ちなみに、「ドタキャン」のドタも土壇場から来ている。芸能界や旅行会社で使われていた業界用語が、1990年代に一般化したそうだ。

本来の意味からとうに外れてしまった「土壇場」から、さらに新しい言葉が生まれるとは、日本語は本当に面白い!

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