機動武闘伝Gガンダムは、富野由悠季以外が監督を務めた最初のガンダム作品である。ガンダムといえばリアルな作風で新しいジャンルを確立した作品だが、Gガンダムはそれまでと全く違う世界観の作品だった。
登場するロボットのほとんどがガンダムという点も視聴者を驚かせることになったが、なんといっても1番の衝撃は、生身の人間がモビルスーツを破壊してしまうことである。今回は、そんな驚きのガンダム作品についての雑学をご紹介しよう。
【サブカル雑学】生身の人間がモビルスーツを破壊するガンダム作品がある
【雑学解説】Gガンダムはパイロットの方がガンダムより強そうといわれている
Gガンダムは1994年から放送された作品で、格闘技や武術の達人がガンダムに乗り込んでガンダムファイトという名前の格闘技大会に参加するストーリーである。
ガンダムに登場するロボットはモビルスーツと呼ばれることが多いが、ガンダムファイトに参加するガンダムはモビルファイターという名前だ。また、モビルファイターのパイロットはガンダムファイターと呼ばれている。
驚くべきは、このガンダムファイターの強さが異常なのである。なんと、主人公のドモン・カッシュは登場してすぐに、武装したマフィアを一人で蹴散らしている。
その後もガンダムファイターは、人間離れした強さを持っているのが当たり前として描かれた。とはいえ、序盤のころはいくらなんでも急所に銃弾が当たったら死ぬ程度の強さだと思われていただろう。
しかし、ドモンの師匠・東方不敗マスターアジアが登場したことで、その認識が間違っていたことを思い知ることになる。このマスターアジアは、初登場シーンでモビルスーツと生身で戦ってしまうのだ。
さらに、敵のモビルスーツの撃つ銃弾を素手で掴んだあげく投げ返すという驚きの展開になる。当然だが、モビルスーツの撃つ銃は大砲並みの口径である。
このあと、ごく当然のようにモビルスーツを撃破してしまう。しかしGガンダムの世界では、人間がモビルスーツより強いのは驚くほどのことではないのだ…。
その後のエピソードでは、ドモンとマスターアジアが生身で戦うシーンも描かれている。そのシーンでは、なんと振り下ろされた刀を真剣白刃取りで受け止めた衝撃で、モビルスーツが吹き飛んでしまう!
一応、さすがのガンダムファイターも生身で戦うよりモビルファイターに乗った方が強そうな雰囲気として描かれているが、明言されていないので真相は不明だ。
スーパーロボット対戦ではパイロットが生身で戦闘に参加している
実際、シュミレーションゲームのスーパーロボット大戦では生身のガンダムファイターがユニットとして登場し、生身の方が強いとプレイヤーからツッコまれている。下の動画はマスターアジアがゲーム中に登場した回のものである。
さらにゲーム内でもガンダムに乗る必要があるのかを指摘され、乗らないとガンダムファイトができないという珍回答が飛び出している。つまり、生身でも十分に戦えることを暗に認めてしまっているのだ。
ちなみに、このゲームでは生身のユニットのため、HPが非常に低く設定されている。しかし、初めてスーパーロボット大戦にガンダムファイターがユニットとして登場した時は、ガンダムよりHPが高く設定されていたという。…なんという生命力。
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【追加雑学①】放送当時、Gガンダムの監督は身の危険を感じていた?
なぜ、パイロットが生身でモビルスーツを破壊するような斬新なガンダムが生まれたのだろうか? もともとは、オーソドックスなガンダムを作る計画があったという。
「ポルカガンダム」というタイトルまで決まっており、火星に移住した人類が地球に戻ろうとして起こる争いを描く予定だったという。しかし、この企画は中止になってしまった。
というのも、当時は小学生を取り込むための新しいガンダム作りが望まれており、斬新なガンダムを作る方向に方針を転換したのである。こうして、のちに原作クラッシャーと呼ばれるようになった今川泰宏が監督を担当することになった。
今川泰宏が監督になった経緯は、ガンダムの生みの親・富野由悠季からの指名とも、バンダイから声がかかったからともいわれている。
「今までのガンダムを全てぶち壊すような作品」と指示があったこともあり、格闘ゲームの要素も取り上げられ、ガンダム同士が殴り合い戦う作品が完成したのだ。
ちなみに、ポルカガンダムの一部の設定は、のちにサンライズのアニメ「カウボーイビバップ」に受け継がれることとなる。
大変な批判があった
とはいえ、当時のガンダムのイメージからあまりにかけ離れた作品だったため、放送が始まってから3ヶ月の間は視聴率も非常に低かったという。
従来のファンからは批判が殺到し、ガンダムへの侮辱といわれることもあったそう。今川監督は当時のことを、「刺されないか不安だった」と語っている。
もっとも、実際に脅迫状が届いたというわけでもないため、今川監督の発言は冗談半分だと思われる。しかし、ガンダムのファン層の気持ちを考えると、相当な批判があったことは間違いないだろう。
そんなGガンダムであったが、マスターアジアが登場したあたりから、徐々に視聴率が上がり始めた。従来のファンからも少しずつ受け入れられるようになったという。
Gガンダムは一見少年漫画のようなストーリーになっているが、宇宙移民や地球環境の問題など、ガンダムらしいテーマもきちんと織り込まれた内容になっている。そういった点が押さえられていることもあり、現在ではこの作品を高く評価している人も多いのだとか。
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【追加雑学②】Gガンダムのおかげで新しいガンダムが作りやすくなった
結局、Gガンダムは予定通り小学生のファンを獲得することに成功した。さらには、ガンダムに興味のないアニメファンからの評価も受けるようになったという。
ガンダムの関係者からは、Gガンダムのおかげでオリジナルのガンダムを作れるようになったと喜びの声があがり、なんと、自作も含めて作品を評価しないことで有名なあの富野由悠季でさえも、Gガンダムを評価しているというから驚きだ。
新しいガンダムを作る際は、Gガンダムを例に上げて「これくらい新しいものを作れ!」ということも珍しくないらしい。
ただし、褒める理由は全然違うものを作っているからで、「ガンダムじゃねぇけどな」という言葉が付け加えられるという…。
今川監督は、この後も原作を大胆に変更した作品を作ることで有名となった。ちなみにその際は、ガンダムファイターのように人間離れしたキャラクターが登場することが多い。
たとえば「真マジンガー衝撃!Z編」では、あしゅら男爵がマジンガーZを殴り倒すという驚きのシーンが描かれた。
実は、今川監督作品で巨大ロボより強いキャラが最初に描かれたのは「ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日 -」。
上の動画は、マスターアジアとジャイアントロボの衝撃のアルベルトが、スーパーロボット大戦で対決するシーンを紹介している。この2人は、声優が同じということ以外は接点がない。
しかし、同じ監督の作品のキャラ&超人的な強さの持ち主ということで、スーパーロボット大戦では因縁を持つ関係として描かれることが多い。
今川監督はもともと、ロボットに勝てそうなキャラクターを描いていたため、Gガンダムの展開は予想できたのかもしれない。
雑学まとめ
今回は、パイロットが強すぎるガンダム作品があるという雑学についてご紹介した。
高い評価を受けることが多くなった機動武闘伝Gガンダムだが、現在でも従来のファンからは賛否両論だという。とはいえガンダムの新しい可能性を広げ、より息の長い作品にしたのは間違いないだろう。
最初は不評だったのに、生身の人間がモビルスーツを破壊したあたりから人気が出始めたというのも面白い話である。
最初のガンダムはリアルなロボットアニメとして評価されたのに対して、リアルさを排除した荒唐無稽なガンダムが、さらなる長期シリーズのきっかけを作ったというのも興味深い。