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大工さんがトンカチを"玄翁(げんのう)"と呼ぶ由来は?

zatsugaku

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大工さんの工具の玄翁(げんのう)はもとは人の名前という雑学

トンテンカン! 小気味よい音を鳴らし、トンカチで釘を叩く勇ましい姿は大工さんのイメージそのものだ。

この大工さんが使うトンカチの種類の中に「玄翁(げんのう)」と呼ばれるものがある。一般の人は聞きなれないだろうこの呼び名の由来だが、実は、ある高名なお坊さんの名前だというのはご存知だろうか?

もとになったこのお坊さんについても触れ、雑学にしてみたぞ! 身近な道具のトリビアとして気軽に読んでほしい。

【歴史雑学】大工さんの工具の玄翁(げんのう)はもとは人の名前

秀吉くん
大工の工具の中で、人名が由来のものがあるらしいっすね。
信長さん
『玄翁』のことか?これは玄翁和尚(げんのうおしょう)という高僧の名がそのまま付けられたものなのだ。

【雑学解説】玄翁は曹洞宗のお坊さん

さて、この玄翁だがもとは徳の高いお坊さんの名前が使われている。この玄翁こと「源翁心昭(げんのうしんしょう)」は1329年~1400年頃に活躍した人物で、南北朝時代を生きたお坊さんだ

ちなみに南北朝は鎌倉~室町の中間あたりの時代であり、この時代を生きたほかの有名人物には、室町幕府を開いたあの足利尊氏などがいる。

話を戻すが、玄翁は越後(現在の新潟県)出身で18歳のころ曹洞宗の寺へと入り修行をつんだ、以降は日本中を行脚し、曹洞宗の布教に大きく貢献した人物なのである

ストイック坊主・玄翁

この玄翁和尚さん、実は曹洞宗入りするまでにも小坊主としての仏門経験があり、幼いときにはすでに仏教哲学の基本書(30巻!)を暗記するくらいストイックな人物だった

当初は真言宗の教えを修めたのだが、本人の希望で「ほかの宗派の教えも学びたい!」ということでその後、行脚しながら各地のえらいお坊さんを訪ねて教えをうけてまわった。

やがて18歳のときに出会った、ある高僧の教えに感銘し、そのお坊さんの宗派でもある曹洞宗の寺へと入ったという。

その後は寺で修業を積み、玄翁に教えを説いたさきの高僧からも「もう教えることないんだけど…」といわしめるほどの僧侶となる

秀吉くん
優秀すぎて師匠を超えちゃったんっすね~。

やがて玄翁は寺を旅立ち、ふたたび全国を行脚する旅の僧となったのだ。このころ玄翁はまだ20代前半という若さなのだから驚きだ。

その後各地を転々とし、日本全国でおよそ30余りの寺院を開いたらしい。ここまでのエピソードでも、玄翁和尚は努力を欠かさず、仏の道を追求した立派なお坊さんの一人ということが伝わったのではないだろうか。

こうして、仏道に生涯をかけ布教につとめあげた玄翁和尚は1400年、72歳ころに没したとされている。そのお墓は玄翁自身が開き、最後まで過ごした「※示現寺(じげんじ)」にある

※福島県、喜多方市にある寺。もとは空海和尚が開いたとされるこの寺を、のちに玄翁が再興し示現寺とした。本尊は虚空蔵菩薩(こくうぞうぼさつ)をまつっている。

ちなみにこのお寺近くには子宝・湯治の湯として知られた「熱塩温泉」があるのだ。なんと、この源泉も玄翁和尚が発見したとされている。温泉観光がてら、お寺を参拝するのも悪くないだろう。

信長さん
文字通り、熱塩温泉は温度が高く塩分が濃い温泉なんだぞ。

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【追加雑学①】殺生石の伝説

前半では玄翁和尚本人のことを紹介した。しかし、なぜトンカチが玄翁と呼ばれるようになったかという要の話はこれからなのだ。

これにはある伝説が関わっているのだが、みなさんは「九尾の狐」をご存じだろうか? 「白面金毛(はくめんこんもう)九尾の狐」とも呼ばれ、九つのしっぽをもつ妖狐であり、日本三大妖怪に数えられることもある有名な存在なのだ。

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実はサブカルチャー分野でも人気の大妖怪であり、マンガやゲーム内にこの九尾の狐が出てくる作品は多い。この九尾狐が美しい女性に化けて、ときの権力者に近づいたのち、たぶらかして悪さをしたという伝説がある。

そこで安倍泰成(あべのやすなり)という人物が九尾の正体を見破り退治したのだが、退治したさいにこの九尾の狐が石へと変化した

これが「殺生石」である。この石はものすごい妖気(毒素)を放って、周りの生き物の命を奪い取ってしまうというエグいシロモノで、まさしく生きているものを殺してしまう石として、人々に恐れられたのだった

信長さん
物騒な石があったもんだな。

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ここで我らが玄翁和尚の登場である。行脚の最中この殺生石を見付けた玄翁は、石の妖気を自分の法力をもって抑え込み、大槌で殺生石を叩き割ったという

この勇気ある凄い行動を人々はたたえて、和尚の名にあやかり殺生石を砕いた大槌を「玄翁」と呼ぶようになったといわれている。

そして玄翁和尚自身も、朝廷から功績をたたえられ禅師(高僧に与えられる位)を授かったのだった。

以上は昔話や古事にもある伝説だが、名残がつづいていることを証明するように、現在でも大工さんはトンカチの一種を「玄翁」と呼ぶのだ。

秀吉くん
玄翁和尚が殺生石を割った道具が由来だったんっすね~。

あくまで伝説ではあるが、この殺生石自体は現在の栃木県の那須に実在しているのだ(観光名所となっている)。

九尾の狐はおとぎの存在ではあるが、殺生石が存在することを考えてこの狐もひょっとすると実在したのかもしれない。

考えてみるとロマンがあふれる話だと思わないだろうか? しかも、話の中の玄翁は、法力を使ったりしてもはや超人である(伝説のくだりは諸説あるが、九尾の狐が登場するところや、玄翁が殺生石を壊したという話は、おおむね共通のものとなっている)。

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【追加雑学②】工具としての玄翁

まず、解りやすくいうと玄翁は槌(つい)の一種のことを指している。もっとも、この槌にもいろいろと種類があるのだが、両面がフラット(平面)な槌を玄翁と呼ぶことが多い

定義づけが難しくややこしいかもしれないが、玄翁をはじめとした叩く系の工具には形状のちがいや使い道などその種類はじつに豊富だ。

たとえばよく聞く「金槌」も槌系工具の一種で、金属製のものを指す。つまり玄翁・金槌・ハンマーなどは正確には同じ工具ではない(記事上は、玄翁を含めた槌の総称としてトンカチという言葉を使わせてもらっている)。

秀吉くん
え?違う工具なんっすか?ややこしいっす!!
信長さん
特定の分野の専門道具となると、なかなか一般人には区別がつきづらいものだよな。

もっとも、これ以上は工具自体の話になってしまうので割愛させていただくが、実際に街のホームセンター内のDIYコーナーをのぞいてみてほしい

多くの槌の中に商品名として「玄翁」が置かれていると思うので、機会があれば見てみるとよいだろう。

トンカチの使い方動画

トンカチの使い方や釘の打ち方を説明しているホームセンターさんからの発信動画だが、数種ほど玄翁とほかのトンカチも紹介されているので以下に貼っておこう。

秀吉くん
あ~、画像で見ると違いがわかるっすね~。

映像だと形状のちがいがよりわかりやすい。これからDIYを始めたい人は参考にしてみてはいかが?

雑学まとめ

もし身内や知り合いに大工さんがいたら「なんでトンカチのことを玄翁っていうか知ってる?」と聞いてみてほしい。

もしその大工さんが由来の話を知っていたら、素直に感心するべきだが、もし知らなかった場合はドヤ顔でこの雑学を教えてあげてもいい

ただし、大工さんに問わずこうした技術職人さんは経験豊富なほど、プライドが高い人が多い傾向がある。よって自分の扱っている道具の由来を、素人の人が得意げに話すことで不機嫌になる可能性もあるのだ。

相手が柔軟な人なら良いが、頑固一徹の人の場合、こちらの頭をそれこそ「玄翁」で叩きそうなくらい怒り出したら考えものである。

ちなみに、ここでのプライドが高いというのはけっして悪い意味ではなく、自身の仕事に対し誇り高いともいえるので、何かしらの職人さんが当記事を読んでも誤解しないでほしい。

信長さん
プライドは、男には必要なものだぞ。
秀吉くん
信長さんもプライド高いっすもんね。安土城を軽く越えちゃうくらいの高さっすよね、もうないけど。…って、あっ!ちょ…!!玄翁で頭叩くのはアウトっすよ!!

 

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