日本には由来はよく分からないけれど、縁起かつぎで食べられている伝統的な食べ物が多くある。知識がなくてもなんとなく食べている人が多いと思うし、食べるといいことがありそうだ。
あなたは「七草がゆ」を食べたことはあるだろうか? もし食べたことがあっても、春の七草をすべて言える人は少ないかもしれない。
実際に唱えるとまるで呪文のように聞こえるのだが、実は身近な植物も混じっていたりする。今回の雑学で七草の種類と由来を覚えて、無病息災な1年間を祈ってみよう!
【食べ物雑学】無病息災!春の七草は実は身近な植物
【雑学解説】平安時代から続く「節句」と「風習」が合体した習慣
春の七草を入れて炊いた「七草がゆ」は、1月7日に食べるものとして知られている。この日は「人日(じんじつ)の節句」にあたり、1年の無病息災と五穀豊穣を願う大切な風習として平安時代から行われはじめた。
もともと中国では、人日の節句は「誰かに刑罰を与えることがない日」として大切にされていた。また、7種の菜を使って「羹(あつもの)=汁物」を作る日としても知られていた。
この風習が中国から伝わり、「正月の7日の節句に7種類の野菜を使って汁物を作って食べると、邪気を払って健康になる」という形になったようだ。日本ではおよそ1000年以上前から七草の概念が存在している。
七草の種類
実際の七草の種類を見てみよう。知っている野菜も知らない野菜もあるはずだ。
- せり(東北では定番の香りがいい野菜。田んぼなどに自生している。)
- なずな(道端によく生えている通称「ぺんぺん草」。)
- ごぎょう(白い毛が生えて厚ぼったいずんぐりした草。春には茎の先に黄色い花が咲く。)
- はこべら(なずな同様道端によく生えており、小さな白い花が咲く。ハコベ、ひよこ草とも呼ぶ。)
- ほとけのざ(別名「田平子(たびらこ)」。10cmほどの長さで、冬の田んぼによく生えている。)
- すずな(スーパーでおなじみのカブのこと。)
- すずしろ(これもスーパーでおなじみ、ダイコンのこと。)
【追加雑学①】最古の文献登場は800年も前!?
1000年以上前から七草の概念が存在した日本だが、文献としてもちゃんと残っているのがすごい。
七草の記載が初めて登場するのは、鎌倉時代に執筆されたとされる『歌林四季物語(かりんしきものがたり)』。約800年前のもので、著者は鴨長明だ。なずな・おぎょう・すゞしろ・仏のざ・川な・くゝたちなどの記載がされている。
今とまったく同じ五七調の和歌のようにされたものは、約300年ほど前の『日本歳時記(にほんさいじき)』のようだ。「せり なづな 五形 はこべら 佛の座 すヾな すヾしろ これぞ七くさ」という歌が載っている。
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【追加雑学②】「若菜摘み」という風習も合体している
だれでも教科書で一度は目にしたことがあるだろう、万葉集や古今和歌集の歌。その中に日本古来の風習である「新年の若菜摘み」の風景が読まれている。
有名な和歌をふたつあげてみよう。
- 君がため 春の野に出でて 若菜摘む 我が衣手に 雪は降りつつ(光孝天皇 小倉百人一首)
- 春日野に 若菜つみつつ 万代を 祝ふ心は 神ぞ知るらむ(素性法師 古今和歌集)
見ていただければ分かるが、若菜摘みはかなり昔からあり、現代まで脈々と続いている。
1月7日に7種類の植物を食べるという風習と、新年に野に出て若菜を摘む風習が合体し、その時期に摘んだ植物を入れておかゆを炊くという現代のような形に落ち着いたようだ。
七草がゆは炊飯器で超簡単に作れる!
いまはわざわざ若菜摘みに行く必要も、鍋で煮込む必要もない。スーパーの七草がゆセットを買ってきたら、あとは炊飯器任せで超簡単に七草がゆが作れるぞ。
雑学まとめ
春の七草についての雑学を紹介してきた。なんとなく縁起かつぎで食べていたけれど、七草にこのようなに古いいわれがあるとは…。「人日の節句」は江戸時代の幕府公認行事。古くから大切に行われて来た「儀式」に由来する食事なのである。
また動画のように炊飯器で簡単に炊けるなら、おばあちゃんに頼まなくても自力で炊けそうだ。
七草がゆは正月料理に疲れた胃腸に優しい。栄養価やビタミンが豊富な植物ばかりなので、1月7日は胃腸を労らうためにも、七草がゆを炊くのがいいだろう。
この日ばかりは「人を刑に処すべからず」。夫婦喧嘩はほどほどに、仲良くおかゆを食べよう!