宝くじを当てて一攫千金! を夢見る人は少なくないだろう。宝くじなんて当たらないともよくいわれるが、そもそも買わなければ確率はゼロだ。
確率を増やすためにはたくさん買うしかない。というわけで何枚も宝くじを買ってリターンを狙う人も世の中にはいる。いやいっそ、売り場の宝くじを全部買い占めたら当たるかも……そう思う人もいるかもしれない。
もちろんそんなことをしても普通は赤字になるだけだ。ところが、歴史にはなんと宝くじを買い占めることで大儲けした人物がいる! なぜそんなことが可能だったのだろうか? 今回はその秘密についての雑学を紹介していくぞ!
【面白い雑学】宝くじをすべて買って儲けたヴォルテール
【雑学解説】ヴォルテールは宝くじの主催の失敗を見抜いて買い占めた
実は、当時フランス国家が発行していた宝くじは、確率調整に失敗していた。というのも、発行されている宝くじをすべて購入した場合、逆に100万リーブルの儲けが出るようになっていたからだ。
そんななか、ある日友人の数学者と一緒にヴォルテールが戯れに当選確率を計算してしまったものだから大変だ。
この宝くじは、買い占めたら逆に儲けることができる! そのことに気付いたヴォルテールたちは、急いで仲間たちと組んで借金をしまくって宝くじを買い占めることにした。もしも外れていたら歴史的大馬鹿者になっていたことだが、彼らの知性はそんなミスをしなかった。
しかし、発行していたフランス国家側もその企てに気付いた。当時の大蔵大臣により、即座に賞金は支払停止となり、ヴォルテールたちは詐欺罪で告訴されてしまう。
だが、ヴォルテールたちはあくまで運営側の調整ミスを突いただけで、悪意を持って人を騙していたわけではない。いくら当時のフランスが専制時代とはいえ、そんな無茶は通らなかった。
かくして、ヴォルテールたちは無事に無罪放免となり、見事50万リーブルもの大金を手に入れたのである。
ちなみに1リーブルは、現在の日本円に換算すると、大体2000円程度だといわれている。つまり100万リーブルはその2000倍の20億円相当、50万リーブルでも10億円相当となる! すべて買い占めてなおこの儲けというのだから豪気なものだ。
それにしても、これほど見事な計画を成功させたヴォルテールという男は、一体いかなる人物だったのだろうか? このエピソードからも彼の並々ならぬ知性と行動力が伺えるが、歴史的な活躍はそれに留まるものではなかった。
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【追加雑学①】評論家としても創作家としても活躍したヴォルテール
そもそもヴォルテールはペンネームで、本名をフランソワ・マリー=アルエという。強そうなペンネームと比べて優美で貴族的な名前だ。
しかしそんな本名とは対照的に、ヴォルテールは勇猛果敢で、政府にも歯に衣着せぬ批判を行う自由思想家として知られていた。
若い頃から、フランス政府への中傷を織り交ぜた詩を投稿しては国家権力に目をつけられ、22歳の若さにしてバスティーユ牢獄に投獄されてしまう。
ところが釈放後間もない1718年のこと、ヴォルテールは突如として多大な名声を得る。
というのも、ヴォルテールは政治批判と並行して創作にも旺盛に力を注いでいた。そして釈放された年が、まさにヴォルテールの書いた処女悲劇の初公演年でもあったのである。
これが大ヒット! 再公演回数は異例の45回と一世を風靡していたヴォルテールは、ついには投獄者から、摂政から金メダルを授与されるほどの名士へと出世した。
もっとも、1726年にはまたまた貴族とのトラブルにより、バスティーユ牢獄に逆戻りしてしまうのだが…。しかしすでに、そんなことを問題にしないほどに世間からの人気を得ていた。
そしてヴォルテールはフランスを代表する知識人にして創作家となった。
評論家としては、すでに名誉革命を経ていたイギリス社会の自由さを礼賛して、まだ不自由だったフランスをこき下ろした「哲学書簡」で話題となり、またまた逮捕状を出されたりした!
そんなヴォルテールの評論分野での代表的な活動は、「百科全書」への参加だろう。百科全書といっても、ただ単なる百科事典作りに参加したのとはその意味合いが違う。
これはヴォルテール以外にも、ディドロやダランベールなど当時の百科全書派と呼ばれていた知識人たちが大集合して編集に当たった、一大プロジェクトだ。
彼らは啓蒙主義者とも呼ばれていて、「確かな理性の光によって迷信や因習の暗黒を振り払うことで世界を進歩させる」という強い信念により、国家権力をも恐れなかった。
そんな彼らが、当時の最先端の知識を集大成させようとしたのがこの「百科全書」なのである。そのため、それは国家権力にすら恐れられた。
一時は出版認可すら取り消されたというのだから、その影響力はうかがい知れるだろう。ヴォルテールはそのなかで歴史の項を執筆していた。
【追加雑学②】聖書基準の歴史を批判したヴォルテール。その理由は?
そして事実、歴史家としてもヴォルテールの影響はとても大きい。
ヨーロッパ史において、聖書が本当に正しい世界史を反映したものかは幾度も批判があったが、その当時における代表者の一人がヴォルテールだ。
なかでも聖書と世界史の矛盾として有名なのは、どう計算しても聖書の天地創造より、エジプト史や中国史のほうが古くなってしまう! という問題だった。
もちろん聖書学者たちは計算でつじつまを合わせようとしたのだが、そうしたつじつま合わせをきっぱりと否定して、中国史やエジプト史の古さを認めたのがヴォルテールなのだ。
これはヴォルテールの歴史学における、「コペルニクス的転回」とも呼ばれる。
キリスト教的な世界観とは異なる、人間の歴史を描く道を切り開いたのが、ヨーロッパにおいてはヴォルテールだったのである。
このように、宗教や国家権力という権威を恐れずに自由な言論活動をしていったヴォルテール。フランス革命も彼の影響が少なからずあったといわれているが、一方で周囲の人間にはとても寛容なことで知られていた。
それを象徴するヴォルテールの名言として知られているのが、「私はあなたの意見には反対だが、あなたが意見を表現する自由は命がけで守る」という言葉だ。
しかし…
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【追加雑学③】実は名言を言っていなかったヴォルテール
そう、ヴォルテールの名言として伝えられるこの言葉は、ヴォルテールの言葉でも何でもない。
これは後世に彼に関する本を書いたタレンタイアという人物が、ヴォルテールの精神のあり方を要約する言葉として記したものだ。
正確に言うなら、「彼の態度はまるで、他人の意見に反対してもその人の表現の自由は命がけで守ろうとするものだった」というところだろうか。それだけ彼が寛容や自由の精神を説いていたということなのだ。
しかし、そんな彼とて時代の偏見からは完全に切り離されてはいなかった。
【追加雑学④】反ユダヤ主義者だったヴォルテール
寛容と自由を説いたその姿勢とは裏腹に、ヴォルテールにはユダヤ人に対する差別意識もまた濃厚にあった。
彼は、その著書の中でユダヤ人を「地上で最も憎むべき民」とまで言うほど激しく攻撃していた。当時のヨーロッパではユダヤ人への差別意識がまだ強く、ヴォルテールもその例外ではなかったのだ。
一方、ヴォルテールの提唱した啓蒙自由主義思想が、ユダヤ人への偏見の緩和に貢献したという複雑な側面もある。そのため当のユダヤ人からも、ヴォルテールはそこまで厳しい評価を与えられていないともいう。
ヴォルテールの雑学まとめ
今回は、宝くじを買い占めて大儲けしたというヴォルテールの逸話から、彼の自由主義思想家としての側面に迫ってみた。
こうしてみると、国が発行した宝くじを買い占めて儲けたというエピソードも、単なるいたずらという以上の彼の反骨精神を象徴したものに感じられるから不思議だ。
今度から宝くじを買うときは、今回の雑学を思い出してみてはいかがだろうか。
現代の宝くじは全部買い占めても損をするだけなので、マネはしないように!
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