オリンピックは国の威信をかけて行う一大イベントといえる。
そもそもオリンピックを誘致するまでに、途方もない時間と労力が必要になってくるし、誘致に成功したら、今度はスタジアムの改修や新たな競技場などを建設するために土地の買収など、莫大な予算も必要になってくる。
また、大会準備や大会運用がスムーズでないと「この国…やばくない?」と信用問題にもなってしまう…。毎大会、「全然予算が足りないぞ!」とか「全然工事が進んでいないけれど、大会の開催…大丈夫か!?」とかそんな声が聞こえてくるのだ…。
だが! 開催するメリットも果てしなく大きい! 開催が決まれば世界的な注目を集めることができるし、成功すれば国際的な信用を手に入れることができる。
また何よりも、開催期間中には世界中から観光客が来るので、とても大きな経済効果をうむのだ! だから各国はなんとしても、自国でオリンピックを開催したいわけ。
しかし…そんな大きな利益をもたらすオリンピックの競技を、開催国に選出されていながら、「他国」で開催した国があることを、みなさんはご存知だろうか…。
ということで今回はオリンピック開催国に関する雑学を紹介していこう!
【オリンピック雑学】五輪第16回大会は、馬術競技だけ別の国で行われた
【雑学解説】オーストラリアで馬術競技ができなかった理由とは?
もったいないうえに遠いな! ニュージーランドとかではだめだったのか…。実はこれには、オーストラリアの検疫制度が関係している。
オーストラリアが周りを海で囲まれた国であるということはご存知だろう。周りが海で囲われているということは、船や飛行機などがないと、容易にたどり着けないということ。だから、そういった場所では、他の国々には見られない生態系が作られやすい。
まさにオーストラリアもそういった独自の生態系をもった国なのである。
オーストラリアはその生態系やそれに支えられた産業を守らなければならない。そのため当時から、厳しい検疫制度を設けている。オーストラリアは特に畜産大国といえるほど、畜産業が盛んな国なので牛や馬、羊などに関わるものは一層厳しい検疫制度を設けていた。
馬に関しては、なんと検疫終了までに6ヵ月の時間が必要だったのだ。オリンピックが開催してから馬を移動させても間に合わない…。
「そうなら各国の予選を早く終わらせて、6ヵ月以上前に馬たちを国内へ移動させたらいいのでは?」と誰もが思うだろう…。
しかし…なんとIOCはこの検疫制度に気が付かなかったのだ! といっても、メルボルン側も、オリンピックの準備が全然進んでいなかったので、IOCもそこまで頭が回らなかったのかな…。…いやいや! それ以前の問題だぞ!
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だが…気が付いたときには、「もう間に合わない…。どうしよう…。」という状態。そこでIOCが各国に泣きついて、応えてくれたのがストックホルムだったのである。
ちなみに、ニュージーランドもオーストラリアと同じくらい検疫制度が厳しいので、やはり開催できなかった。同じような立地だから仕方ないな…。
そしてなんと、ストックホルムでの馬術はメルボルンオリンピックの半年も前に行われたのだ!
これはメルボルンが南半球であることに由来する。いつもの開催時期である、8月あたりに開催してしまうと、メルボルンは冬真っただ中に。夏季オリンピックが冬に行われるなんて…。ということで開催時期が11月となった。
しかし今度はストックホルム。ストックホルムの11月はやはり冬である。メルボルンの開催時期を変更するわけにはいかなかったので、仕方がなく馬術競技のみ、6月10日から17日の期間で行われることになったのだ。
なお、この教訓を活かし、その44年後に開催されたシドニーオリンピックでは、IOC側が検疫体制を整えなければ、開催資格をはく奪すると宣言し、2週間の検疫で入国可能となったため、馬術競技もオーストラリア国内で行われたぞ!
ちなみに、時期の問題は夏時間を無理やり使うことで夏という設定にしたのだ! 時間を夏に合わせるなんて…。やはりそこまでしてでも、開催したいんだな!
【追加雑学①】馬術競技だけ別の国で行われたオリンピックがもう1つある
実は北京オリンピックも、馬術競技のみ別の国で行われた。
理由は同じく検疫制度。ただし今回はよりしっかりした検疫制度があるところで競技を行いたいという、北京オリンピック委員会から要望があったため。
開催場所は…香港。香港は以前までイギリスの植民地だったこともあり、競馬が盛んで、検疫制度がしっかりしているし、中国側としては「香港は中国です」というアピールにもなるわけだ。
香港が中国かどうかはいいとして、香港は独自でIOCに加盟している。そのため、開催地になることのできる別の候補地というわけ。だから扱いとしては分離開催ということになるのだ。
【追加雑学②】北京オリンピックでは「メルボルンの流血戦」が行われた
この事件はオリンピックで行われた乱闘である。舞台は水球。ハンガリーVSソビエト連邦。
実はこのオリンピック前に、ソビエト連邦がハンガリーを武力弾圧した「ハンガリー動乱」が発生していたのだ。まさに因縁の対決というわけだ。
試合は開始直後から殴る蹴るの応酬。水球ではなく…もはや格闘技…いやケンカである。試合はハンガリーが4対0で勝利したものの、終了直前にハンガリー選手が流血のため退場を余儀なくされてしまう。
会場のハンガリー国民の暴動をさけるため、終了時間前に試合を中止するという異例の措置がとられた。
オリンピックに政治を持ち込んではいけないが、ハンガリーとしてはなんとかやり返してやりたかったんだろうな…。本当に勝ててよかった。褒められたことではないけれど…。
雑学まとめ
今回の雑学はいかがだっただろうか。メルボルンオリンピックの裏側にそんな事情があったとは…。動物を扱う唯一のオリンピックである馬術は、他の競技にはない留意点があるのだな…。
たしかにオリンピック出場の馬が病気を持ち込んだりしたらダメだよな…。平和の祭典で病気蔓延させるなんてシャレにならない…。
オーストラリアの検疫は今もかなり厳しいので、何を持ち込んでいいのか、何を申請しなければいけないのかしっかりチェックしてから行こう!
甘く見ていた私は4000豪ドルの罰金を払ったぞ! 今の相場でだいたい30万円くらいだ! …あのときは本当に逮捕されなくてよかった…。実話なのが悲しいところだな…。
ちなみにそのとき、申告書に「風邪薬」と記載していたが、実際に出てきたのは「ビーフジャーキー」と「ひまわりの種」だったぞ! 間違えただけなのに…。虚偽申告なんかじゃないのに…。みなさんは荷造りのときにお酒を飲むのは控えよう!
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