「道端に落ちていた金をねこばばした」…
この「ねこばば」という言葉、普段からよく使う言葉ではないと思うが、聞いたことがあるという人は多いだろう。
まぁ、あまり良い意味の言葉ではない。
「ねこ」は、猫。では、「ばば」は…?
実は、あまり連呼しない方がいい言葉である。今回の雑学では「ねこばば」の語源について紹介しよう!
【生活雑学】「ねこばば」の語源は、猫のフン
【雑学解説】「ねこばば」は猫がフンの上に砂をかけて隠すことに由来している
まず「ねこばば」という言葉について説明しよう。
ねこばばとはもともと、「悪いことをしたのを隠して知らん顔すること」を指す。それが、主に「拾った金品をこっそり隠して自分のものにしてしまうこと」を指すようになった。
「着服」や「横領」と同じような印象を受けるが、ねこばばは「偶然見つけたものを持ち主に返さないで自分のものにする」という感じなのに対し、着服や横領は「金品(特に組織の金)を、意図的に盗んだりごまかして自分のものにする」という感じ。
ちなみに、「着服」は法律用語では使用されておらず、刑事上では「着服」も「横領」も横領罪という罪になるぞ。
「道に落ちていた財布をねこばばする」というが、「道に落ちていた財布を横領する」とはあまりいわないだろう。
ねこばばは、 着服や横領より少額のものやスケールの小さいものに使われているようだ。スケールが小さかろうが、やってはいけないことに変わりはないが。
では、なぜ「ねこばば」というのか。
ねこばばの語源
ねこばばを漢字で書くと「猫糞」。文字通り、猫のフンのことだ。
猫はフンをしたあと、砂をかけてそれを隠す。その仕草から「悪いことをしたのに知らん顔をして隠す」ことを「ねこばば」と呼ぶようになったという。
「ばば」というのは「糞」の幼児語で、江戸時代に使われていた。今の子どもが、「便」を「ウンチ」というのと同じ感じ。
「ねこばば」という呼び方は、江戸時代より前に使われてた記録はないらしい。
ねこばばの語源は他にも
江戸時代、猫好きのお婆さんが借りた金をなかなか返さなかったということから、「猫婆」と書いて「ねこばば」という言葉が生まれたという説もある。
後世まで残るほどのお婆さん…きっと、かなりの猫好きでかなりの借金があったに違いない…!
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【追加雑学】猫がフンを隠す理由
猫がフンに砂をかけて隠す様子が、悪いことをしたのを隠す「ねこばば」という言葉のもとになっていると述べたが、猫はフンをしてしまったことを悪いと思っているのだろうか。
だとしたらかなり律儀な動物だが…。
実は、猫がフンをかくすのにはちゃんとした理由がある。
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①自分の居場所を隠すため
猫のフンは、けっこう臭い。隠さずにそのままにしてしまうと、外敵や自分が狙っている獲物に、ニオイで居場所がばれてしまう。
外敵が嗅覚の鋭い動物なら、そのフンがいつ排泄されたものなのか(=まだ近くにいるのか)とか、何を食べている動物のフンなのか(=自分の捕食対象なのか)というのもわかってしまうらしいぞ!
②ボス猫に遠慮しているから
猫は単独行動をとる動物で、「群れ」や「リーダー」という概念がないはず。しかし最近の野良猫は、自分が住んでいる地域の中で強い猫を「ボス」として認めることがあるそうだ。
フンを隠さずそのままにしておくと、ボス猫に目を付けられてしまうかも…という小心者の猫が、フンを隠すらしい。
目立たずひっそり生きていく…猫の世界も大変そうだ。
③病気の予防のため
野良猫が生活していく中で、「フンには病原菌や寄生虫がいて危険。放っておくとウイルスが蔓延してしまう…隠さねば!」ということを学んだから、フンを隠しているという説もある。
「悪いことをした」と思っているのかはわからないが、この説が「ねこばば」の由来に一番近いのではないだろうか。
雑学まとめ
「ねこばば」は「猫のフン」という意味で、もとは「悪いことをしたのに知らん顔をする」という状況を指す言葉だったという雑学をご紹介した。
「悪いことしたのを隠蔽する」という意味だった言葉が、「拾ったものなどをこっそり自分のものにする」という意味に転じていったといわれている。
やはり、「人の金品を自分のものにする」ということが、「悪いこと」として多く行われていたからだろうか。
「ねこばば」というとなんだか軽く聞こえるが、れっきとした犯罪行為で窃盗罪や遺失物横領罪に問われることもある。最高で懲役10年の刑が科せられることも。
拾ったものはねこばばせず、しっかり警察に届けるようにしよう。