ひと昔前、若者がスキー場へ集って銀世界で恋をするのがものすごく流行ったっけ…。スキー場だとだれでもキラキラして見えちゃうんだよ。ゲレンデがとけるほど恋しちゃうんだよね。
そんな人気スポーツであるスキーには、「スキーの日」があるのを知っているだろうか? 「スキーの日」はシーズン真っ盛りの1月12日だ。
「ヤキニクの日=8月29日」のような語呂合わせではなさそうだし、なにかの記念日なんだろうか? なぜその日が「スキーの日」なのか、今回の雑学でまとめてみた!
【スポーツ雑学】1月12日「スキーの日」の由来は?
【雑学解説】「スキーの日」は日本におけるスキーの第一歩
「スキーの日」は1994年にスポーツメーカーのエスポートミズノが、スキーの魅力を発信するために制定した記念日だ。もしや、営業目的の無理やりな理由で「スキーの日」をつくったのでは? と勘ぐってしまうが、そうではない。
「スキーの日」は厳密にいうと1911年1月12日だ。なんと明治時代の出来事に由来する。
実は、それまで本格的なスキーの経験者がいなかった日本において、はじめて「スキーってどうやるの?」と外国の陸軍から指導を受けた日が「スキーの日」なのだ。つまり、日本でスキーが導入された最初の日、ということになる。
指導を受けたのは陸軍歩兵連隊で、エリート将校の選抜メンバー11人だった。この指導日が日本スキーの第一歩として記念日に制定されたというわけだ。
日本ではじめてスキーを指導してくれたのは、オーストリア陸軍のテオドール・エドレル・フォン・レルヒという、ちょっと長い名前の少佐だった。彼はアルペンスキーの創始者マティアス・ツダルスキーの弟子で、非常に高いスキーの技術をもっていたとか。
そのレルヒ少佐は依頼を受けた軍人だけではなく、一般市民にも指導をしてくれ、スキーの魅力を広めてくれた。それもあってスキーは、現在日本のウインタースポーツの定番となっているのだ。もしレルヒ少佐が陸軍にしか教える気がなかったら、ここまでポピュラーになっていなかったかも。
【追加雑学①】スキーの歴史は紀元前にさかのぼる
日本では明治時代に伝わってきたスキーだが、その歴史は驚くほど古い! なんと紀元前2500年頃の壁画には、スキー道具をはいた人物が描かれているのだ。とはいえ、古代人が「ヤッホー!」と斜面を滑り降りている壁画ではない。
スキーの発祥は、積もった雪の上を移動するための手段だった。その形状も現代と違い、木を割いて加工された「かんじき」のようなもの。雪の多いスカンジナビア半島やロシア、中国などで狩りをするために作られた。
かんじきタイプからなぜ長い板に進化したのかというと、広野を移動するときに板を長くして滑走するとスピードが出て効率がいいぞ! と誰かが気づいたのだろう。紀元前1500年頃に作られた2メートルのスキー板がスウェーデンで発見されている。
スキーが正式に競技としてスタートしたのは、1769年にノルウェーで行われたスキー競技会だ。軍隊の訓練だったスキーだが、兵士の中には高い技術をもって急斜面を滑走する者が現われた。彼らは賞賛され、そのスピードや技術を競うことが盛んになったのだ。
スキーの起源は深い積雪に対応して生きていくための技術だが、それをスポーツとして楽しむようになったのは他の動物にはない人間特有の知恵なのだろう。
スキーがあったら…八甲田雪中行軍遭難事故
実は、日本陸軍がオーストリア陸軍にスキーの指導を依頼したきっかけは、1902年(明治35年)の「八甲田雪中行軍遭難事故」だ。これは210名の兵士のうち、199名が吹雪で遭難し亡くなった、世界最大級の山岳事故である。
「スキーの日」はこの悲劇の約9年後であり、もっと早くスキーが日本陸軍に導入されていれば防げていたのかもしれない。
この遭難事故に心を痛めたノルウェー国王が、明治天皇にスキー板をお見舞いとして贈ったことがある。「こんな事故が二度とないように、これをお使いなさい」というメッセージだったのではないだろうか。
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【追加雑学②】スキーの日はイベント盛りだくさん!スキー場に行こう!
「スキーの日」には、各地のスキー場がお得に利用できることが多い。
スキー場によって内容はそれぞれだが、リフト代が一日無料や半額になったり。スキーセットの貸し出し無料、無料スキースクールなど! これは行かないと損だろう。
また、ゲレンデで宝探しやクイズ大会など、家族で楽しめるイベントを催してくれるスキー場もある。寒いスキー場ではとりわけ嬉しいホットドリンクや温かい汁物をふるまってくれるスキー場も。
なかでもレルヒ少佐がはじめて指導をした新潟県上越市の金谷山(かなやさん)スキー場では毎年、当時のスキーを披露する「顕彰会」が行われている。
現代のスキーとは違い、2本のストックではなく片手に1本の長い杖を持ちながらすべる。日本で最初のスキーの様子を見ることができ、貴重な機会となっている。
金谷山スキー場は日本スキー発祥の地として、記念碑や記念館がある。レルヒ少佐の大きな銅像も山の上に立っているぞ。そして、レルヒ少佐のゆるキャラ「レルヒさん」も待っている!
なんと新潟県の公式キャラだ。シュールなビジュアルである…。
「スキーの日」は魅力発信の日であり、スキー場で思い切りスキーを楽しめる日なのだ!
雑学まとめ
クラシックなノルディックスタイルから派手なパフォーマンスが楽しめるフリースタイルまで、日本人に広く親しまれる人気のスポーツ・スキー。
スキーの魅力をアピールし、多くの人にスキーを楽しんでもらう「スキーの日」を1月12日に決めたのは「11月11日はポッキー・プリッツの日!」のようなオシャレ感を前面に出した記念日をつくろう、という狙いではない。
慣れない日本で、軍隊のみならず一般人にもスキーを教えてくれたレルヒ少佐の功績に対し、感謝の気持ちが込められているのだろう。レルヒ少佐に感謝しつつ、スキーを楽しもう!
それにしても、この雑学を書いてめちゃくちゃスキーに行きたくなってしまった…。「スキーの日」に誰か、わたしをスキーに連れてって!