私達の日常に、石油は非常に大きく関わっている。たとえば、プラスチック製品の多くは石油を原料としてできているし、さまざまな工場を動かすための燃料も石油なのだ。
しかし、日本では原油はほとんど採掘されない。たとえば日本の年間原油使用量を2Lとすると、国産原油の量は6mlしかないのだ。はっきりいって全然足りない。
そのため、日本は石油のほとんどを輸入に頼っている。輸入先から日本まで、石油はタンカーによって運ばれてくるのだ。当然タンカーには石油が満載である。
しかし、そんなタンカーが海水を積んでいることがあるという。一体どんなときにタンカーが海水を運ぶのか、今回の雑学で調べてみることにした。
【生活雑学】石油を運ぶタンカーは海水を積んでいることがある
【雑学解説】石油タンカーで積荷のかわりに積む水をバラスト水という
荷物を積む船は、積荷の重さを考慮したうえで設計されている。タンカーであれば、石油を積んだ状態が最もバランスよく進めるようになっているのだ。
そのため、石油を降ろしたタンカーでは重さが足りなくなり、海上に出る部分が多くなる。そうすると船が不安定になり、風や高波で転覆しやすくなってしまう。
そこででてくるのがバラスト水である。バラスト水というとちょっと特別感があるが、なんのことはないただの海水だ。
石油を降ろしたタンカーは、ある程度の重さを確保するために船内に海水を取り込む。すると、海水の重さで船の下部分が海中に沈み、転覆を防ぐことにつながるというわけだ。
ちなみに、海水を入れる場所は石油と同じタンクというわけではない。
事故による石油流出を防ぐため、タンカーの外殻はダブルハルと呼ばれる二重構造になっている。
外殻と内側の壁のすき間に海水を取り込むのである。流出を防ぎつつバラスト水のタンクとする、一石二鳥の設計なのだ。
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【追加雑学①】石油タンカーの高さは22階建てのビルくらい
35万kl(およそ25mプール1,000杯分)もの石油を積むことができるタンカーは、その大きさも桁違い!
船底からマストの頂点まではなんと約75mもあるのだ。これはビルでいうと22階に相当する高さである。
また、船首から船尾までは330mもあり、これは東京タワーの高さと同じくらいというから驚きだ。
これほど大きなタンカーの内部には、15~20個程度の石油タンクが設置されている。それにより、万一タンクが破損した場合でも、全ての石油が流出することはないのだ。
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【追加雑学②】日本では約190日分の石油が備蓄されている
利用する石油の99%以上を輸入に頼っている日本。なんらかの事情により石油の輸入がストップしてしまったらどうなるだろう。
工場での生産や流通が滞り、燃料が不足することによって電気や水道といったライフラインも止まり、想像すらできない混乱が巻き起こるに違いない。
そのような事態を避けるために、日本では石油の備蓄がおこなわれている。国家備蓄と民間備蓄をあわせて8,100万kl、約190日分の石油を備蓄しているのだ。
突然石油の輸入が止まったとしても、半年くらいはなんとかなるということだ。万一そのようなことになってしまったら、その半年の間に問題が解決することを祈るばかりである。
【追加雑学③】石油の単位「バレル」は「樽(たる)」のこと
「bbl(バレル)」という単位を聞いたことはおありだろうか。これは主に石油の量をあらわす単位である。
石油の利用は古くからおこなわれてきたが、産業として確立したのはアメリカのペンシルバニア州であった。
1859年、アメリカ合衆国のドレークという人物が、油井(ゆせい)から石油を掘り出すことに成功したのだ。
そのとき掘り出された石油を運搬するために使われたのが、もともとは酒を入れていた樽だったのである。
樽は英語でbarrel(バーレル)というため、それがそのまま単位として定着したのだ。ちなみに1bblは約159Lである。
こんな半端な数字になったのは、日本ではメートル法で量をはかるのに対し、アメリカではヤード・ポンド法で量をはかるからだ。
樽で運んだ石油の量(1bbl)は42米gal(ガロン)であった。1米gal=約3.8Lなので、42米gal=約159.6Lとなり、そこから1bbl=約159Lと定められたのだ。
雑学まとめ
今回は石油タンカーが海水を積むことがあるという雑学をご紹介した。石油を積んでいるときと空になっているときでは、船の沈み方が9mも違うというから、海水でも積まないと大変なことになってしまうのだろう。
港でバラスト水を取り込むと、当然水生生物も一緒に取り込むことになる。そのため、帰港先でバラスト水を流すことで本来そこにいない水生生物が繁殖してしまった事例もあったそうだ。
現在では、公海にでたときに一度バラスト水を入れ替えるなど、生態系にも配慮されている。
かなりの量の石油を使っていながら、石油やタンカーについて調べると知らないことばかりであった。これからは、無駄な石油を使わないように生活していきたいものである。