臭い。アラフォーの私にとって、過敏に反応してしまいがちな言葉である。朝起きた枕や、風呂上がりのバスタオルなど、ちょっと気になってきちゃうお年頃なのだ。
しかし、世界に目を向ければ、そんなちっさい悩みなんか可愛いうさぎちゃんに思えてくる。そんな私の悩みをかき消した臭いにまつわる最悪な事件が過去にあった。それを引き起こしたのが世界一臭い物質といわれる「チオール」の一種、「チオアセトン」だ。
聞き馴染みのない物質だが、こいつがとんでもない大事件を巻き起こすのである。
今回は、最も臭い物質「チオアセトン」についての雑学をご紹介しよう。
【世界雑学】世界一臭い物質「チオール」とは?
【雑学解説】チオアセトンは街を丸ごと避難させるほどの悪臭…
事件を起こしたこともある臭い物質は「チオアセトン」だ。
この物質の臭さは、有機化合物「チオール」にみられる「メルカプタン臭」という刺激臭である。ちなみに、チオールのなかでも「エタンチオール」がギネスに世界一臭い物質として登録されている。
それと同系の刺激臭・チオアセトンがすさまじいことは想像していただけるかと思う。とにかくすごそうなことが。
しかし、この物質は命に関わるような危険性はない。発火性も発がん性もない。よっぽど灯油やガソリンのほうが危なっかしいくらいだ。まあ、臭すぎて嘔吐や吐き気、最悪失神する可能性はあるのだが…。
1960年代、この物質が入ったフラスコの栓が不意に外れてしまったときは、すぐに締め直したにもかかわらず、200m離れた建物の中に居た人達を嘔吐させてしまった。室内に居たにも関わらずだ。もう、これ兵器じゃないか…!?
また、とある科学者2人が極々少量での分解研究を行った後、出かけた先のレストランでウェートレスから防臭剤のスプレーをかけられる。なんてちょっとおちゃめな出来事もあった。
チオアセトンが漏れ出したらただでは済まない
1889年、ドイツのフライブルグ市にある石鹸工場で、ある科学者が実験研究中、香料に使用されるトリチオアセトンを分解。そして、チオアセトンが生成された途端、工場にいた従業員は次々に具合が悪くなり、その不快な悪臭は短時間のうちに市全域に拡大した。
嘔吐や失神する者が続出し、全住民が恐慌的に避難するという事態に陥ったのだ。
なんとゆう破壊力…臭いとゆう目に見えないものだけに余計たちが悪い。まだゴジラにでも襲われたほうが対処のしようがあるのではなかろうか…。
スポンサーリンク
【追加雑学①】悪臭一味「チオール」
かくゆう私も家庭内では嫁と娘に臭いと罵られ、少しチオアセトンにシンパシーを感じつつあったのだが、彼にはそうそうたる悪臭仲間がいるようなのだ。
悪臭一味。スカウトされないように気を付けたい。
チオアセトンは水素化された硫黄を末端に持つ有機化合物「チオール」の一種。
- メタンチオール
- エタンチオール
- プロパンチオール
- チオフェノール
- トリチオアセトン
など、多くのチオールがあり、その多くが特徴的な悪臭を持っている。メタンチオール・エタンチオールは腐った玉ねぎのような臭いだ。プロパンチオールはドリアンの「生ごみ」とも称されるその臭いの主要成分でもある。
…腐った玉ねぎだとか生ごみだとか、ネガティブさしかない例えをされるチオール一味。しかし、そんな邪険に扱われがちな彼らも、立派に人の役に立つ使われ方があるのだ!
【追加雑学②】悪臭も使いよう
実はあなたもエタンチオールの臭いを嗅いだことがあるはずなのだ。それは、ガス燃料に添加されている臭いだ。
家庭で使われているガスの主成分であるメタン・エタン・プロパンは無臭の気体で、そのままだとガス漏れに気づけないため、わざとエタンチオールで臭いを付けているのだ。
また、地中深くで作業する鉱山業において、事故や緊急時の際、換気系統に「臭気」を散布することで、作業者に気付かせる警報システムが使われている。
チオールの本能的に「不快だ」と感じる臭いを使うことで異常事態に気づけるようにしている。
臭いと感じるのには意味がある
そもそもなぜこんなに不快に感じる臭いなのだろうか? チオールは食物中タンパク質に含まれるアミノ酸が分解することで発生する。平たく言えば、食べ物が腐ったときに発せられるのだ。
間違って腐った食べ物を口にしないよう長い年月をかけ、少しの臭いでも嗅ぎ分けられるように。また、不快に感じるように感覚器官が進化してきたのだ。チオール達はその強い臭いで危険に気づかせ、我々の命を守ってくれている。
雑学まとめ
今回は、チオアセトンをはじめとした悪臭についてのトリビアを紹介した。
一歩間違えると危害を与える悪臭も、考え方を変えれば人のためになる。人生の教訓をまさか悪臭から学べるとは思ってもみなかった。
…とはいえ、チオアセトンを嗅ぐチャンスには巡り合いたくないものだ…。