暖かく穏やかな陽気の中、「ホーホケキョ」という鳴き声が聞こえてくると、「ああ、春が来た」という気持ちになる。なんとも清々しい気分である。
そんな春の演出を盛り上げるウグイスだが、あのおなじみの鳴き方をするのは、意外にもオスだけだという。
…ということは、もともとああいう鳴き声なのではなく、何か必要性があって「ホーホケキョ」と鳴いているということだ! これは気になる…。
今回はそんなウグイスの鳴き声についての雑学をご紹介するぞ。
【動物雑学】ウグイスの「ホーホケキョ」は繁殖期のオスだけが出す鳴き声
【雑学解説】ウグイスの「ホーホケキョ」は一生懸命練習した鳴き声
実は「ホーホケキョ」と鳴いているウグイスはオスだけで、その鳴き方をするのは、春の訪れを喜んでいるなど、そんな理由ではない。
低い声で鳴いている場合は、縄張りに誰かが入ったことを仲間に知らせるため、高い声で鳴いている場合はメスへの求愛アピールだ。
そして、オスはもともとあれほど流暢に鳴けるわけではない。意中のメスを振り向かるために、一生懸命鳴き声を練習するのである。いわれてみれば、下手くそな「ホーホケキョ」を耳にしたことはないだろうか。
「ホ~…ケ、ケキョッ!」という間の抜けた鳴き声は、一途なオスたちの努力の証だったのだ。そう聞くとなんだか応援したい気持ちになってくる…。
また、オスがきれいな声で鳴けるようになるのには、日照時間も関係している。春になり日照時間が長くなると、オスの体には繁殖に備えるための男性ホルモンならぬ雄性ホルモンが生成される。
その雄性ホルモンが喉の筋肉を発達させ、伸びやかでよく通る美しい鳴き声が出せるようになるのだ。繁殖するにはきれいな声で雌を引き寄せる必要がある、というわけである。
ちなみに夏になるとウグイスは標高の高い山に移動するので、町中ではその鳴き声も聞こえなくなる。また日照時間が短くなると喉の筋肉も鎮静化され、普通の鳴き声に戻るのだ。あの鳴き声は、やはり春の繁殖期特有の、期間限定モノだったのである。
以下にウグイスが鳴いている動画を紹介しておこう。やはり、実に風情を感じさせる鳴き声だ…。
スポンサーリンク
【追加雑学①】練習しても鳴くのが下手なウグイスがいる理由
練習中のウグイスが下手な鳴き声を発しているのは納得がいくが、春終盤になっても音を外している個体もいる。…やはり練習を怠けるウグイスもいるのだろうか?
しかし繁殖のためとなれば、練習を怠けるのは考えにくい。どうやらウグイスもそれぞれの個体によって、鳴き声のセンスが違うようだ。人間と同じで、いくら練習しても音痴なウグイスもいるのである。
幼いウグイスは、親の鳴き声を聞いてお手本にする。そのため、親ウグイスが音痴だと、それをお手本に練習した子供も音痴になってしまうのだ。
親が自分の音痴に気付いて、他のウグイスに習うように子供に教えれば良いのだが…人間もそうであるように、自分の音痴にはなかなか気づけないものだ。こうして、音痴は世代を超えて繰り返されるのである…。
【追加雑学②】実はメスのウグイスも鳴いている
ウグイスの「ホーホケキョ」という鳴き声は繁殖期のオスだけのものだが、だからといってメスが鳴かないわけではない。
メスの鳴き声は「チャチャッ」という短いもので、これは地鳴きと呼ばれる。ちなみに繁殖期以外のときのオスもこの鳴き方だ。ウグイス同士のコミュニケーションは、基本的にこの地鳴きによって行われている。
大胆な愛の歌を響かせるオスに対して、メスの鳴き声はかなり控えめだ。自分にないものをパートナーに求めるのは、鳥も人間も同じということか…。え? そういうことじゃない?
雑学まとめ
今回の雑学はいかがだっただろうか。春の訪れを知らせるのウグイスの「ホーホケキョ」という鳴き声は、オスがメスに捧げるラブソングだった!
メスのために一生懸命練習していると思うと、その健気さにはキュンとさせられる…。音痴だっていいじゃないか! ハートのこもった「ホーホケキョ」はきっと、彼女の心に届くはずだ!