近年では、日本のアニメが海外でも放送されるようになっている。しかし、日本では問題なく放送できていたものでも、文化の違いなどが原因で、海外では演出や設定が差し替えられることがあるのだ。
1990年代初頭に、女の子たちを中心に人気だった「セーラームーン」シリーズもその1つだ。海外で放送される際に、どのような変更点があったのだろうか?
今回は、そんな「セーラームーン」と海外についての雑学を紹介しよう。
【サブカル雑学】セーラームーンには海外で設定が変更されたキャラがいる
【雑学解説】海外版セーラームーンで変更されたキャラクターたち
海外でセーラームーンが放送される際に、設定がNGとなり変更された国とキャラクターは以下の通りだ。
- アメリカ・カナダ:天王はるかと海王みちる
- インドネシア:セーラーサターン
- イタリア:海野
それぞれ解説していこう。
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天王はるかと海王みちるの関係
「セーラームーン」シリーズでは、セーラーウラヌスに変身する天王はるかと、セーラーネプチューンに変身する海王みちるというキャラクターが登場する。この2人はいつも一緒で、どことなく同性愛的な表現も目立つ。
それもそのはず。原作者の武内直子(たけうちなおこ)は、そういった関係を意識して、2人の距離感を描いていたのだ。
しかし、この同性愛的な関係が、アメリカやカナダではNGだった。今ではLGBTに関して寛容となったが、当時放送された際は、天王はるかと海王みちるの関係を変更する必要があった。
どのように変更されたのかというと、「いとこ」。つまり、親戚となってしまったのだ。これは、「同性愛のヒーローがアメリカ人の親には受け入れられない」という大人の事情が含まれた変更である。
子供向けアニメなので、同性愛的な表現は過激と捉えられるかもしれないという理由もあったのだろう。当時の話なので批判しすぎるのは間違っているが、どことなく納得がいかないのは私だけだろうか?
ちなみに、天王はるかを演じた声優の緒方恵美(おがためぐみ)は、当時アメリカのアニメ雑誌のインタビューで、「あなたは同性愛の役を週末のゴールデンタイムOAの作品で演じて、宗教的に糾弾されなかったのですか?」と尋ねられたことをツイッターで語っている。
海外「日本は常に進んだ国だった」 北米版セーラームーンの差別的な規制が話題に https://t.co/fMYZteW4kw
…当時アメリカのアニメ雑誌の取材を受けました。「あなたは同性愛の役を週末のゴールデンタイムOAの作品で演じて、宗教的に糾弾されなかったのですか?」と。
— 緒方恵美 (@Megumi_Ogata) 2017年8月7日
どう答えたのかは分からないが、なかなかぶっこんだ質問をしたものだ。
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セーラーサターンの攻撃(漫画版)
こちらはアニメというより、漫画版での規制である。
セーラーサターンは、「沈黙・破壊・誕生のセーラー戦士」であり、大きな薙刀のような武器を持っているのが特徴だ。彼女が技を繰り出す時に武器を振るうのだが、インドネシアではこの行動がNGだった。
というのも、インドネシアの宗教では、「切る」という動作がダメなのだ。特に漫画版では、セーラーサターンが武器を振るうシーンがカットされている。
そのため、インドネシアの漫画版「セーラームーン」では、「なんかよく分からないけど、セーラーサターンが何かをして何かが起こった」ということになっている。
宗教というのは、信仰する人にとって大切なものだ。それはそれで、私たちがとやかく非難することはできない。
海野の眼鏡
海野とは、セーラームーンこと月野ウサギのクラスメートで、瓶底眼鏡が特徴的な少年だ。眼鏡に渦巻き模様が描かれてグリグリしたものとなっている。この彼のトレードマークであるグリグリの瓶底眼鏡が、イタリアでNGとなっている。
というのも、この「グリグリ」の表現がイタリアでは、「身体的に劣っている部分をことさらに表現している」という印象を持たれてしまうのだ。そのため、イタリア版の「セーラームーン」に登場する海野の眼鏡には、グリグリの渦巻き模様が描かれていない。
こちらは差別的な表現に捉えられるのを回避した改変だ。日本とイタリアの文化の違いといえるだろう。
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【追加雑学】セーラームーンはハリウッド映画のオファーを断ったことがある
実は「セーラームーン」には、ハリウッドから映画化のオファーがかかったことがある。しかし、原作側はこれを断った。
その理由について、女性向けエンタメ・カルチャー雑誌のROLaのインタビューにて、原作編集者の小佐野文雄(おさのふみお)はこう語っている。
実はハリウッドの映画化って難しいんですよ。原作をどういじっても良いという契約をさせられるので危険なんです。
「ROLa」インタビューより
そういえば、ハリウッドで映画化された日本のアニメには「ドラゴンボール」や「北斗の拳」がある。「ドラゴンボール」は酷評され、「北斗の拳」はぶっ飛んだストーリーとなっていた…。
それを考えると、ハリウッドからのオファーを断ったのは英断だったのかもしれない…。ファンからしても、大好きな作品を変にいじられるのはごめんだ。
「海外のセーラームーン」の雑学まとめ
今回は、海外で放送されているセーラームーンについての雑学を紹介した。
日本と海外では考え方が違う。その結果、日本では問題なかったことでも、海外で演出や設定が変更されることがある。
それは、時代によるもの・宗教によるもの・差別的にとらえられるものと様々だ。オリジナルを知っている私たちからすれば、困惑したり納得いかなかったりする変更もあるが、仕方ないといえば仕方ないのかもしれない。
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