自然界において、捕食される立場にある草食動物というのは、常に周囲への警戒を怠ってはならない。また彼らのメインのエサである草は肉に比べて低カロリーなので、大量のエサを食べる必要もある。
これらの理由から、馬や牛、羊などの草食動物はいずれも1日、3~4時間ほどしか眠らない。草食動物は軒並みショートスリーパーである。
しかし…上には上がいる。草食動物のなかでも短眠を極めたキリンはほかの動物たちの比ではないほど、短い睡眠時間を誇っているのだ。
キリンはいったいどれぐらいの時間眠るんだ? というか、ほかの草食動物と何がそんなに違うんだ?
今回はそんなキリンの雑学を紐解いていこう!
【動物雑学】キリンの睡眠時間は恐ろしく短い
【雑学解説】キリンの睡眠時間が短いのはなぜ?
草食動物のなかでも短眠を極めたキリンは、なんと1日20分しか眠らない。そのうち完全な熟睡は1~2分に過ぎないという。…ちょっと意味がわからないんですけど。
ちなみに立ったままうたた寝をするようなこともあるというが、それを含めても寝ている時間は2時間に満たない。動物のなかでは断トツトップの短眠を誇っているのである。
そんなに眠いのを我慢して何がしたいんだ? というか、ほかの草食動物だって条件は同じじゃないのか? など、疑問が浮かんでくるが、キリンが全然眠らないことにだってやっぱり、いくつかの理由がある。
おおまかには…
- ほかの草食動物より大量のエサが必要
- 代謝が低いためそれほど寝なくても大丈夫
- 血圧が非常に高く、長い時間横になっているとよくない
といった感じだ。それぞれに解説していこう!
短時間睡眠の理由1・大量のエサが必要
キリンは草食動物のなかでも非常に大きな部類で、オスなら平均でも体長5m・体重1tを優に超える。その身体を維持するためには、ほかの草食動物より大量のエサが必要になる。
代表的な草食動物で一日の食事量を比べてみても…
- キリン…60~70kg
- ウシ…30kg
- シマウマ…12kg
と、群を抜いている。動物園のキリンなら果物をもらったりもするのでまだいいが、野生のキリンはマジで草ばっかり食ってるわけだから、もう四六時中食べっぱなしである。
なんと1日に20時間以上も食事に費やすという。そりゃ寝てる時間もないわ…。
と、ここで浮かんでくるのがゾウの存在だ。キリンをも凌ぐ巨体で、食事量にしても1日200~300kgと圧倒的である。
案の定、睡眠時間は平均2時間と短く、しかもほとんど立ったまま眠るという、キリンにも迫る勢いのショートスリーパーっぷりだ。
しかしキリンの倍以上食べるのに、キリンよりは長く眠れている。これは捕食者に狙われるか否かの違いといったところか? ゾウほど大きければ肉食動物も諦めるが、キリンはまだまだ襲えるサイズ感である。
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短時間睡眠の理由2・代謝率が低い
睡眠は身体の疲れを取ることもそうだが、主には脳細胞の修復のために行われる。たしかに…睡眠不足だと頭が働かないし、記憶の定着などにも睡眠が不可欠だというし。
だったらキリンももうちょっと寝ないと、バカになってしまうのではないか…。と、思ってしまうが、彼らにそんな心配は無用である。
キリンは代謝率が低い動物で、脳細胞の劣化も非常に遅い。そのため修復の必要性もそれほどなく、睡眠時間も短く済むのだ。
エサの関係で眠れないから、身体も寝なくて大丈夫なように進化していったのだろうか。
短時間睡眠の理由3・血圧が高い
実のところ、キリンは動物界でもトップクラスの高血圧である。その値は最高252mmHg・最低197mmHg。
人間の正常値が最高140mmHg・最低90mmHgなので、キリンは人の倍近い勢いで血流が通っていることになる。
どうしてそんなに血圧が高いかというと、キリンの脳が、心臓からずっと高い位置にあるからだ。キリンの首は長いと2.5mほどにもなり、脳へ血を通わせようと思うと、それだけの勢いが必要となるのである。
この高血圧のため、キリンは必ず自分の背中を枕にして眠り、地面に真っ直ぐ頭を投げ出すようなことはしない。頭を放り出してしまうと、血圧の調整機能が狂って立ち上がれなくなってしまうというぞ! マジで怖え…。
これを踏まえると、たとえ背中に頭を乗せていたとしても、あまり長時間横になっていられる身体じゃないのでは? とも考えられているのだ。
こんな感じでキリンはさまざまな理由から、ちょっとしか眠らないし、眠らなくても大丈夫なのである。すげー身体にも感じるけど、やっぱりあんまりうらやましくはない。エサを食べ続けるのが義務みたいなもんだし。
以下は動物園で眠っているキリンの動画である。
動物園なら襲われる心配もないのだが、睡眠時間は野生のころと変わらないようだ。もうちょっと寝てもええんやで…と思ってしまうが、キリン的には寝すぎる方がNGなのである。
【追加雑学①】キリンの舌はどうして黒い?
以下の動画を見てもらえばわかるように、キリンの舌は真っ黒である。
というか長っ! 真っ黒な色も相まって、口のなかから別の生き物が出てきたかと思うぐらいだぞ…。
それにしても、キリンの舌はどうしてこんなに真っ黒なのか。実はこれも寝る間を削ってエサを食べ続けているその生態が関係している。
キリンの舌は、紫外線にさらされて日焼けしてしまうのを防ぐために黒くなっているのだ。
一日中食事をしているキリンの舌は、そのぶん直射日光を浴びている時間も長い。しかし日焼けは火傷と同じなので、行き過ぎてしまうと少々まずい。
そのためキリンの身体はメラニンを大量に合成するようにできており、日光から舌を守っているのだ。つまりあの黒さはメラニン色素の色である。これはアフリカなどの熱帯に住む人たちの肌が黒いのと同じ理屈だ。
食事時間が長くなると睡眠時間もそうだが、身体のいろんな部位が進化してくるものなのだな。
【追加雑学②】睡眠時間の長い動物
キリンと同じ草食動物でも、睡眠時間の長い動物はもちろんいる。ここからはそんな、ちょっぴりぐーたらな動物たちを紹介していこう。
コアラ(22時間)
草食動物どころか、動物界でもトップの睡眠時間を誇るのがコアラだ。なんと彼らは1日のうち22時間は寝ている。…2時間しか起きてないってこと? さすがに寝すぎだろ!
と思うところだが、これにもやっぱり理由があるのだ。
コアラの主食となるユーカリの葉っぱは、毒性が強く、ほかの動物たちはとても食べられない。これを平気で食べてしまうコアラだが、消化するためにはやはり多量のエネルギーが必要になるのだとか。
だからエネルギー温存のため、22時間も眠っているのである。
そんなに寝なきゃならないほど苦労するなら、ユーカリなんか食べるなよ…。と言いたくなるが、コアラは地上の生存競争に負けて、ユーカリの木の上に逃げるしかなくなってしまったのだ。
寝てるだけに見えて、いろいろ工夫して生き残ってきたんだぞ!
ナマケモノ(20時間)
ナマケモノは1日20時間を眠って過ごし、たまーに起きたと思えばちょっと草を食べる程度。フンをするとき以外は木の上にいて、ほとんど動かない。これはいたってイメージ通りという感じだ。
そして実は、彼らがずーっと眠っている理由もコアラと同じである。ユーカリに毒があるのと同じく、ナマケモノが主食にしているセクロピアにも毒がある。
木の上で、ほかの動物がエサにしないセクロピアを食べていれば、捕食されることも生存競争に負けることもない。しかしそのぶん消化にエネルギーがいるからとにかく寝る。ここまでコアラとまったく同じである。
しかし…ナマケモノの消化時間の怠けっぷりはコアラ以上だ。なんと1枚の葉っぱを消化するのに1ヶ月もかかるというぞ。
そこまで消化が遅いと、腸内細菌の働きが悪くなったりするとかなり致命的な問題で、お腹のなかに食べものがあるのに栄養が吸収されず、そのまま死んでしまうこともある。
なんか頭いいのか悪いのか謎な生き物だな…。
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その他の動物の睡眠時間
このほかだと、捕食者がおらず、高カロリーなエサを食べる肉食動物はやっぱり睡眠時間が長くなる。ライオンなどは1日に15時間ほど眠り、狩りのための体力を温存しているぞ!
また人間に飼われて、狩りの必要がなくなった犬や猫の睡眠時間は、平均して13時間ほど。飼われているからといって生態は変わらないのか、野生のものとそれほど差はない印象だ。
このうち犬に関しては、実は8割ほどの時間は浅い眠りで、周りを警戒しながら眠っているという。なるほど、番犬としては頼もしい!
キリンの睡眠時間|雑学まとめ
今回は「キリンの睡眠時間は超短い」という雑学を紹介した。
キリンは大量の食事が必要になる草食動物のなかでも、特にたくさん食べなければならない。そのため身体も睡眠時間が短くて済むよう、進化しているのだ。
睡眠不足で高血圧というのはちょっと心配になるけど…それでも10年以上生きるわけだから、やっぱり健康上の問題はなさそうである。
生き残るために睡眠スタイルも多用に変えなければならない。自然界は今日も厳しいぜ!
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