日本では、古くは「大化」をはじめとし、現代に至るまで脈々と受け継がれてきた元号という文化。実は中国を端に発している。そもそもは時の権力者が、空間だけでなく時間をも支配するという思想に基づき、こうした文化が始まったとされている。
日本でも、大化~平成、そして「令和」と元号を変えてきた歴史があるが、そんな元号がどうやって決められているか、皆さんはご存知だろうか。そして、そのなかには「くじ引き」で決められた元号があることを…。
日本の歴史の中でも、「くじ引き」で決められた元号は、後にも先にも「明治」だけ。どうして「明治」はくじ引きで決まったのだろうか。今回は、そんな不思議元号「明治」についての雑学をご紹介していくぞ!
【歴史雑学】「明治」という元号はくじ引きで決められた
【雑学解説】なぜくじ引きで決めたのか?
異例のくじ引きで決められた明治を語る前に、まずは元号の選定方法について知る必要がある。とはいえ、元号選定についての法律が制定されたのは昭和に入ってからであり、それまでは選定方法に法的な決まりはなく、いわゆる「天皇一世一元の制」も明治以降に定められた方式で、それまではわりと気軽に変えられていた。
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事実、日本の元号は大化(645~)から令和(2019~)までの間で、248回もの改元が行われており、実に平均5.5年のペースで改元されていることになる。
ちなみに、これまでの改元の中で一番短かったのは「朱鳥(しゅちょう)」という3番目につけられた元号で、その期間はなんと2か月。
現代の感覚ではありえない短さだが、当時は天災や飢饉が起こると、元号を変えることで悪い流れを断ち切っていたため、このような短期間の元号も発生したのだ。
こういった経緯から、元号がころころ変わるのはよくあることであったが、昔から変わっていない部分もある。それは、いつの時代も元号の提案者と選定者がそれぞれ別であることだ。元号法で立法化された現代においても、この方式は変わらない。
新元号選定までの流れ
現代の新元号決定の流れは、内閣総理大臣が元号提案者に提案を委嘱するところから始まる。ちなみに、この提案者の詳細は公表がないため全くの不明である。
まず、提案者が提出した複数の新元号案を、内閣官房長官ほか衆参両議院の議長と有識者を含め精査・検討して3つの候補を選定し、それぞれに第一候補、第二候補などの優先順位をつけるようだ。
これを内閣総理大臣が全閣僚会議・臨時会議にて諮問し、ここで新元号が決定される。つまり、提案者は不明であるが、最終的な選定者は閣僚ということになる。決定された新元号は天皇へ奏上され、公布・施行といった流れになっている。
しかし、「明治」が選定された当時は、越前藩主・松平慶永より考案されたいくつかの新元号を、明治天皇が自らくじ引きにより抽選した、というとってもシンプルな流れになっている。
古来、日本では「くじ引き」は神意を伺う神聖な神事とされており、しかもこのとき明治天皇は若干15歳。政治的意思決定を担うにはまだ幼かったこともあり、これが採用されたと考えられる。
新元号決定は、一過性のイベントのような楽しまれ方になっているが、その裏には多くの大人が動いているのである。
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【追加雑学】世紀の大誤報!幻の元号「光文(こうぶん)」
新元号が決まったとき、ひと際賑わいをみせるのが新聞業界だ。新元号決定が報じられるやいなや、各主要都市では号外が配布され、ものすごい勢いで捌かれていく。それは、「昭和」が新元号として決められた時も例外ではなかった。
1926年(大正15年)、東京日日新聞社(現・毎日新聞社)は、大正天皇が48歳で崩御された際、号外にて「新元号は光文と決定」と報道した。しかし、宮内省が同日午前11時に発表した新元号は「昭和」だったため、これが誤報となり、世間を賑わせた。
大スクープから一転、世紀の大誤報となってしまった「光文」だが、一説によれば、宮内省の情報漏洩を誤魔化すために「光文」で内定していた新元号を「昭和」へ変更したともいわれてる。
のちに、宮内省の元官僚がNHKのクイズ番組に参加したとき「大正天皇崩御の際に、次代の年号は私の選んだ『光文』と決まりましたが、事前に新聞に発表されたため、『昭和』になりました」と証言していることから、あながち都市伝説でもなさそうだ。
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雑学まとめ
今回は、異例の元号「明治」についての雑学をご紹介した。
元号は提案者が別にいて、新元号を検討していることから、選定者に新元号案が回ってきた段階ではそれなりのものが用意されている状態だ。そうであるならば、くじ引きで決めようが、有識者を含めて検討しようが、収まるところには収まるものである。
元号はもともとある熟語を用いることはないので、どうしても聞き慣れない言葉となり、決定時は違和感を感じるもの。しかし時が経てば、なじみのある元号として後世にも語られていくのだろう。