みなさんは「縁起が良い」イメージを持っているものに何があるだろう? 鶴と亀? 茶柱が立った時? 可愛い招き猫?
宝船に乗って福を運んで来る七福神も、縁起が良い神様として馴染みがあるのではないだろうか。
この七福神たちにまつわる驚きの雑学がある。この神様たち、実は恵比寿様以外のメンバーが全員、中国出身だという話があるのだ!
しかしその説が事実なら、恵比寿様だけ、ある意味一人ぼっちになっているということだ。詳細を調べてみたところ、それぞれの出身地についてわかったぞ!
【世界雑学】七福神のうち恵比寿様以外は中国の神様?
【雑学解説】「ほぼ中国出身説」はどこから?
恵比寿神以外が中国の出身だと考えられてしまった説について話をしよう。上記で挙げた「竹林の七賢図」という中国の絵画があるのだが、室町時代、これをモチーフに水墨画を描くことが流行ったそうだ。
この時代背景の中、瓊春(けいしゅん)という禅僧がこの七賢図を真似て、七柱の神様たちを集めて「七福神図」を描き、またこれも日本で流行った。
日本も中国も、「七」という数字がキリの良いものとして好かれる考え方がある。当時から信仰されていた神様たちを七柱描いたことで、よく知られている七福神のイメージが完成したのだ。
というわけで、中国からの絵画が元になったことから話が混ざり合い、「七福神はほぼ中国出身」という風にイメージが発展したと考えてもおかしくはない。
しかし、実際に中国出身なのは布袋・寿老人・福禄寿の三柱の神だ!
それぞれの本当の故郷
では、それぞれの出身地が本当はどこなのか? 以下に七福神たちの本来の出身地を記述しよう。
日本
恵比寿
インド
大黒天・弁財天・毘沙門天
中国
布袋・寿老人・福禄寿
見てわかるとおり、恵比寿神だけ日本出身なのはたしかなようだ。しかし中国・インド出身の神様が多い。恵比寿様がボッチであるのには、やはり変わりない…。
相手は神だった…。大変失礼いたしました…。
【追加雑学①】おいでませ、三国から集まったゴッド7
せっかく本来の出身国までわかったので、七福神様それぞれについての役割なども少し記述しよう!
恵比寿(えびす)
神道出身で、日本では古くから信仰が厚い。豊漁・商売繁盛の神。
釣り竿とタイを持っている姿で描かれることが多い神様として知られているが、古来より漁業の神様と知られており、七福神信仰では商いの神ともされている。
大黒天(だいこくてん)
日本では財福の神として知られている。ただし本来は仏教の守護神的な立場であり、軍神としての一面ももっているとされている。
それもそのはず、大黒天はインドで広く信仰されていたヒンドゥー教の三大神の一人であるシヴァ神の化身とされるマハーカーラに由来しており、冥府の王としての性質をもっている。日本では閻魔大王としても知られている。
弁財天(べんざいてん)
ヒンズー教での名はサラスバティー。財や芸能の神。メンバー唯一の女性で弁天様としても親しまれる。
芸術や知恵の神としての性質をもつインドのサラスヴァティーがルーツであるため、どちらかというと本来は財ではなく才能の神様であったことがわかる。
江ノ島神社に精巧に作られた像がある。
毘沙門天(びしゃもんてん)
ヒンズー教での名はクーベラ。軍神・武運や福徳を与える神。
毘沙門天は万能な神として信仰されており、いくつもの願いを聞き届けてくれるとされている。もはや毘沙門天だけいてくれれば幸せになれるのではないだろうか…!
毘沙門天の由来はインドのヤクシャ族の王クベーラにあり、財宝の神としての性質を持っていた。シヴァ神と仲が良い神としても知られていたようだ。
福禄寿(ふくろくじゅ)
七福神の中のおじいちゃんコンビの一人。主に長寿の神。
由来は中国の道教における木星、金星、南極星の3つの星に対する信仰をまとめたもので、福が木星、禄が金星、寿が南極星を意味している、つまりこの3星の信仰の文献をみて、残念だが昔の日本人が福禄寿という一つの神がいると勘違いしたところから生まれた神ともいえる。
寿老人(じゅろうじん)
おじいちゃんコンビの一人。木のように長寿であることからか樹老人の名前が使われることもあるようだ。
こちらも長寿など複数の福徳のある神だが、福禄寿とは役割が似ていて同一の神だとする見方もある。
布袋(ほてい)
開運や良縁の神。
パッと見は大きな袋を背負った太ったオッサン、まるでサンタクロースの様である。その笑顔から分かるとおり、心の広い穏やかな性格をした富の神様として信仰されている。
由来としては中国にあり、弥勒仏の化身ともいわれており、実在した人物がモデルとなっている説もある。また、弥勒菩薩の化身ともされる。
七福神って何となく縁起が良いってイメージだったが、こうした出身国や役割などは知らなかった人は多いのではないだろうか?
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【追加雑学②】中国の七福神?
中国は中国で、こんな人物たちもいる!
・漢鍾離(カンショウリ)・張果老(チョウカロウ)・呂洞賓(リョドウヒン)・李鉄拐(リテツカイ)韓湘子(カンショウシ)・藍采和(ランサイワ)・曹国舅(ソウコクキュウ)・何仙姑(カセンコ)
以上が「八仙」と呼ばれる道教の仙人たちだ。メンバー中、可仙姑(カセンコ)のみが女性である。この八仙を描いた絵が七福神と似ているものもあるため、こちらが七福神の元になったのではという説もあるほど。
しかし、前述した中国の七賢図の方が根拠とする情報量が多く、より有力な説だと考えられる。
ちなみにこの八仙だが、実はあのアクションスター・ジャッキーチェンの主演映画「ドランクモンキー・酔拳」という映画に登場しているのだ!
実写での登場というわけではないが、劇中にこの八仙に触れる重要シーンがあるので、もし興味が湧いたなら実際に見てほしい。かなり古い映画だが、レンタルショップでも置いてあるはずだ。
もしも、「八仙」という名前を見ただけで「ん…酔拳に出てきた?」と気づいた方には、脱帽である。
【追加雑学③】神様の数え方
ところで、雑学紹介中に「三柱の神」とか、七福神を「七柱」とか、「人」ではなく「柱」で記述していることにお気づきだろうか? これは日本神道の考え方で、神様の数え方を一人あたり柱(はしら)と数えるためだ。
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御柱(おんばしら・みはしら)という言葉があって、古の時代より樹木には神様が宿る、という神聖な意味合いがある。
なお、この扱いでの柱という単語は、古事記や日本書紀にも記載がある。蛇足かも知れないが、覚えておくと良いだろう!
【追加雑学④】七福神のことを歌にした動画もある!
お母さんと、そのお子さんたちが七福神のことを童謡として歌っていて、本当に福が来そうな気持ちにさせてくれる動画だ!
動画中には七福神のコスプレも見られ、なんだか微笑ましいぞ。
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【追加雑学⑤】布袋は実在した
釈契此という名前の伝説の僧で、大きな袋を持っていたために布袋和尚と呼ばれていたとされている。
916年に亡くなった人物だが、占いが必ず当たることや、雪が布袋を避けるなどの奇跡が知られており、辞世の句に弥勒の名があるため弥勒菩薩の化身とされるようになった。
【追加雑学⑥】別の七福神も存在した
一般的に七福神として知られるものはこれまで紹介してきた神様だが、福禄寿と寿老人の矛盾に気付いたのか、福禄寿を抜いて別の神様を入れることで「七福神」とされることもあるようだ。
その神様はさまざまだが、そもそも江戸時代以前には鍾馗・猩々・吉祥天・天鈿女命・大国主神・事代主命・市杵島姫命・鹿島大明神・猿田彦大神・天穂日命・武内宿禰など、多くの神様が七福神として広く信仰されていた。
こう見ると日本由来の神様が多く、仏教の流行とともに海外の神様を取り入れるようになったことが伺える。日本人は昔からミーハーな国民性だったのだろう。
【追加雑学⑦】恵比寿は太陽神だった…?
一説によると、恵比寿はイザナギとイザナミの最初の子供である「蛭子」であったともいわれている。
蛭子は手足がなかったために海に捨てられたが、それが恵比寿になったともいわれているのだ。そして水平線の向こうに沈む太陽の様子を、海に流された神の子として古代の人々が信仰していたという説もあり、天照大御神以前の日本土着の太陽神が蛭子だったという話もある。
現在は七福神という立場に甘んじている恵比寿だが、本来は強大な神なのかもしれない…。
雑学まとめ
七福神についての雑学をご紹介してきた。一つの国だけで信仰されていた神々が海を渡り、名を変えて別の国でも信仰されるとは、神様自身も思っていなかったことではないだろうか。
まして、七福神のように複数で一つとして信仰される神々も、探せば世界中にもっといるのかもしれない。
この七福神だって、それぞれに調査すれば、もっと細かいエピソードがあるだろう。神様の話題は実に興味が尽きない。
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