JR山手線の外回りの列車に乗ると、原宿駅と代々木駅の間に小さなホームが見える。特に利用されている形跡もないこぢんまりとした、それでいて年季の入ったホーム。最低限の質素な作りにがらんとした寂しげな雰囲気。
「昔使われていた駅の名残だろうか」「2020年に新駅ができる山手線だが、はるか昔に造りかけで断念したホームだったりして…」と想像が広がる。
しかしこのホーム、決して造りかけでも廃駅でもない。
私たちの象徴である「あの方々」が利用する駅なのだ。今回はそんな、原宿駅のなぞのホームについての雑学をご紹介していこう!
【歴史雑学】JR山手線原宿駅には、全国で唯一の皇族専用のホームがある
【雑学解説】幻の皇族専用「宮廷ホーム」
普段は丸の内の皇居にいらっしゃる天皇陛下。だが、ずっと皇居で公務をしているわけではない。日本全国津々浦々、それどころか世界中を回っているのである。
しかし、天皇陛下といえど瞬間移動はできない。
全国を飛び回るためには、何かしらの移動手段が必要になってくるのだ。車や飛行機、そのときによってまちまちだが、その一つが電車である。
電車といえばなんとなく、庶民的な乗り物のイメージが強いため、皇族が使うとは意外に感じる。
宮廷ホームの歴史
原宿駅と代々木駅の間にある「原宿駅側部乗降場」、通称「宮廷ホーム」は皇族が電車移動されるときのために造られた皇室御用達の駅だ。皇室専用とはいえ、華美な装飾などはなく、どちらかというと質素な造り。
実は造られた当時、大正天皇が病気療養中だったのだ。華美なホームで人目につくようにしてしまっては、体調のすぐれない大正天皇を多くの国民が目にして動揺しかねないという国民への配慮があった。
1925年10月に完成した宮廷ホーム。翌年8月に大正天皇が初めて利用した。そして昭和時代には、年に数回ほど昭和天皇・皇后両陛下が移動されるときに利用していた。
しかしその後、平成時代に入ると、皇族の鉄道移動は東京駅を主に使うようになり、宮廷ホームの出番はほとんどなくなった。そもそも、現代では新幹線など交通機関の発展により、お召し列車そのものの運行が減っている。
2001年5月に平成天皇・皇后両陛下が利用されてから約20年間、宮廷ホームは眠ったままだ。長期間使われていないためにレールの劣化などの不備も起き、すぐには使えない状態ではあるが、決して廃止されたわけではない。
今後利用される日は来るのか、その時を期待したい。
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【追加雑学①】一般客も利用出来るお召し列車「E655系」
天皇陛下が使う電車を「お召し列車」と呼ぶ。電車を一本まるまる「専用列車」として利用されているのだ。
このお召し列車、一般庶民は乗ることができないのかと思いきや、実は私たちも利用することができる列車がある。
その列車は、JR東日本が所有する「E655系」。2007年にデビューし、平成天皇・皇后両陛下も利用した列車である。日本に1本だけ存在するレア列車。
これは6両編成で、うち1両が皇室専用の特別車両になっている。この特別車両を外した5両が「和(なごみ)」として一般向けに走っているのだ。
とはいえ、1本しかない特別な列車。日常的に走っているわけではない。不定期にツアーが組まれ、それに参加することによって乗ることができる。
木目調の車内は絨毯敷きで高級感溢れる内装に、ゆったりとした座席配置、タッチパネル式のモニターや電動式のリクライニングなどの設備が充実。
乗るだけでリッチな旅が楽しめそうだ。
【追加雑学②】新幹線での移動は?
皇族は、移動手段に新幹線を利用されることも多い。
専用車やお召し列車などと違い、新幹線は私たちと同じものにしばしば乗っている。新幹線に乗って、ふと隣を見たときに天皇陛下がいたら腰を抜かすが、どのように利用されているのだろうか。
実は、皇族でも立場によって利用の仕方が変わるのだ。
皇太子殿下など、天皇以外の皇族は通常ダイヤの新幹線を車両単位で貸し切るのだが、天皇陛下はなんと1本まるまる貸し切りだ。天皇陛下専用の臨時列車が走るのである。
ちなみに、飛行機も貸し切り利用をするようだ。さすが天皇陛下ともなるとスケールが違う。
雑学まとめ
原宿にある宮廷ホームについての雑学をご紹介した。
このホームは、大正・昭和・平成と、専用の駅として天皇陛下の公務などを支えてきた。
今ではほとんど使われていないが、令和時代にもぜひ利用する瞬間を見てみたいものだ。