海外旅行の醍醐味は、なんといっても異文化を堪能することにある。しかしその反面悩まされることも多いのが、トイレ事情である。
ほかのことに関しては「こういうのもたまには悪くない」と思えても、トイレだけは別だ。ガマンするにも限界があるし、変に手間取るようなことなく、心置きなく済ませたい。
その点海外は有料だったり便座がなかったりと、日本のトイレとは大幅に仕様が違うものなので、事前チェックが欠かせない。
しかし…実は仕様が違ってもトイレがあるだけまだマシなのかもしれない。17世紀のベルサイユ宮殿には、不便とかそういう話ではなく、トイレ自体がなかったというぞ!
え…じゃあ、貴族の方々はどうしてたの? 今回はそんなベルサイユ宮殿におけるトイレの雑学を紹介しよう。
【歴史雑学】ベルサイユ宮殿にはトイレがなかった。
【雑学解説】ベルサイユ宮殿のトイレ事情。おまる持参。
ご存知ベルサイユ宮殿は、「朕は国家なり」で有名な太陽王ルイ14世の命により建てられた、豪壮華麗な居城である。
内装はもとより噴水のある庭園など、最盛期の面影が残る風情で観光客の人気も高い。しかしその優雅なイメージの反面、当時のトイレ事情はかなりお粗末なのだ…。
ベルサイユ宮殿の庭はウンコまみれだった…
ベルサイユ宮殿ができた17世紀当時のフランスの衛生観念は、現代とは比べものにならないほど希薄だった。というのも、治水が行き届いておらず、トイレを流す用の水なんて確保できなかったからだ。
ではどうするのかというと…おまるで用を足して、窓から投げ捨てる! 正気の沙汰ではないが、当時のフランス人からすればいたって当たり前の光景である。
一応は捨てる場所が決められていたようだが、みんな無視してポイポイ捨てるもんだから、パリは華やかどころか、ドロドロで悪臭立ち込める街だった。…イメージぶち壊し。
この絶句するような手法は、何も一般市民だけに限らず、貴族のあいだでも常識だった。華やかな舞踏会が行われるなか、みんな物陰に隠れて持参したおまるに用を足す。
かたや華麗に社交ダンスを踊る人たち、かたやウ〇コをきばる人たち。…カオスすぎる。そして中身は従者が庭に捨てる…という感じである。
そのためベルサイユ宮殿の庭は畑でもないのに肥しまみれ。それどころか、おまるまで間に合わないといって、廊下の隅でそのまましてしまう人なんかも。今だったら確実に出禁になるぞ…。
「そんな不潔な場所で暮らして、病気とかならないの?」と思うが、何しろバイ菌だらけの環境に暮らしているのが普通なのだから、当時の人は免疫力が強かったのかもしれない…。
ベルサイユ宮殿の王族は専用のトイレを持っていたが…
宮殿にやってくる貴族はみんなおまる持参だったけど、ルイ14世~16世といった王族に関しては専用のトイレがあった。
ルイ14世にはトイレ用の部屋があったというし、15世は寝室に上げ蓋式のトイレを常設していた。やっぱり王族となれば、衛生管理にも気を配るんだな…と思うところだ。
しかし…これも「専用のトイレがあった」というだけで、中身を外に捨てる方式は変わらない。つまり用を足す姿を見られる心配がないぐらいのことである。
ルイ16世に関しては水洗トイレを使っていたという話もあるので、彼の代からはベルサイユ宮殿もそれ用の水を確保できるような状態になっていたのかもしれない。まあ、結局ほかの貴族たちがその辺に捨ててたら一緒だけどね…。
みんなお風呂にも入ってなかった
17世紀フランスの人たちはこれまた市民も貴族も関係なく、お風呂に入る習慣もなかった。だってトイレを流す水すらないのに、そんなことに使っていたら、飲む水や洗濯に使う水がなくなってしまうじゃん! …という具合だ。
というか洗濯も月に1回ぐらいしかしないから、普通に服にカビが生えている人なんかもいたらしい。…浮浪者じゃないんだからさ…。
そんな当時の衛生事情もあって、飲み水以外の水に綺麗な印象がなかったのか、「水に浸かると疫病にかかる!」なんて変な噂も流れていた。このためみんな体を拭くだけで済ませていたという。
オーストリアからルイ16世のもとに嫁いできたマリー・アントワネットは、このお風呂事情に驚愕し「なにそれ不潔! 私は絶対お風呂に入るからね!」といって、自分だけはお風呂に入っていたのだとか。
ただ…ここでも疫病にかかることを懸念した従者が、「肌着は着たままで!」なんていうもんだから、下着姿のままお風呂に入っていたようだが。…それなら洗濯も一緒にできるかもね。
【追加雑学①】現在のベルサイユ宮殿もトイレが少なすぎ!
現在のベルサイユ宮殿はウンコまみれでもないし、王族でなくても使えるトイレがある。うん…というか今もなかったらだいぶ引く。
しかしそれでも問題はあって…もともとトイレに無頓着だった名残りなのか、広大な敷地と膨大な観光客数に比べて、トイレの数が極端に少ないのだ!
規模からしてサービスエリアのトイレ並みの数があってもおかしくないが、個室はわずか2つ、そのうえ20~30人が列を成している…という事態もザラにある。しかも有料ときた。
「もういい! その辺でしちゃう!」とヤケになっちゃいそうな感じだが、思い出してほしい。我々は17世紀のフランス貴族ではなく、21世紀の人間である。当時と同じ感じで用など足せば、人としての尊厳に関わるぞ!
というかベルサイユ宮殿だけでなく、パリの街自体にもトイレがそんなにない。観光の際は泊っているホテルなどで事前に済ませてから巡るのがポイントである。
以下に現在のベルサイユ宮殿の動画も紹介しておこう。
こんな美しい場所がかつてはウ〇コまみれだったとは…信じられない! トイレ事情に懲りずにぜひ行ってみてね。
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【追加雑学②】劣悪なトイレ事情から発明されたモノたち
ところで、この劣悪なトイレ事情も、視点を変えれば悪いことばかりではなかった。
我々が普段当たり前に使っているファッションアイテムのうち、こうした環境を乗り切るために開発されたものが存在するのだ。そのいくつかをご紹介しよう!
日傘
紫外線対策には欠かせない日傘。実は強い日差しや紫外線からではなく、窓から投げ捨てられるウンコから身を守るために開発された代物だ。
つまり、もとはウンコガードだったわけである。個人的には一度被害に遭ったら速攻捨てるのだが、昔の人はまさか何度も使い回していたのだろうか…?
ハイヒール
カツカツと音を響かせながら歩く様はいかにも「デキる女」感が漂うが、発明当初はそんなカッコよく歩く余裕などなかったはずだ。なぜならこちらも、その辺のウンコを踏まないように考案された代物だからである!
なんか現代ファッションのイメージをことごとく崩しているようで、申し訳なくなってきた…。
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香水
前述のように、当時は入浴の習慣がなかった。香水はそんな事情のなか、きつい体臭をごまかすために生まれたそうだ。また屋内外に関わらず至るところから漂う悪臭から鼻を清めるため、という意味もある。
臭いのが当たり前だから慣れっこってわけでもなかったんだな…。
ちなみにルイ14世は「最高の香気を漂わせた国王」などという異名があり、かなり香水を重宝していたようだ。こう聞くと、なんかオシャレでカッコイイ感じもするが、内情を知るとちょっとゲンナリする。
彼は歯がなかったため、食べものの消化に問題があり、医者から下剤を処方されていた。そのため、1日平均して15回ほどもウ〇コをしていたというのだ。というか、トイレに間に合わないこともよくあるから、とにかく身体が汚れる。
そのうえお風呂も入らないから、もう香水をかけまくらないと臭くてやってられなかったのだ。…なんかそれって悪臭と良い匂いが混ざって、余計になんともいえない状態になりそうだが…。その場しのぎにはなってたのか?
「ベルサイユ宮殿のトイレ」の雑学まとめ
今回は、ちょっと残念なベルサイユ宮殿のトイレの雑学を紹介した。
華麗に見えても実はウンコまみれ。というか当時の人からすればそれが当たり前だから、ウンコまみれでも華麗である。
今でも海外に行くとその文化の違いから、日本のトイレが恋しくなる場面はけっこう多い。
叶うなら17世紀の人々にぜひともお伝えしたい、「トイレは大事!」だと。
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