生涯に渡って優れた楽曲を世に残し続けたベートーベン。そして何より、耳が聞こえなかったという彼の逸話は、その才能をさらに神格化させた。
音が聴こえなくても作曲ができてしまうとは、人並み外れて音楽の素養が染み込んでいたのだと思わざるを得ない。
しかし実はベートーベンは、ピアノで音を鳴らして確認しながら作曲を行っていたという。「じゃあ、耳が聞こえないなんて大嘘じゃないか!」と思ってしまいそうだが、それは早計だ。ベートーベンが難聴だったのは嘘ではない。
…ではどうやって音を確認していたのだろうか。その真相は、耳が音を感じ取るメカニズムに関係していた。今回はそんなベートーベンの難聴に関する雑学に迫っていく!
【歴史雑学】ベートーベンは全く耳が聞こえないわけではなかった
【雑学解説】ベートーベンが音を聞いていたメカニズム!骨伝導とは
難聴には「伝音性難聴(でんおんせいなんちょう)」「感音性難聴(かんおんせいなんちょう)」の二種類がある。
伝音性難聴は、鼓膜の振動を内耳に上手く伝えられない病気。そして感音性難聴は、内耳に伝わった音の情報を脳に上手く届けられない病気だ。
ベートーベンが患っていたのは「耳硬化症(じこうかしょう)」という伝音性難聴の一種。つまり鼓膜の振動を内耳に伝えるのが難しい状態にあったのだ。
要するに鼓膜の振動から音を感じることは難しいが、それ以外に内耳に音が届く方法があれば、ちゃんと聞こえるのである。そして人は鼓膜の振動だけで音を感じているのではない。それ以外の骨から伝わってきた振動も音として感じ取れるのだ。
これを「骨伝導(こつでんどう)」という。ベートーベンは骨伝導を通して、自身の奏でたピアノの音を聞き、作曲していたのだ。
骨伝導の恩恵を強く得るため、指揮棒を口にくわえ、ピアノに触れさせながら演奏していたという話もある。ピアノ本体の振動を、指揮棒を使って骨に直接伝えようとしたのだ。
スポンサーリンク
【追加雑学】録音した自分の声の違和感にも、音の骨伝導が関係している
録音された自分の声を聞いたことがあるだろうか。聞いたことがある人は「いつも自分が聞いている声と違う…」と違和感を覚えたはずだ。
それもそのはずで、普段自分が聞いている声は鼓膜の振動と、骨伝導の両方を使って聞いているもの。それに対して録音されたものは、鼓膜の振動のみで聞いたものなのだ。
骨伝導の有無で、それほどに音の聞こえ方が変わってくるのは興味深い。録音された自分の声を聞いたことがない人は、ケータイのボイスメモなどを使ってぜひ試してみてほしい。
筆者は自分の声をイケてると思っていたのだが、録音したものが残念過ぎて絶句したことがある…。
雑学まとめ
ベートーベンに関する雑学を紹介したが、いかがだっただろうか。ベートーベンは鼓膜の振動を内耳に伝えることが難しい病気だったので、骨の振動を通じれば音を聞くこと自体はできた。これを聞けばピアノを使って作曲をしていたことにも納得がいく。聞こえない状態で作曲をしていたというのは誤解だ。
かといって、ベートーベンが優れた作曲家であることに変わりはない。耳が聞こえていても絶え間ない努力と才能がなければ、多くの名曲を残すことなどできないのだ。
おすすめ記事
-
ベートーベンはどんな性格だった?潔癖症で癇癪持ちで神経質…?
続きを見る
-
長い…!ベートーベンの"第九"の正式名称は100字以上…
続きを見る