「阿吽の呼吸」という言葉がある。
「阿吽の呼吸の連携で見事逆転勝利!」とか「阿吽の呼吸の老夫婦」など、スポーツで絶妙なチームワークを発揮したときや、長年連れ添った仲の良い夫婦などに使われるが、この「阿吽」とは本来なんなのだろう?
やはり、数多くのことわざや漢字がそうであるように中国が語源なのだろうか?
否! 阿吽のルーツはヨガやカレーで有名なあの国にあった。今回の雑学では「阿吽の呼吸」の語源についてご紹介していこう!
【生活雑学】「阿吽の呼吸」の「あうん」の語源はインド
【雑学解説】古代インドの言葉「サンスクリット語」
「阿吽」とは元来、古代インドで使われていた「サンスクリット語」であり、「阿」は口を開いたときに最初に出す音、「吽」は口を閉じたときに出す最後の音であることから、万物の始まりと終わりを示す言葉とされた。
他にも、「阿」は全てが誕生する以前の根源を意味し、「吽」は悟りに至った境地を意味する場合もある。
つまり「阿吽」とは、現世に生まれてから悟りの境地に至るまでの道程を示しているのである。
なんともスケールが大きい話だが、そう考えると「言葉にせずとも通じ合うこと」を意味する「阿吽の呼吸」に「阿吽」が使われている理由に納得がいくのではないだろうか。
【追加雑学①】サンスクリット語とは?
「阿吽」の語源がサンスクリット語であることは先程も述べたが、そもそもサンスクリット語とはなんなのだろう?
サンスクリット語とは、主にインド・東南アジア・南アジアにおいて使われていた古代語である。
サンスクリット語は「梵語(ぼんご)」とも呼ばれ、「サンスクリット」とは「完成された・洗練された言語」という意味である。
具体的には、紀元前5世紀~紀元前4世紀にインドの文法学者「パーニニ」が規定したサンスクリット語の文法のことを指すが、広い意味では古代インドの聖典「ヴェーダ」に使われていたヴェーダ話や、仏典に使われている言葉も含むようだ。
また、古代語ではあるが現代においても複数あるインドの公用語の1つである。実際に話せる人は少ないが、現代のインドでも論文などの文章に使われたり、サンスクリット語について有識者が議論を交わす「サンスクリット会議」なるものがあるらしい。
こんなにある! サンスクリット語が語源の言葉
以上がサンスクリット語の概要だが、「阿吽」以外にも日本の言葉にいろいろ影響を与えている。
むしろ仏教用語の多くはサンスクリット語の漢字による音訳らしい。さすがは仏教発祥の地インドである。
たとえば…。
- 僧
- 旦那(檀那とも書き、本来は仏教用語である)
- お盆
- 卒塔婆(そとば。お墓にある供養のための言葉が書かれた細長い板のやつ)
- 南無・阿弥陀仏
これらは全てサンスクリット語の音訳(またはそれが変化したもの)である。
「僧」や「南無・阿弥陀仏」などはまだわかるが、「旦那」など現代でも一般的に使われている言葉がサンスクリット語から来ていたとは驚きである。
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【追加雑学②】「阿吽」に由来するあれこれ
「阿吽」の影響は言葉だけではなく、実際に身近なところで目にすることもできる。
たとえば、神社の入り口などで二体一対で見かける狛犬がそうだし、お寺などで見かける迫力たっぷりの金剛力士像(仁王像)もそうである。
狛犬や金剛力士像をよく見てみると、一方が口を閉じていて、もう一方は口が開いていることに気づくと思う。
実はこれ、口が開いているほうは「阿形」(あぎょう)と呼ばれ、口を閉じているほう「吽形」(うんぎょう)と呼ばれる。もちろんこれは「阿吽」からきている。
狛犬や阿吽について、可愛らしい「リアル神主」の女性が詳しく説明している動画を見つけたので、もし良ければ参考にしていただきたい。
雑学まとめ
「阿吽の呼吸」にまつわる雑学をご紹介してきたが、いかがだっただろうか。
「阿吽」は古代インドの言葉から来ているということだけではなく、その言葉は「仏教発祥の地」という視点で見た場合のインドとも関わりが強く、現代でも仏教の用語や風習として、今日の日本文化に大きな影響を与えていることがお分かりいただけただろうか。
歴史や文化など少しお固い話も混じってしまったが、要するに「阿吽の語源は古代インドで使われていたサンスクリット語」ということなので、せっかく読んでくれたのだから最低限これだけでも覚えて帰ってほしい。
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