題名にある「井端」とは、かつて中日ドラコンズと読売ジャイアンツに所属した、元プロ野球選手・井端弘和(いばたかずひろ)のことである。
とくに中日ドラゴンズの在籍時は、ショートおよびセカンドを守った荒木雅博(あらきまさひろ)選手との「アライバコンビ」で、二遊間(にゆうかん)に鉄壁の守備を築いた。この記事では、国内ならず、国際舞台でも大活躍した井端選手の雑学についてご紹介する。
【スポーツ雑学】「なんという井端!」が誕生したダブルプレーとは?
【雑学解説】井端選手が見せた大舞台での勝負強さ
スポーツ競技は、選手の瞬時の判断が勝敗に直結する。その傾向は大舞台になればなるほど強くなるといえる。井端選手はその意味で、まぎれもなく大舞台に強い選手だった。
今でも野球ファンの間で語り継がれ、テレビの実況者が思わず「なんという井端!」と叫んだビックプレーをご紹介しよう。
2008年、セントラルリーグ・クライマックスシリーズ第2ラウンド。東京ドームでおこなわれた日本シリーズの進出を賭けたこのシリーズにおいて、井端選手が所属する中日ドラゴンズ(以下・中日)は、読売ジャイアンツ(以下・巨人)と対戦した。
井端選手のビックプレーは、第1戦目の両チームが3-3の同点でむかえた8回裏に生まれた。中日はこの回、1アウト満塁の大ピンチを迎えていた。
巨人の原監督は、絶好の勝ち越しのチャンスで、左バッターの高橋由伸(たかはしよしのぶ)選手を代打に送り込む。いっぽう中日の落合監督は、サイドスローの左投手・小林正人(こばやしまさと)をマウンドにあげた。
左バッター対策の「ワンポイント・リリーフ」である。小林投手はストレートとスライダーをまじえた、左右のコースを意識した投球で、高橋選手に的を絞らせない。そして、2ボール・2ストライクの並行カウントでむかえた5球目。
小林投手が投じたアウトコース高めの球を高橋選手がひっかけ、ボールはピッチャーの後方へと転がった……。
守備のセオリーを破った瞬時の判断
このとき中日の内野陣は、本塁と1塁で2つのアウトを取るホームゲッツーを狙っていた。巨人に1点も与えない前進守備を敷いていたのだ。
高橋選手の打ったボールはピッチャー後方の二遊間へと転がり、前進守備を敷く中日内野陣の間を抜けると思われた。しかし、ショートを守る井端選手が、間一髪、体勢を崩しながら、ボールを捕球する。
井端選手はボールを捕球した体勢が悪かったことから、ホームへ送球できないと瞬時に判断するやいなや、ボールを捕球した体勢を利用し、すかさず2塁ベースに戻ってランナーをアウトにした後、素早く1塁へ送球し、見事にゲッツーにしてみせたのである。
上の動画は、当時の映像である。実況と解説者が大興奮しているのがお分かりいただけるだろう。中日は1アウト満塁の大ピンチを、6-6-3のダブルプレーで見事にしのいだ。
本来、満塁時に前進守備を敷いた守備チームのセオリーは、相手チームに1点も与えたくないため、ホームでアウトを取ることが最優先される。
だが、井端選手は捕球した体勢が悪いと判断するや、そのセオリーを破り、ホームへ送球するのではなく、2塁へ戻ってダブルプレーを成功させたところに、このプレーの凄さがある。
このビックプレーを、放送を担当した実況者は「なんという井端!」と絶叫したというわけである。このプレーで流れをつかんだ中日は、9回表に逆転に成功し、この試合を見事に勝利でかざった。
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【追加雑学①】国際舞台でも勝負強さを発揮!侍ジャパンの井端
井端選手は、国内のみではなく、国際舞台でも持ち前の勝負強さを発揮した。2013年に開催された、第3回ワールドベースボールクラシック(WBC)の2次ラウンド(東京開催)・台湾戦でのことである。
この2次ラウンドは、キューバ代表・日本代表・台湾代表・オランダ代表の4チームで争われ、「ダブルエリミネーション」と呼ばれる、2試合負けたら即敗退となるトーナメント方式で行われた。
つまり初戦に勝てば、決勝ラウンドの進出に王手をかけるが、負ければ即敗退に追い込まれることになる。第2次ラウンドの初戦となる台湾戦は、その意味からも重要な意味をもつ試合だった。
日本は始終、台湾に押されるかたちでゲームは進んだ。8回表に日本は一度同点に追いついたものの、その裏に台湾が逆転に成功し、日本は絶体絶命のピンチに追い込まれた。
9回表・1アウト後、四球を選んだ鳥谷選手が盗塁に成功し、日本は2アウト・ランナー2塁の状況を何とかつくりだした。ヒットが出れば同点に追いつくが、バッターが凡退すると即試合終了となる場面だ。
その痺れる場面で、2番バッターの井端選手にまわってきた。彼は持ち前の勝負強さを発揮し、2ストライク・2ボールの並行カウントから、左中間へ同点となるタイムリーヒットを放ち、日本は土壇場で台湾に追いついた。当時の映像をご覧いただきたい。
その後、日本は10回表に決勝点を挙げ、2次ラウンド初戦の台湾との激闘を制したのである。9回表2アウトの土壇場から、値千金のヒットを放ったのが、井端選手だったのだ。
WBCの2次ラウンドにおいて、井端選手は打率.556を残し、MVPに輝いた。また大会ベストナインの「指名打者部門」にも選出された。大会後、台湾戦の同点タイムリーについて尋ねられた井端選手は、あの場面を「一生忘れない」と語っている。
「これぞ井端!」という勝負強さを発揮した。彼にとっても生涯忘れられないタイムリーヒットになったようだ。
【追加雑学②】あの選手の活躍を見抜いていた?井端選手の目利きがスゴイ
井端選手はプレーのみならず、洞察力の深さでもプロ野球ファンを震撼させたエピソードの持ち主である。それは2011年12月、あるテレビ局が放送した、プロ野球選手100人が選ぶ「100人分の1・パワーヒッター部門」という番組内でのことである。
この番組は、現役プロ野球選手100人にアンケートをおこない、シーズン中にスゴイと思った選手をテーマごとにランキング形式で紹介するという企画である。
この放送において、中日ドラゴンズの井端選手が、当時1軍の出場経験がなくまったくの無名の新人選手をあげたことが、プロ野球ファンの間で後に話題になった。
その選手とは、2015年にトリプルスリーを達成し、いまや球界屈指のスラッガーに成長した、福岡ソフトバンクホークスの外野手・柳田悠岐選手である。
当時、柳田選手はプロ1年目で、1軍での出場経験がない無名の選手だった。それにも関わらず、井端選手は唯一、柳田選手の名を挙げて、注目のパワーヒッターの選手として全国のお茶の間に紹介した。
当時の映像をご覧いただきたい。5分45秒あたりに井端選手が登場する。
井端選手は「2軍での試合を観たとき、彼が軽々とバックスクリーンまでもっていった。左バッターにもかかわらず、レフト線にライナーでフェンスを直撃する打球を放って、もっているパワーはケタ違い」と柳田選手についてコメントしている。
その後の柳田選手の活躍は周知の通りである。2015年には、打率.363・34本塁打・32盗塁をマークし、これまで史上10人しか達成したことのない「トリプルスリー」を見事に達成した。またこの年のパシフィックリーグのMVPにも輝いた。
井端選手は、攻守のみならず、その洞察力や眼力でも、野球ファンに驚きを与えたのである。スゴイぞ、井端!
雑学まとめ
以上、井端選手にビックプレーが生まれた際の実況者のフレーズと、現役時代の井端選手にまつわる雑学についてご紹介してきた。
筆者は、柳田選手が所属する球団を贔屓にしている野球ファンで、おまけに守備の名手で勝負強い、井端選手のようなプレーヤーが大好きでもある。そのため、自然と文章に力が入り、つい長文になってしまった。
2019年現在、井端氏は侍ジャパンの内野・守備走塁コーチをつとめている。現役時代に自身が守備の名手として活躍したように、今度は侍ジャパンのコーチとして、チームを鉄壁の守備陣に鍛えあげてほしいものである。2020年の東京オリンピックでの侍ジャパンの活躍に期待したい。
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