書を伝える鳩と書いて、伝書鳩。名前は聞いたことがあるだろう。「足に手紙をくくりつけて運ぶ鳩だよね!」。そう、そのとおりである。しかし、この伝書鳩が実はすごく重大な任務を担っていたことはあまり知られていない。
携帯電話やIT機器がまだなかった頃の新聞社は、通信手段の1つとして伝書鳩を使っていたのだ! お寺や公園で「ポッポッポッ」と歩いている鳩とは違う。原稿を運ぶために飼われていた、いうならば新聞社の飼い鳩だ。
なぜ鳩を使ったのだろう。伝書鳩を使って送った原稿とは!? 今回は、伝書鳩に関する雑学を紹介するぞ!
【生活雑学】昔の新聞社は、伝書鳩を使って原稿を送っていた
【雑学解説】伝書鳩は、最速の通信手段だった
かつて新聞社で飼われていた伝書鳩は「レース鳩」と呼ばれる鳩で、その辺にいる鳩とは違う鳩である。1,000km離れた場所からも巣に帰る帰巣本能と、速いものでは時速100kmで空を飛ぶ飛翔能力が抜群に発達した、とんでもなく優秀な鳩なのだ。
伝書鳩の歴史をたどると、なんと古代エジプト時代! 漁師が、船から陸への通信手段として使っていたと記録されている。普段は陸で飼われている鳩を漁に連れていき、連絡したいことを紙に書いて鳩の足にくくりつけ、船の上から鳩を放す。鳩は巣である陸へと帰り、陸にいる者は鳩が運んだメモを受け取るという方法だ。
いたってシンプルである。この鳩の本能に目をつけ、通信手段として使うことを思いついた古代の人には驚きを通り越して感動してしまう。
そして19世紀のヨーロッパでは報道に使われるようになった。しかし日本のメディアが伝書鳩を導入したのはずっと遅く、初めて使われたのは明治30年だったと記録されている。
各新聞社の屋上には常時数百羽の鳩が飼われていた。記者は風呂敷に鳩を3羽包んで現場に出かけ、現場で書いた原稿やフィルムを丸めて筒に入れ、鳩にくくりつけ空に放したという。時速100km近くで会社の屋上へと帰る伝書鳩は、最速の通信手段だったわけだ!
記者は3羽の鳩に同じ記事を持たせていた。これは途中で大きな鳥に襲われたり、事故にあったりして戻れない鳩が中にはいたからだ…。
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【追加雑学①】甲子園や東京オリンピックの速報も!
甲子園や東京オリンピックの速報にも、伝書鳩が使われた。記者は、甲子園や競技場に何十羽もの伝書鳩を持っていき、試合に動きがあるたび2羽ずつ鳩を飛ばして会社に知らせた。
そしてその日の夕刊にどこまで情報を載せることが出来るか、新聞社は熾烈な競争をしていたのだ!
【追加雑学②】人命救助で大活躍
よく思いついたなと感心する話だが、登山者の事故が多かった谷川岳(群馬と新潟の県境)のふもとで500羽ほどの伝書鳩を飼い、入山者に鳩を持たせた。事故にあったときに鳩を飛ばせば、5分もかからずに山を降りてくれてSOSを伝えられる。
そうして救助された登山者がたくさんいた。
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【追加雑学③】戦火の中を飛んだ小さな伝令使
伝書鳩は、戦争中に軍の通信手段としても使われた。動けなくなった日本兵が、SOSのメッセージを2羽の鳩に託した。1羽は敵に撃ち落とされたが、もう1羽も銃弾に当たったものの、血まみれになって本隊まで帰って知らせ、兵隊は救助されたという話もある。
帰巣本能だと言ってしまえばそうなのだが、動物ものの話に弱い私は、想像するだけでヤバイ…。泣けてくる…。
伝書鳩に託された暗号文に関するニュース動画を発見!
イギリスの民家の煙突の中で、伝書鳩の死骸が見つかった。鳩の足の骨に付けられた容器の中から、第二次世界大戦当時の軍の暗号文が出てきたのだ!
その動画がこれだ。
本当に伝書鳩は戦火の中を飛んでいたんだ…。途中で銃弾をあびたのか、煙突に迷い込んでしまったのか、どちらにしても切なくてやり切れない気持ちになる。
雑学まとめ
今回は、伝書鳩に関する雑学を紹介した。この雑学を知る前の私がイメージしていた伝書鳩は、お手紙を運ぶ鳩だった。しかし、小さな体でこんなにも重要な任務を果たしていたなんて…。
鳩の本能をうまく利用した人間はすごいが、いち早く情報を知らせたいという人間の思いをのせて空を飛んだ鳩に、感謝の気持ちすら芽生えてくる。その辺でのんびり暮らす鳩たち…を見る目は変わらないが。