「食い逃げ」
飲食店で飲食して代金を支払わず逃げること。無銭飲食。ドラマや漫画の世界だとよく見かけるが、もちろん現実にもおきている。
「わたし、したことあるよ」なんていう人はいないと思うが、飲食店で働いたことがある人の中には実際に遭遇したことがある人もいるかもしれない。
ところで、この「食い逃げ」だが、刑事上罪にならないと聞いたことがあるだろうか? 今回は初めて聞く人からすると、そんなバカなと思ってしまうこの噂を詳しく説明しよう。
【ルール雑学】食い逃げは理論上無罪?
食い逃げはある一定の条件がそろうと、刑事上無罪になる。
【雑学解説】食い逃げが罪にならない条件とは?
こんな書き方をしてしまうと、まるで食い逃げを助長しているかのように聞こえてしまうかもしれない。先に言うが、けっしてそんなつもりはない(汗)
ただ、今の日本の法律では実際に無罪になることがあるのだから仕方がない。ちょっと詳しく説明しよう。
まず、食い逃げとはどんな罪に問われるのだろうか。「窃盗罪」と答える人が多いかもしれないが、それは間違いだ。
ちょっと難しい話になるが、窃盗罪は「他人の財物を窃取した者」に対して適応される罪だ。飲食店で注文した料理を食い逃げする場合は、「経済的利益を盗む」と解釈するため、窃盗罪にあたらないのだ。
それでは実際に食い逃げした人達がどのような罪で捕まるかというと、「詐欺罪」にあたる。そもそも詐欺罪は、人を欺いて利益を得た場合に適応されるのだが、他人の財物だけでなく、経済的利益を騙し取った場合でも適応ができる。
つまり、詐欺罪になるのか、ならないのかが重要だ。食い逃げをしても詐欺罪にあたらなければ無罪になる。
では、どうすれば詐欺罪にならないのだろうか? じつはたった2つの条件をクリアすれば無罪となるのだ。いや、本当に食い逃げは助長していないからな!
条件1 商品を注文し、受領するまでは代金を支払う意思があった
最初から食い逃げをするつもりで注文している場合は、店員を騙しているため詐欺罪となる。しかし、商品を受け取った段階で代金を支払う意思がある場合は詐欺罪にあたらない。
支払いの意思がどうなのかを立証するのは難しい気もするが…
条件2 店員が気付かないあいだに店から出る
たとえば、店員に嘘をついて店を出たり、財布をとりに帰るとごまかした場合は、店員を騙しているため詐欺罪になる。また、店を出ようとして店員ともみ合いになったり、脅迫した場合は強盗・恐喝とみなされるため、もちろん捕まる。
しかし、店員が気付かないあいだに店を出た場合はどうだろうか? 誰も騙さず、脅さず、暴力を振るわなかった場合は、何の罪が適応されるのだろうか? そう、強盗罪にも恐喝罪にも、そしてもちろん詐欺罪にもあたらないのだ。
以上、この2つの条件を満たした場合は食い逃げしても刑事上無罪となるのだ。ビックリする人も多いかもしれないが、「代金を支払うつもりで注文し、商品を食べ終わった後で財布を忘れたことに気づいたため、店員のいないすきに店を出た」場合は刑事上無罪となるのだ。
スポンサーリンク
【追加雑学】なぜ窃盗罪には経済的利益が適応されない?
先ほど出てきた、詐欺・強盗・恐喝は経済的利益が適応されるのに対し、窃盗罪は適応されないが、なぜだろうか?
これは窃盗罪の対象に経済的利益を含めてしまうと、範囲が非常に広がってしまうためだ。たとえば、「立ち読み禁止の本屋で立ち読みをした」場合や、「スタジアム近くのマンションから勝手に野球を観戦した」場合も警察の出番となってしまう。
そのため、窃盗罪の対象に経済的利益は含まれないのだ。なんかイマイチ納得できないがそうなっているらしい。
雑学まとめ
屁理屈を並べているような気がするが、現在の日本の法律に基づいた説明をした。正直、調べた筆者自身も驚いたが、すべて本当のことだ。
この記事を読んで「やってみよう」と思う人はいないと思うが、もし遊び半分で食い逃げをするつもりなら、それはやめたほうがいい。今まで書いてきたのは「刑事上罪に問われない」というだけの話で、民事上は代金支払いの義務があるため、店員に捕まったら代金を支払わなくてはならない。
まぁそれ以前に、自分から店に入って、自分が注文しているわけだから、その対価を払うのは人として当然の事だ。人の道を踏み外さないようにしよう。