ワニというと、どこか恐竜の末裔っぽい見た目がカッコよく、男のロマンを感じさせる動物である。
そして見た目だけではなく、その噛む力にしても映画『ジュラシックパーク』でおなじみの暴君・ティラノサウルスに匹敵するほどだというぞ! まさに現存する恐竜といってもいいのではないか。
うむ…ワニが恐ろしく強いことはたしかだ。しかし彼らには、意外な弱点も存在するという…。
【動物雑学】ワニの噛む力は恐ろしいが、口を開く力は超弱い
【雑学解説】ワニの口を開く力は人間の握力よりも弱い
2012年、アメリカ・フロリダ州立大学の研究チームの発表で、実測された生物のなかでは、ワニの噛む力は地球上最強であることが発表された。
ワニのなかでも特に力の強いイリエワニの噛む力は、1平方センチあたり約260キロ。これは車のフレームぐらいなら、軽く噛みちぎってしまうほどである。…彼らにかかれば、川を渡る舟も真っ二つというわけだ。
対して人間の噛む力は1平方センチあたり約10~14キロ、ライオンやトラなど、大型の肉食獣でも70キロというから、ワニからすればお話にならないレベルである。
このように驚くほどの噛む力をもつワニ。…しかしその一方、実は口を開く力が中学生の握力並みに弱いのだ。その力はたったの30キロだというから、まさに中学生の男子が1人でも押さえ込めるぐらいである。
ちなみに、ワニと対面する危機に陥ったカニが、その口を挟んで押さえ込んだという衝撃の事例もある。どんだけ! 耐水性のガムテープで2周も巻けば、その口を開くことは二度とできないだろう。
ただしサイズによるという意見もあり、クロコダイルなどの大型種になると、レンジャーが3人がかりでロープを用い、ようやく拘束できるぐらいだという。それでも噛む力に比べるとやはり弱いが…。
獲物を待つスタイルのため、噛む力に特化しすぎた
恐竜並みの噛む力をもっていながら、まったく拍子抜けさせられる話だが、なんでも彼らの口を開く力が弱いのは、その噛む力を手に入れる代償だというぞ。
ワニの狩りは、水辺にやってくる動物をじっと待つスタイルで、一度逃せば次はいつご馳走にありつけるかわからない。つまり、彼らは生き残るために、一度捕らえたら逃げられないようにと、地球上で最強の噛む力を手に入れたのだ。
しかし噛む力に特化しすぎてしまったせいで、開くほうの筋肉はほとんど発達しなかったのである。恐竜並みの力を手に入れようと思うと、やはり何か偏った部分でもないと無理ということか?
カバのようにあくびをする習慣でもあれば、多少はマシだっただろうか…。
【追加雑学①】ワニは体を回転させて咀嚼する
口を開く力がそんなに弱いなら、ワニは捕まえた獲物を咀嚼して飲み込むのも一苦労ではないか? まさかヤギのように口を横にスライドさせて食べるなんてことはないだろうし…。
と、思っていたら、やはり彼らは獲物を食べるときに口をモグモグさせるようなことはしない。なんと強靭な口で捕まえた後は、体を回転させてその肉を引きちぎるのだ! その必殺技は人呼んで『デスロール』!
なんだかRPGのラスボスが使ってきそうな技の名前である。圧倒的な力で噛みつかれた動物はひとたまりもないのだから、まさしく"死の回転"と呼ぶにふさわしい。開くのが苦手な彼らなりに、狩りの仕方も工夫しているのである。
以下にワニの捕食シーンの動画を紹介しておこう。
なるほど、たしかに体を回転させて肉をひきちぎろうとしている…。いや、でもやっぱりちょっと食べにくそう…噛む力に特化しすぎるのも考え物である。
【追加雑学②】大人になれるワニは500分の1匹
大型肉食獣をものともしない戦闘力を誇るワニだが、実のところ幼少期はすごく貧弱。その体長は10センチほどしかなく、大人になれるのはわずか500匹に1匹だという。
まるで一子相伝の北斗神拳のように、厳しい生存競争を勝ち抜いた者だけが最強の座を手に入れられるということだ。まあ、最強がそんなに大量にいたら、それこそ食物連鎖のバランスが崩れてしまうし…自然界とは本当によくできているものなのだ。
以下の動画の冒頭部分で子どものワニが映されているのだが…か…可愛い。まさか人間が素手で触れるほどとは!
雑学まとめ
ワニの噛む力は地球上最強で、車のフレームもなんなく噛みちぎってしまうほど。しかし、開く力は中学生の握力より弱い…今回はそんなどこかマヌケなワニの生態の雑学をお届けした。
もしジャングルでワニに遭遇したら、その口が開く前に押さえ込めば勝てるかもしれない! …とはいえそんな状況下で逃げずに飛びかかる勇者がどれぐらいいるだろうか…。なんかデスロールで振り落とされそうだし。