日本における2大ロールプレイングゲーム(RPG)といえば、「ドラゴンクエスト(ドラクエ)」と「ファイナルファンタジー(FF)」の両シリーズだろう。
シリーズの第1作となるファミコン版「FF」は、「ドラクエ」の翌年となる1987年にゲーム会社・スクウェアから発売されると、後発ながらも秀逸なシナリオや斬新なシステムなどで人気となり、スクウェアの看板ゲームとしてシリーズ化されている。
だが、タイトルで「ファイナル」と謳っておきながら、その後10作以上もの続編を出しているのを疑問に思ったことはないだろうか? これじゃあ、まるで「閉店商法」じゃないか!
そんな疑問にお答えすべく、今回の雑学では「FF」シリーズの「ファイナル」の意味を探っていきたい。
【サブカル雑学】「ファイナルファンタジー」は続編があるのに、なぜ「ファイナル」なのか?
【雑学解説】「ファイナル」がタイトルに付いた真相とは?
「FF」のタイトルに「ファイナル」がついている理由については、「FF」シリーズの音楽を担当している植松伸夫がインタビューで語っている。
そのインタビューで植松伸夫は、初代「FF」を制作している時期はスクウェアの経営が苦しく、この作品が会社として「最後の作品」になると開発陣が考えていたために「ファイナル」がつけられた…と明かしたのだ。
そして、このインタビューはファンのあいだでは有名であり、「ファイナル」がついた理由はスクウェアの経営が苦しかったから…というのが定説となっていた。
しかし、「FF」シリーズの生みの親である坂口博信は、2015年の「国際日本ゲーム研究カンファレンス」で上記の理由を否定している。
坂口博信によると、「FF(エフエフ)というアルファベットで表記できて、なおかつ4音で発音できる略称を前提に名づけた」と語っており、「最初はファイティングファンタジーというタイトルにするつもりだったが、同名のボードゲームがあったためにファイナルに変更した」と説明したのだ!
しかし、当時のエニックスの業績が苦しかったことは坂口博信も認めていることから、本当は「最後の作品」という意味も含んでいたのでは…と勘ぐってしまうのは筆者だけだろうか?
【追加雑学①】「チョコボ」の名前の由来はお菓子の「チョコボール」から
「FF」シリーズに登場する二本足の鳥型モンスター「チョコボ」は、プレイヤーを助ける存在であり、「チョコボのダンジョン」シリーズではメインキャラクターとしてゲーム化されるほど人気のあるキャラクターである。
「ファイナルファンタジーⅡ」でシリーズ初登場したチョコボだが、その名前の由来はお菓子の「チョコボール」。
これは、「FF」シリーズ開発者の1人でチョコボの生みの親である石井浩一が、昼休みにチョコボールのテーマソングを口ずさみながらチョコボの絵を描いていたことから、この名前がついたそうだ。
チョコボと、チョコボールのマスコットキャラクター「キョロちゃん」は、「クエッ」という鳴き声と架空の鳥という点が共通しており、それが縁で「チョコボール」の発売元の森永製菓とタイアップとして、「チョコボのチョコボール」という商品が発売されたこともある。
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【追加雑学②】ファミコン版「FF」は凄腕プログラマーによって作られていた!
「FF」シリーズでは、プロデューサーの坂口博信・音楽の植松伸夫・キャラクターデザインの天野喜孝などのクリエーターたちが有名だが、ファミコン版「FF」においては凄腕プログラマーも欠かせない存在だったのだ。
その凄腕プログラマーとは、イラン人のナーシャ・ジベリである。イランの王族だったナーシャ・ジベリだが、1978年のイラン革命をキッカケに渡米すると、そこでコンピュータ科学を学び、ゲーム制作会社を設立する。
その後、日本に渡った際に任天堂の「マリオ」シリーズの生みの親・宮本茂などのクリエーターと親交を深め、坂口博信に誘われてスクウェアに入社してファミコン版「FF」のプログラムを担当したのである。
ナーシャ・ジベリの「FF」開発における伝説的なエピソードは数多い。まず、第1作目の「FF」において、「飛空艇に影をつけて浮いているようにみせたい」という、ファミコンの性能では無理ともいえる要望をたった1日で解決してしまう。
しかも、飛空艇の移動速度は通常の4倍であり、この処理はファミコンのCPUのバグを利用して実現していたのだ! 飛空艇の移動速度がどれだけ速いかは、コチラの動画で確認してほしい。
さらに、「ファイナルファンタジーⅢ(FFⅢ)」開発中には、ビザの関係で日本を離れているあいだに発生した重大なバグを、電話で話しただけで的確に修正したことも。このエピソードは、ナーシャ・ジベリがプログラムのソースを完璧に記憶していたことを示すエピソードである。
そして、「FFⅢ」は2000年にリメイク版の開発が発表されたものの、2006年までリメイク版が発売されることはなかった。その理由としては、ナーシャ・ジベリがプログラムした「FFⅢ」がファミコンの性能を極限まで発揮したものであり、リメイクするのに苦労したから…とされている。
このように、伝説的なプログラマーとして知られるナーシャ・ジベリだが、メディアへの露出などはほとんどなく、最近の様子などは知られていない。
またいつか、世界を驚かせる作品を送り出してくれることを、ファンとしては期待したい。
雑学まとめ
今回は「FF」についての雑学を紹介した。「ファイナルファンタジー」が「ファイナル」だった理由はおわかりいただけただろうか?
苦しい経営を救ってくれた「FF」だけに、会社としては「最後の作品」にはできず、続編が作られたのだろう。その後、ゲームハードは進化しても「FF」シリーズは変わらぬ面白さでファンを楽しませているのは、ご存じの通りだ。
これからも続きそうな「FF」シリーズだが、本当の「ファイナル」にならないよう、楽しい作品をリリースしていただきたい。