機動戦士ガンダムは、当時のロボットアニメでは考えられないようなリアル志向のストーリーで制作され人気を得た。
しかし、OP曲はガンダムの内容とはまったく合っていない熱血ロボットアニメのような曲調と歌詞になっている。これはなぜなのか…? 実はその背後には、番組制作に欠かせないスポンサーが関係しているとか…?
というわけで今回は、機動戦士ガンダムのOPはスポンサーを騙すために作られた? という雑学についてご紹介しよう。
【面白い雑学】機動戦士ガンダムのOP「翔べ!ガンダム」が熱血系な理由とは?
【雑学解説】機動戦士ガンダムのOP「翔べ!ガンダム」が作られた背景
機動戦士ガンダムは人間同士の戦争を描いたロボットアニメである。機動戦士ガンダムを作った富野由悠季監督は、もともと勧善懲悪の作品を作ってはいなかった。
それでも異星人と戦うような内容で、人間同士の戦争を描いたことはない。ガンダムがリアルな人間同士の戦争を描いた初めてのロボットアニメなのである。
しかし、OP曲は、作品の内容とは全く合っていない。当時、主流の熱血ロボットアニメのような主題歌になっているのだ。下の動画が、実際のOP曲である。
物語の内容を考えると明らかに違和感を感じないだろうか? 歌詞にある「正義の怒りをぶつけろガンダム」というのは、勧善懲悪なヒーローアニメのようである。怒りや闘志というのも、戦うことに悩む主人公・アムロのイメージには合わない。
アニメのOPが作品に合っていないことは珍しくない。勘違いが重なり、作品に合わないOPになってしまうこともよくあるらしい。
だが、ガンダムの場合は意図的に作品とは離れた歌詞と曲調のOPを作ったことが分かっている。これは物語の内容に合った歌にしてしまうと、スポンサーがつかないと考えたためだという。
表現は良くないがスポンサーを騙して、作品の資金を得るために意図的に普通のロボットアニメのようなOPを作ったのだ。それを知って、聞いてみると複雑な心境である。
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【追加雑学①】ガンダムの合体はスポンサー対策?
当時のロボットアニメは合体や必殺技を使うのが当然であった。しかし、ガンダムをリアルな軍事兵器にしようと考えていた富野由悠季監督が必殺技などを考えるとは想像しにくい。
実際のガンダムは合体や分離する機構が存在しており、劇中でも合体するシーンが描かれた。これは、リアルな兵器として想定されたガンダムには不釣り合いな機能だが、スポンサーに妥協した結果といわれている。
それでもガンダムには合体後の決めポーズや必殺技などはなく、当時としては非常に画期的といわれている。
ちなみに、合体機能があったため、ガンダム合体セットなどのおもちゃも販売されている。ガンダムのアニメは視聴率の低迷で打ち切られたが、合体セットの売り上げは好調だったという。
また、ガンダムは白一色のロボットとして予定されていたが、スポンサーの反対で胴体部分を赤・青・黄色の3色に塗ることにしたというエピソードもある。
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【追加雑学②】漫画版「機動戦士ガンダム」は完全に熱血ロボット作品
機動戦士ガンダムは、リアルな戦争を描いたロボットアニメとして制作することに成功した。しかし、『冒険王』に連載されたガンダムのコミカライズは、テレビアニメとは似ても似つかないものとして伝説になっている。
漫画を描いた岡崎優はガンダムの簡単な資料しか渡されなかったため、ガンダムの内容をほとんど理解せずに漫画を描くことになったという。しかも自宅にテレビがないため、ガンダムの放送を見ることができなかったのである。
そのため、完成したガンダムの漫画は、まるで熱血ロボットもののようなノリになってしまった。ガンダムはどんな攻撃を受けても、ほとんどダメージを受けないほど頑丈で完全にスーパーロボット。
敵のモビルスーツを片手で振り回してしまうなど、パワーも恐ろしい。リアルな兵器としての設定などどこ吹く風である。
それだけではなく空を飛べないはずのモビルスーツが、地球の空を宇宙空間を移動するかのように飛んでしまうのだ。他にも水中用モビルスーツが宇宙に登場するなど、完全にアニメの設定を無視した描写のオンパレードになっている。
登場人物の行動や考え方もとにかく破天荒である。ホワイトベースで、敵のモビルスーツを踏みつぶしてしまうシーンがある。これを見ていた連邦軍の軍人は「ムチャクチャだ」と呆れている。
極めて当たり前の反応なのだが、連邦軍の大将レビルは「いやあれでいいんだ…」と肯定してしまう描写も。先ほどの軍人のセリフは、アニメと漫画の違いに呆れた読者の代弁のようにも聞こえる。
アムロが熱血漢になっている
内向的な主人公だったアムロ・レイも、妙に好戦的で熱血漢な性格に描かれている。ガンダムに乗っていきなりザクを撃破したシーンでは「ざまあみろ!!」と言い放つ。
艦長代理のブライトに営倉に入れられたときは、「ちくしょ! 出せよブライト何のつもりだ!!」である。アニメでは戦うことに悩んだり、いじけたりするアムロとは完全に別人のようだ。
そして、このアムロの性格を象徴する最も有名なエピソードとして、テレビを殴って破壊するシーンが存在する。
敵の演説を聞いて怒ったアムロは、「負けんぞ! 絶対に貴様らなどに負けるものか!!」と言い放って、テレビを破壊してしまうのだ。しかも、素手で殴ってモニターを砕いている。
いくら、頭にきても船内のテレビを破壊するのは明らかに問題だろう。しかし、それを見ていたブライトは何も言わず、むしろ嬉しそうな表情に見えるのが、この作品の雰囲気を表しているように感じる。
アムロがテレビを破壊するこの場面は漫画版の破天荒さを象徴するエピソードとして紹介されることが多い。しかし実は、とんでもない裏話が存在する。
アニメ版アムロもテレビを破壊する予定だった
テレビを殴って破壊するシーンは、テレビアニメのシナリオに書かれていたことが分かっている。何とテレビアニメのアムロも本来なら、怒ってテレビを破壊する予定だったのである。
漫画版の破天荒なエピソードとして紹介されることが多いこのシーンは、実はアニメのシナリオを再現しようとしただけだった。
アニメ版では変更になったとはいえ、もとのシナリオではアムロがパイロットスーツを着た状態でテレビを殴る予定だった。やはり、素手の拳でテレビを破壊する漫画版のアムロはアニメよりすごい。
完全に熱血ロボットアニメのようなノリの漫画版がネタとして紹介されることは多いが、これはガンダムだからだろう。当時は、このくらいの漫画のノリが当たり前だったのだ。
アニメ版とあまりに落差があることから、この漫画版はカルト的な人気になった。現在でも、伝説のトンデモガンダムとして、復刻されたコミックは一部のファンから絶大な支持を得ている。
「機動戦士ガンダムのOP」の雑学まとめ
機動戦士ガンダムのOPがアニメの内容に合っていないのは、スポンサーを騙すためだったという雑学についてご紹介した。現在ではシリアスなアニメを制作するのは当たり前になっているが、当時としては大変だったようだ。
富野監督はこれ以前にも、無敵超人ザンボット3で主要キャラが次々と死ぬ凄惨な最終回を描いている。最終回を見たスポンサーや広告代理店が真っ青になったと本人が言っているが、さすがにスポンサーを無視して作品は作れない。
スポンサーに配慮して変更した点は、一般に知られていないだけで他にもかなりありそうである。破天荒な漫画版ガンダムも、当時の歪みが生みだした作品といえるのかもしれない。