海上交通を守るために、日夜灯り続けている「灯台」。夜の海を航海する船員たちにとってはかかせない命綱のようなものだ。
ところで、船に乗る文化は太古から存在しているが、この灯台という代物は、いつごろから活躍しているのだろうか…。またどのようにして必要とされていったのか、気になるところである。
そこで今回は、日本でもっとも古い灯台の歴史に迫った。
【歴史雑学】日本一古い灯台は住吉大社の「住吉高灯篭」
【雑学解説】もともとは神社の常夜燈だった灯台「住吉高灯篭」
ズバリ、日本で最古とされる灯台は、大阪の住吉大社の境内にあった。それが日本初の灯台とされる、高さ16メートルほどの「住吉高燈籠(すみよしたかとうろう)」である。
ここでまず「おやっ?」と思わされる部分がある。そう…灯台であるはずなのに、灯篭と名が付いているのだ。どういうことかというと、日本最古の灯台は、実は神社に灯される「灯篭」が利用されたものだったのである。
現在ではその痕跡はわからないが、かつて住吉大社の付近には海が迫っていた。
灯篭もそもそもは、鎌倉時代に住吉大社を照らす常夜燈として作られたものだったが、江戸時代に入ると海上交通が盛んになり、大阪湾を出入りする船の目印が必要になる。そのため海上航路の標識としての役割を担うようになったのだ。
戦後、灯篭は台風によって損傷して解体されたが、1974年に従来の場所から約200メートルほど離れた住吉公園の西側に、鉄筋コンクリート製のレプリカとして再現された。この灯篭は現在もこの地に建っている。
住吉大社に参拝に行かれた際は、足を伸ばしてご覧になってはどうだろうか。SNS映えするかどうかは分からないが、写真をアップすれば一部のマニアの方にグッドを押してもらえるかもしれないぞ!
以下に住吉大社の動画を紹介しておこう。灯篭は登場しないが、少しでもその雰囲気を感じてもらえれば幸いだ。
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【追加雑学①】現存する世界最古の灯台とは?
世界最古の灯台は、スペイン・ガリシア州にある「ヘラクレスの塔」である。またの名を「エルクレスの塔」とも呼ぶ。なんだか強そうな名前だ…。
この塔の高さは、住吉高灯篭の約3.5倍にもなる55メートル。スペイン国内においては2番目の高さを誇るという。以下の動画にて、ヘラクレスの塔が紹介されているぞ。石造りの建物が長い歴史を物語っている…。
塔が建造された時代は正確には分かってないが、少なくとも2世紀ごろには灯台の存在は知られていたという。おいおい、2世紀って、日本では邪馬台国の時代だぞ! スゴすぎる!
この塔を建造した人物は、現在のポルトガル・コインブラ出身のガイウス・セウィウス・ルプスという建築家。彼はローマ神話の神に捧げる目的で灯台を建築したという。
なおこの灯台は18世紀に一度改築工事がされ、現在も問題なく利用されている。恐るべき耐久性だ! そうした歴史的な背景もあってか、2009年にはユネスコの世界遺産に登録されている。
【追加雑学②】世界の七不思議の1つに数えられる「アレクサンドリアの灯台」
世界の七不思議のひとつに、古代エジプトにあった幻の灯台が入っていることをご存知だろうか。
世界の七不思議とは、紀元前2世紀にフィロンという人物が、古代の地中海地方に存在した7つの巨大建造物を示して使った言葉である。
そんな七不思議のひとつになったのが「アレクサンドリアの大灯台」だ。またの名を「ファロス島の大灯台」、「アレクサンドリアのファロス」とも呼ばれている。
この大灯台の建築は紀元前4世紀ごろ、この地を統治したプトレマイオス1世によって計画された。当時は船が沿岸航行する際や入港する際に目印がなかったためだ。完成したのは、プトレマイオスが世を去った次の代のことである。
灯台の高さは約134メートル。いにしえの時代に100メートル以上の高さを誇る灯台を建造してしまうことに驚いてしまう…。世界の七不思議にも選ばれるわけだ。
しかし…これもまたややこしい話だが、実はフィロンは世界の七不思議に「アレクサンドリアの大灯台」を選んでいない。後世の誤解によって、なぜかこの大灯台が選ばれたという経緯があるのだ。
大灯台は、14世紀に発生した地震によって全壊してしまったが、世界の七不思議に数えられる建物のなかでは、ギザの大ピラミッドに次いで現存した建物として知られている。ああ、ひと目見たかった!
「日本一古い灯台」の雑学まとめ
以上、日本最古の灯台とされる「住吉高灯篭」と、世界最古の灯台、および世界の七不思議のひとつ、「アレクサンドリアの大灯台」のトリビアをご紹介してきた。
陸地に住んでいる者からすると、灯台の有難みはなかなか感じにくいが、夜の海上を航海する船員たちにとっては、やはりなくてはならないものだ。太古からの歴史を誇るそれらが、多くの船員を支えてきたことを物語っている。