4年に1度開かれるスポーツの祭典・「オリンピック」。国の代表を背負い、真剣勝負を繰り広げる選手たちの様子は、観る者に多くの感動と勇気を与えてくれる。
このオリンピックにおいて、私たちの暮らす日本から生まれた競技ももちろん存在する。世界大会の競技が自国で生まれたというのは非常に誇らしいことだが、どの競技が日本生まれなのか、みなさんはちゃんと把握しているだろうか。
今回の雑学では、そんな日本生まれのオリンピック競技を紹介しよう。
【オリンピック雑学】日本生まれのオリンピック競技は?
【雑学解説】日本生まれのオリンピック競技は「柔道」と「ケイリン」
オリンピックにおいて、日本生まれの競技および種目として実施されているのは2つ。「柔道」と自動車競技の種目のひとつ「ケイリン」である。
以下に、オリンピックで採用されるまでのそれぞれの経緯を説明していこう。
柔道は1964年の東京オリンピックから正式競技に
柔道がオリンピックの正式競技となったのは、1964年の東京オリンピックからである。そもそも「柔道」は、中世における武士の合戦時の武芸が、江戸時代に入って「柔術」として確立されたことにルーツをもっている。
この柔術に手を加えて、人間の修養を目的として柔道を広めた人物が嘉納治五郎(かのうじごろう)である。彼は1882年に講道館(日本伝講道館柔道)を設立し、以後、柔道の普及に努めた。
そんな柔道がオリンピックに初めて登場したのは、1932年のロサンゼルスオリンピックである。ただこの大会において柔道は正式競技としてではなく、「公開競技」として実施された。
公開競技とは、オリンピックの主催国に根づいている競技や、多くの国に広まっている競技を実験的にオリンピックで実施することだ。公開競技では、メダルは授与されるものの、オリンピックの公式記録として認められることはない。
そして記念すべき大会がやってくる。1964年の東京オリンピックである。この大会において、男子柔道が正式種目に採用されたのだ。ちなみに、この大会で日本選手は4つの階級すべてで、3つの金メダルと1つの銀メダルを獲得する大活躍をみせた。
以下の動画は、東京オリンピックの男子無差別級決勝の模様である。お互い道着をはだけさせながらの真剣勝負に、対戦後は笑顔で握手を交わす…これぞ武道の精神といったところか。
男子柔道はその後、4年後のメキシコ大会では実施が見送られたものの、1972年のミュンヘン大会で復活してからは、現在まで正式種目として行われ続けている。
また柔道の女子種目がオリンピックで正式に採用されたのは、1992年のバルセロナオリンピックからである。比較的最近の話なので、覚えている方も多いのではないだろうか。田村亮子(たむらりょうこ)こと、柔ちゃんが、銀メダルを獲得した大会だ。
女子柔道の歴史は、意外にも始まったばかりなのである。
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「ケイリン」は、2000年のシドニーオリンピックから実施された
「競輪」は、2000年のシドニーオリンピックから自転車競技の種目のひとつ「ケイリン」として実施されている。競輪はもともと、戦後まもなく福岡県・小倉競輪場で実施された公営競技のひとつだった。
この競輪が世界に認知されるようになったのは、ある日本人選手の影響からだ。おもに1970年代から80年代にかけて、競輪選手として活躍した中野浩一である。
中野は、世界自転車選手権の男子スプリントで10連覇を達成した、日本のみならず世界に名を馳せた競輪界のレジェンドだ。以下の動画では1982年に行われた世界選手権の様子を見ることができる。2:00~のゴール目前でのデッドヒートは見応え抜群だ!
この中野の活躍を「日本自転車競技連盟」は見逃さなかった。連盟は「国際自転車競技連合」に掛け合い、国際大会での競輪の開催を促したのである。こうした経緯があって、1980年、世界自転車選手権において「ケイリン」が開催されることになったのだ。
以後、世界大会で実施されるようになったケイリンは、2000年のシドニーオリンピックでも、自転車競技のひとつとして実施されるに至ったのである。
ちなみに、日本の競輪は「ライン」と呼ばれるチームでのかけ引きが行われるが、国際大会のケイリンは、完全に個人同士のぶつかりあい…ガチンコ勝負だ。
また、日本ではコンクリート製のバンク(コース)を疾走するが、国際大会では、「板張り」のバンクを走るという、コースの材質の違いもある。
なお2020年の東京でオリンピックでは、ケイリンを含む自転車トラック競技は、静岡県伊豆市の会場で開催されるという。日本人選手たちの活躍が今から楽しみである。
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【追加雑学】2020年の東京オリンピックでは、日本生まれの「空手」が実施される
紹介してきたように、日本生まれのオリンピック競技および種目は「柔道」と「ケイリン」だ。これに加えて、2020年の東京オリンピックでは、日本生まれの競技がもうひとつ実施されることになった。「空手」だ。
空手は、沖縄の琉球王朝時代を発祥とする日本生まれの武術で、第二次世界大戦後に世界に広まった競技だ。空手競技は、「形(かた)」と「組手」の2つの種目によって実施される。
「形」は、仮の敵を見立てた中で、攻撃と防御のそれぞれの技を組み合わせ、披露するパフォーマンスのことである。これを「演武」という。
大会で演武を行う際には、世界空手連盟が認定している100種類以上の技の中から、選手が自ら技を選択して披露する決まりがある。見どころは、動きのキレや迫力、技の美しさ、その流れなどにあり、採点のポイントともなる。
また「組手」は、2人の選手が1対1で試合をおこない、「突き」・「蹴り」・「打ち」といった3種類を相手選手に打ち込み、ポイントの合計が8点になった選手、あるいは3分の試合時間内に、相手選手のポイントを上回った選手が勝ちとなる。
2020年の東京オリンピックでは、「空手」は男女各3階級、計6階級で競技が実施される予定だ。
なお東京大会以降は、空手の実施は正式に決定していないようだが、我々日本人としては、ぜひオリンピックの正式競技として定着してほしいものである。
雑学まとめ
今回の雑学では日本生まれのオリンピック競技についてご紹介した。柔道が日本生まれのオリンピック競技だったことは、ご存知の方も多かっただろう。しかし、自転車競技の種目のひとつに日本生まれの「ケイリン」があることは、意外に思った方もいるのではないだろうか。
日本生まれのスポーツが、世界中の人々に愛好されるのは、当時の関係者が競技の普及に努めた努力の賜物である。
また2020年の東京オリンピックでは、さらに「空手」も加わることになった。こうして日本の競技が正式競技になっていく様子は、小柄な日本人でも十分に世界で戦えることを教えてくれているようでもある。
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