『ゲゲゲの鬼太郎』は、妖怪研究家としても知られる漫画家・水木しげるの代表作である。1968年にアニメ化されて以来、何度もテレビアニメがシリーズ化されており、現在まで続く異例のロングヒット作品となっている。
そんなゲゲゲの鬼太郎だが、実は主人公の鬼太郎は、水木氏が創作したキャラクターではないことをご存知だろうか…。一番代表的なキャラクターがオリジナルではないとは、いったいどういうことだ?
【サブカル雑学】鬼太郎は水木しげるが考えたキャラではない
【雑学解説】鬼太郎の原作者は水木しげるではない
水木しげるは日本に妖怪漫画のジャンルを確立した漫画家で、ゲゲゲの鬼太郎はその代表作である。
ゲゲゲの鬼太郎というタイトルは後に考えられたものであるが、鬼太郎自体は『墓場鬼太郎』というタイトルで紙芝居時代から水木氏の作品として知られている。
つまり鬼太郎は、水木氏が漫画家になる前から手掛けていた作品なのである。そんなキャラクターが水木氏の考えたものではないと聞いたら、驚く人も多いだろう。
実は、水木氏が墓場鬼太郎の紙芝居を作る以前に、『ハカバキタロウ』というタイトルの紙芝居が存在していたのだ。
戦前の紙芝居といえば、後にアニメや特撮映画にもなった『黄金バット』が有名だが、ハカバキタロウは当時、それすらもしのぐ人気だったという。
この紙芝居は原作伊藤正美・作画辰巳東洋となっている。実は水木氏の墓場鬼太郎は、原作者に許可を取って二次的に作られたものだったのだ。
鬼太郎は民話から生まれた
伊藤正美の考えた鬼太郎は、なんでも民話の子育て幽霊を脚色したものだったという。子育て幽霊はもともとは中国から伝わったとされており、国内にもさまざまなパターンの民話が残されている。
その中で鬼太郎の元になった民話は、女性が毎晩アメを買いに来るという話である。この話でアメを売っていた主人は、代金の中に墓へ供える植物が混じっているのに気づき、不審に思って女性の後をつけていった。
しかし、女性は墓地の辺りで姿を消してしまい、昼になって、もう一度同じ場所に行ってみると、墓の中から赤ん坊の泣き声が聞こえてきたのだ。主人が墓を掘り返してみると、なんと女性の遺体と共に埋まっていた赤ん坊がアメをしゃぶっていたのである。
女性は自分と一緒に埋められてしまった赤ん坊を生かすために、幽霊になってアメを買いに来ていたのだ。その後女性がアメを買いに来ることはなくなり、赤ん坊は成長して僧侶になったという。
以上が墓場鬼太郎の元になった話だ。京都にある「みなとや幽霊子育飴本舗」という、450年以上の歴史をもつアメ屋がこの民話の舞台とされている。以下はお店の様子を紹介した動画だ。
お店では、その幽霊に売ったものと同じアメを現在も販売しており、鬼太郎の由来に関係すると紹介されている。
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【追加雑学】鬼太郎は元々性格が悪かった
ゲゲゲの鬼太郎の主人公鬼太郎は、悪い妖怪と戦う正義のヒーローというイメージが一般的だろう。テレビアニメではシリーズごとにかなり性格が異なっているが、それでも人間を助けることが多い。
しかし、初期の鬼太郎はそんなイメージとは全く違う性格で描かれているのである。
墓場鬼太郎の頃の鬼太郎は金に汚い性格で、ひどい目にあっている人間を見ても助けようとしないなど、現在とはかけ離れた性格だ。
墓場鬼太郎は平成20年にアニメ化されたことがあるが、鬼太郎の顔や話の雰囲気も現在のものとはまた違っている。以下の動画はこれまでのゲゲゲの鬼太郎シリーズの開設をしたものだ。
鬼太郎は子育て幽霊のように墓穴で生まれた設定だが、一時は人間の青年水木に育てられていた。この青年は作者の水木氏から名前が取られたキャラクターだが、作中でかなり扱いが悪いことで知られている。
漫画版では、鬼太郎の育ての親なのになんと途中から存在がなかったことにされてしまう。さらに、アニメ版では鬼太郎に金づる扱いされた挙げ句、見捨てられて死んでしまう衝撃の展開が描かれた。
アニメ第6話で水木は水神が起こした高波にさらわれてしまうが、鬼太郎は助けようとしない。さらに水神の水は体を溶かしてしまうため、水木は身体が溶けて死んでしまうのだ。
テレビ放送では水木が死んだことは曖昧に描かれていたが、後に発売されたブルーレイでははっきりと死ぬ様子が描写されている。
この展開のせいで、アニメ版は特に鬼太郎の性格が悪い印象を覚えるが、基本的に原作でもその性格は変わらない。
正義感の強い鬼太郎は、ゲゲゲの鬼太郎になってからのものである。ちなみにゲゲゲの鬼太郎になってからも、初期の頃は性格に問題があった。しかし、人間を守るために妖怪と戦う展開が多くなった影響か、徐々に正義感の強い性格になっていったのだ。
雑学まとめ
ゲゲゲの鬼太郎は水木しげるのオリジナルキャラクターではないというトリビアをご紹介した。民話を元ネタにスタートした墓場鬼太郎は、話が長く続く中で内容や主人公の性格が変化していき、現在の姿になったのだ。
子育て幽霊では子供は立派な僧になったといわれているが、墓場鬼太郎の鬼太郎は立派とは程遠い性格だった。しかし、ゲゲゲの鬼太郎になって性格が変わったことを考えると、元の話に近い展開だともいえるだろう。