あまり良いこととは言えないが、アーティストや俳優などの有名人が違法薬物で逮捕された…というニュースの注目度は高い。「あの作品はラリった状態で作られたのかな…」などとガッカリした経験のある人も多いだろう。
そう…違法薬物を使うと「ラリる」。
…ラリるってなんだ? おかしな状態になってしまうことだというのはなんとなくわかるが、どうしてそれをラリると言うのか…。
また違法薬物のことを「シャブ」なんて言ったりもするが、それにしたって考えてみればよくわからない。薬物関係はなにかと隠語が多いのだ。
今回はそんな「ラリる」「シャブ」の意味と語源について迫ってみたぞ!
【生活雑学】「ラリる」「シャブ」の意味と語源とは?
【雑学解説】「ラリる」の意味と語源は「らりるれろ」説が有力
「ラリる」という言葉が世間に広まったのは1960年代のこと。当時、若者のあいだでは眠剤(睡眠薬)がブームとなっていた。
睡眠薬というとそれほど危険なイメージはないが、それは用法をきちんと守った場合のみだ。
現在は入手に規制があり、一般人が睡眠薬を許可なく使うことはできない。しかし当時は「ハイミナール」や「ノルモレスト」といった睡眠薬が普通に出回っており、服用して意識が朦朧とする状態になるのを快感とする若者が続出したのである。
そしてその状態になると、なにを言っても「らりるれろ」で話しているような発音になってしまうという。つまり、ろれつが回らなくなるということだ。
このことから、薬物で意識が朦朧としている状態を「ラリる」というようになったというのが、もっとも有力とされる説である。
「らりるれろ」しか言えないは言い過ぎかもしれないが、たとえば「ください」が「くらさい」になるような感じ。赤ちゃん言葉みたいな。
いかにもそれらしい説に聞こえるが、このほかにも「これが語源では?」といわれている説があるぞ。
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「乱離骨灰(らりこっぱい)」の略からとする説も…
「めちゃめちゃになる・ばらばらに離れる」という意味の「乱離骨灰(らりこっぱい)」という言葉を略し、「ラリる」になったという説もある。
え……聞いたことないぞそんな言葉。パソコンで変換しても出てこないし。
しかしこの乱離骨灰、司馬遼太郎や芥川龍之介の小説のなかでも使われている言葉。なんでも江戸時代から伝わるものだとかなんとか…。
しかし、筆者としてはそんな難しい言葉が薬でぶっ飛んじゃった人に向けて使われるとは思えない…。
「らり」という言葉を動詞化したもの?
他にも、「馬鹿者」を意味する「らり」という言葉が動詞になって、「ラリる」になったとする説もある。
しかし、この「らり」は、先ほど紹介した「乱離骨灰」が変化したもの…ともいわれているので、「乱離骨灰→らり→ラリる」という感じで使われるようになっていったのかもしれない。
ともあれやはり、『なにを言っても「らりるれろ」になるという説』が、状態を表す意味では一番しっくりくるように感じるな。
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【追加雑学①】覚せい剤=「シャブ」の語源は?
もはや「ラリる」とはセットの存在である覚せい剤。そしてこの覚せい剤が「シャブ」と呼ばれている語源も気になるところだ。
このシャブに関してもはっきり「これ!」とは言い切れず、その諸説はラリるより多い。ざっとこのような感じだ。
「シャブ」の語源
- 覚せい剤の容器を振ると「シャブシャブ」と音がする
- 覚せい剤を結晶から削って使うことがあったため、英語の「Shave(シェイブ)」から転化した
- 覚せい剤は打つと冷たく感じるため「寒い→しゃぶい→シャブ」となった
- 覚せい剤は一度ハマるとやめられず「骨までしゃぶられる」から
以下よりそれぞれ解説していこう。
説①覚せい剤が入っている容器から
昭和の日本では覚せい剤は合法だった時期があった。危険性が認識され始めたのは意外と最近の話なのである。
戦前、1940年代に日本で普通に市販されていた「ヒロポン」という覚せい剤は、液体の状態で売られており、容器を振ると「シャブシャブ」と音がしたという。このことから「シャブ」という俗称が付けられたのではといわれているのだ。
しかしこの説には疑問点もある。
「シャブ」という言葉ができたのは1970年ごろのことで、ヒロポンの時代より20年以上もあとの話なのだ。まあ、その時代もおおやけに売られていないというだけで、液体であれば振ると音がすることは変わらないだろうが…。
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説②削るを意味する「Shave(シェイブ)」から
覚せい剤は粉や液体だけではなく、大きな結晶の塊で出回ることもあるという。あまりイメージしにくいが…これを削って粉にして使う場合もあるのだ。
そこで、英語で「削る」を意味する「Shave(シェイブ)」から「シャブ」という言葉ができたとする説もある。
なるほど、そういう利用法があったならたしかに印象には残るし、乱用者のあいだでこの言葉が流行ることもありそうだ。
しかしそれにしても、シェイブをシャブって…なまりすぎだろ…。いや…昭和の日本においてシェイブというのも逆にスタイリッシュすぎるか…。
説③「寒い→しゃぶい→シャブ」となった
覚せい剤を静脈に打つと冷たい感覚がするらしい。虫刺されの薬を塗ったときみたいな感じか?
この感覚から「寒い」という意味で「しゃぶい→シャブ」となったとする説もある。「しゃぶい」といわれると、極寒に震えてうまく喋れていないような感じがするな。
ん? うまく喋れないって、まさにラリってる状態じゃないか。ラリった人たちが「あ~…しゃぶい~」とか言ってたのかもしれない。でも、それって「寒いというより冷たい」だよな…。
説④「骨までしゃぶる」という意味から
覚せい剤の入手ルートといえば、やっぱり反社会勢力だ。そして一度ハマると抜けだすのが困難なため、金に糸目もつけなくなる。手を出してしまえばそういった団体にすべてを奪われることになってしまうのだ。
つまり反社会勢力に「骨までしゃぶられる」わけである。また単に身体も精神もボロボロになってしまうという意味では、この言葉は覚せい剤の特徴そのまんまだともいえる。
なるほど、「骨までしゃぶられる」から「シャブ」というのは、覚せい剤の怖さを的確に表現した言い回しだ。この説は最高裁判所事務総局刑事局が監修している『薬物事件執務提要』にも記載されており、かなり有力である。
うん、ほかの説と比べてみても、この説が一番説得力があるんじゃないか?
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【追加雑学②】「シャブ」以外の覚せい剤の隠語
覚せい剤の呼び方は「シャブ」が有名だが、それ以外にもいくつか隠語がある。
いくつか紹介しておこう。
アイス
覚せい剤を使うと、冷たく感じることから「アイス」という隠語がある。
「アイス買ってきて~」とか普通に言うよな…。
スピード
覚せい剤の効き目が出るのがとても早いことから、この隠語がついているらしい。なにごとも早いに越したことはないが、覚せい剤だけは別である。
頭文字を取って「S」と呼ばれることもあるが、それならシャブだって「S」だぞ。
金魚
売人などが覚せい剤を保存する際に、弁当についている金魚型の醤油入れに入れていたことから、この呼び方をする場合も。
可愛い呼び方でも中身は恐ろしい。
「ラリる」と「シャブ」の雑学まとめ
今回は意外と知られていない「ラリる」「シャブ」の雑学を紹介した。普通に生活していて使う言葉ではないが、語源を辿るといかに薬物が恐ろしいかが伝わってくる…。
違法薬物が存在する限り、いつどんな誘惑があるかはわからない。その怖さを知っておくこともまた大切なのである。
みなさんには「シャブ」を使って「ラリる」ことのない普通の生活を送っていただきたい。
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