昆虫にはチョウチョにバッタやカブトムシなど身近な虫が多く、子供のころに虫採り遊びをしたことがある人もいるだろう。
ところで多くの昆虫たちのなかでも、自らより大きな相手でも強気に威嚇する肉食昆虫「カマキリ」もわりと身近な昆虫ではないだろうか。
街なかでも公園のように緑がある場所では、たまに見かけることもあり、まったくカマキリの存在をしらないという人はいないのではと思う。
ちなみに、このカマキリという名の由来だが、前足が鎌のようになっている大きな特徴から、カマキリと呼ばれている説が有力だ(鎌を持ったキリギリスの一種としてカマキリになったという別説もある)。
このように名は体を表す昆虫なのだが、実はほかにも「別名」があり、その名は彼らの独特のしぐさから付けられたすごくユニークなものとなっている。
というわけで、今回はこのカマキリに付けられた「別名」について調べてみた。昆虫トリビアとして気軽に読み進めてほしい。
【動物雑学】カマキリの別名「おがみ虫」の由来とは?
【雑学解説】カマキリの狩りのポーズが祈っているように見えるから
カマキリは獰猛な肉食昆虫であり、ほかの生き物を捕食して生きている昆虫の一種だ。その捕食対象は、基本的に自らより小さい生き物が中心となるが、チョウチョやバッタなどのほか、小型のカエルなども食べてしまうことがあるのだとか(オエッ…)。
さて、一見無差別に他の生物たちを食べてしまうカマキリ氏の特徴として、狩りの際に前足(カマ)を広げて相手を威嚇するポーズをすることがある。
そして、その動作の一部では、前足を折りたたんで体を揺らすとてもユニークな動きもすることがあるのだ。
その様子が古くからの日本では、まるで祈りを捧げているように見えるというところから、祈り虫→おがみ虫という別名がついたといわれている。
まず、実際にその様子が映されたカマキリの動画を紹介するのでみてほしい。
これがカマキリの威嚇、お祈りポーズだ(虫が苦手な人は閲覧注意)
しょっぱなからカマキリがしているポーズがお祈りポーズとなっている(ときたま手を上にあげたり、カマで実際に攻撃したりしている)。
たしかに、前足をたたんで体を左右に揺らしているところは、なんらかの祈りを捧げているようだ。これがおがみ虫という別名がつくことになったアクションなのだろう。
ただ感想としては、お祈りをしているというのもそうだが、格闘家が防御(ガード)をしているようにも見える。そもそも威嚇なのだし反撃に備え、ガードのような臨戦態勢をとるのは、あたりまえのことかもしれない。
いずれにしろ、動画内のあの様子が、カマキリが祈っている風に見えていたことから「おがみ虫」という別名の由来へと繋がったということだ。
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【追加雑学①】カマキリのほかの別名は?
カマキリはさらに複数の名をもっている。たとえば、「斧虫(おのむし)」とも呼ばれ、こちらはあの鎌状の前足を斧に見立てたからついたのだろうと推測する。
なお、これに関連性があるかは不明だが、中国・前漢の書物のなかには「蟷螂の斧(とうろうのおの)」という故事が出てくる。
蟷螂の斧とはことわざとしての意味があり、力のない者が自分の実力もかえりみないで強い者に立ち向かうことを指す言葉なのだ。これは無謀ともいえるし、勇敢ともとれることわざである。
とりあえず、書物のくわしい内容などはここではスルーさせてもらうが、故事内に登場する人物がカマキリの前足を斧に見立てたことがわかるようになっている。
これはもしかするとだが、中国ではカマキリの両手を鎌ではなく、斧と表現するのが当たり前なのかもしれない。
しかし、結局のところカマキリの前足を鎌とみるか斧と見るかは、これも人によりちがうのだろう(筆者はどちらかというと鎌に見えるが)。
ヘンテコな呼び名も
聞きなれない奇妙な名ではあるが、カマキリは「いぼむしり」また「いぼじり」とも呼ばれる。ちなみにいぼむしりとはカマキリの古名なのだとか(この名前の音が変化したものが「いぼじり」)。
このいぼむしりの由来はカマキリに「イボ」を咬ませる(またはカマキリをすり潰してイボに塗ると!)治るという話からその名で呼ばれたという話だ。
もちろん真偽は定かではないが、実際に試した人間がいたからこそ、そういう呼び名が付いたのだろうし、本当に一定の効果があるならば、それはそれで(医学的にも)すごいことなのではないか?
ただし、筆者はもし本当に効果があったとしても、イボの治療にはちゃんとした薬を使用したいと思う。カマキリにわざわざ咬まれる、もしくはすり潰して塗るなんて気色の悪い選択は避けたいからだ。
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カマキリは英名では「予言者」?
英名でカマキリは「Mantis(マンティス)」と表記される。これはギリシャ語からの由来で「予言者」を意味しているそうだ。
さらに「Playing Mantis」とも呼ばれ、こちらのPlayingにも「祈る」という意味がある(Playingには捕食するという意味もあり、カマキリの習性と混同されているという説もある)。
ところで、前述した予言者という言葉のイメージや、この「祈る」という言葉に、日本でのおがみ虫の由来に近い感じがする。
これは国を問わずに、古くからカマキリが人々に観察されるなかで、それぞれ威嚇の際の「あの」動きを祈っているようにとらえていたのではないか。
ここまで推察が進むと、カマキリはマジで祈っているんじゃないかとさえ思えてくるだろう。
【追加雑学②】そもそもカマキリってどんな生き物?
少し説明くさくなるが、カマキリとは昆虫網・カマキリ目の昆虫の総称で肉食性の虫を指す。あるいは※網翅目(もうしもく)・カマキリ亜目だ。
※意外だが害虫のゴキブリ・シロアリもこの網翅目に属するといわれている。
カマキリの種類はかなり多いらしく、1800~4000(数字にやたら幅があるのは、学者のあいだでもカマキリへの考え方がちがうから)ほどの種類がいるとされていて、特に熱帯地方においてその数が多いといわれている。
ちなみに、カマキリには一応ハネが付いていて、ごく短距離なら飛ぶことが出来るのだ。しかし、カマキリのハネは威嚇のときに扇のように広げて相手に見せるのが主な役割とされていて、飛行目的でついているわけではないのである。
なお、カマキリ最大の特徴としては前述したとおり、前足が鎌の形になっているところだ。とてつもない速さで獲物に襲いかかり、この鎌状の前足で押さえつけて、大あごで捕食する生粋のハンターがカマキリという昆虫なのだ。
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【追加雑学③】カマキリは漢字でどう書く?
なお、漢字では鎌切とそのまま表記されるほか「蟷螂(かまきり)」と書く。どちらかというと後者の方が、カマキリの漢字としてよく使われるようである。
しかしとっても難しい字なので、ここでは無理して漢字を覚える必要はないぞ(こういう風にいっておくと、意外に頭に残るものではあるが)。
なお、この漢字は音読みで「とうろう」とも読むことがある。少し余談になるが、中国拳法のスタイルで「蟷螂拳(とうろうけん)」というものがある。
古来より中国では、動物の動きを拳法に取り入れることがあり、虎や蛇などの動きを体得して武術そのものにするという。
たとえば、アクションスター・ジャッキーチェン映画の過去作には「蛇拳」というタイトルのものがあり、劇中では蛇の動きをマネして敵と戦うシーンがある。
同じように、動物としてカマキリの動きを取り入れた蟷螂拳があるということだ。獰猛で素早いハンターであるカマキリの動きは、武術の世界でも参考になるところがあったのかもしれない。
【追加雑学④】ハナカマキリという花に擬態するカマキリとは?
カマキリの中には一風変わった「ハナカマキリ」という種類がいるが、その名のとおり花に擬態する特徴をもつ。
カマキリの中でも、コヤツがかなりの変わり種でぜひ紹介したいと思い、実際にハナカマキリを撮影した動画も見つけたのでみてほしい。
動画内ではほぼ動いていないが、そのせいでフツーに花の一部と化している(よく見れば目がついているのがわかる)。なんならこうしてみる限り、全昆虫のなかでも美しい虫の種類に入ると思うがいかがだろう。
しかし前述したとおり、この容姿は擬態が目的ということなので、やっていることは軍の特殊部隊さながらである。
雑学まとめ
今回の雑学はいかがだっただろうか。名が「カマキリ」だけにとどまらなかったことは、昔から人間と接点のあった生き物だからこそ。カマキリ氏もご多分に漏れずその仲間だったわけだ。
もし、みなさんがいつかカマキリを実際に見つけたら、少し指先で優しくつついてみるとよいかもしれない(虫を触れない人には難しいだろうけど)。
こちらへの威嚇の際に、記事内のお祈りポーズが見られたなら、ああこの行動のことだと、自然の生き物観察がリアルに体感出来るわけだ。ただし、あまりにしつこくちょっかいを出すのは可哀そうなのでやめてあげよう。
なぜならカマキリに反撃される可能性もあるし、鎌状の前足もそうだが、アゴで咬まれても結構痛いらしい。もっとも、ほかの小動物がそうであるように、カマキリにとって我々人間は威嚇しようが逆立ちしようが、どうあがいても勝ち目がない生き物だ。
それでも、自分より何十倍も大きな相手に、必死に威嚇してくるカマキリは勇ましく、そして愛嬌も少し感じられる。
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