スポーツをしている人なら誰もが憧れるオリンピック。その華やかな舞台で、命を落とした選手がいたことをご存知だろうか。
オリンピック第5回大会であるストックホルムオリンピックのマラソン競技で、死者が出てしまったのである。日本からもはじめて2人の選手が出場した記念すべき大会なのだが、オリンピックの歴史の中でも忘れられない大会になってしまったのだ。
なぜ死者が出てしまったのだろうか。今回は、オリンピック初の死者を出した、ストックホルムオリンピックのマラソン競技にまつわる雑学を紹介しよう。
【オリンピック雑学】五輪第5回大会マラソンで、オリンピック初の死者が出た
【雑学解説】第5回ストックホルムオリンピックで、ポルトガルの選手が競技中に倒れた
第5回ストックホルムオリンピックは、日本の選手がはじめて参加したオリンピックだった。この大会のマラソン競技に、ポルトガルの代表としてはじめて出場したフランシスコ・ラザロという選手がいた。
彼は、ポルトガル国内のマラソン大会で3度の優勝をし、ストックホルムオリンピックの開会式では旗手もつとめたというから、実力も申し分なく、国民の期待も背負ってオリンピックに出場した選手に違いない。
しかし、30キロを過ぎ、ゴールまであと8キロという地点で倒れ、意識を失ってしまう。
すぐに医者に知らされたのだが、病院に運ばれたのは倒れてから1時間半後…。いまの時代ならもっと早くに治療できただろうに…と思うと悔やまれる。
夜通し治療を受けたのだが、42度の高熱が下がらず、意識不明のまま翌朝6時に亡くなってしまったのだ…。こうして、フランシスコ・ラザロは、オリンピック初の死者となってしまったのである。
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【追加雑学①】フランシスコ・ラザロの死因はなんだったのか?
この日は、記録的な暑さだったそうだ。ラザロは極度の脱水症状に陥っていたのではないかといわれている。
あとで分かったそうだが、ラザロは日よけの帽子もかぶっておらず、汗をかきすぎないようにするためのワックスを体中に塗っていたのだ。
このワックスが原因で、体の自然な汗まで出なくなり、体内の塩分バランスを保てなくなったのではないかといわれている。
ラザロは経験も豊富な選手だったはずだ。ワックスを体に塗ることもはじめてではなかったのかもしれない。しかし、この日の異常な暑さは誰にも予想できず、良かれと思ってしたことで、命を落としてしまったのだ…。
いまは選手の異変にすぐ気づくことができるが、当時はマラソンに対する知識も少なかっただろうし、すぐに対処することもできなかったのだろうが…。いまなら…と思うと、残念で悲しい話である。
【追加雑学②】マラソン参加者の半数が途中棄権するほど過酷なレースだった
ストックホルムオリンピックのマラソン競技には、68名の選手が参加したのだが、約半分である33名の棄権者を出すという過酷なレースだったそうだ。
原因はやはり記録的な暑さによるもので、日の当たるところでは気温40度に達したといわれている。このレースに日本からはじめて参加した金栗四三選手も、途中棄権した。
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暑さに慣れていない国の選手にとっては、まさに地獄だったろうなと思う。棄権した選手たちの無念さを思うとつらすぎる…。
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【追加雑学③】この時、マラソンで金メダルをとったのは…
この過酷なレースで金メダルをとった選手は、ケネディ・マッカーサー。有名人2人の名前をくっつけたような名前で、ちょっとおもしろい。
彼はもともとアイルランド出身なのだが南アフリカに移民し、ストックホルムオリンピックでも、南アフリカ代表として出場している。
棄権者が続出する猛暑の中、給水もとらず、そのまま走り切ったというからすごい!
【追加雑学④】オリンピックで死者が出てしまった悲しい歴史
オリンピックに出場して命を落としてしまった選手がほかにもいる。
・1960年 第17回ローマオリンピック
自転車競技に出場した、デンマークのヌット・エネマルク・イェンセン選手。競技中に転倒し死亡した。
・2010年 第21回バンクーバーオリンピック(冬季)
リュージュ競技に出場した、グルジアのノダル・クマリタシビリ選手。レース直前の練習で、高速でコース外に放り出され死亡した。
・2016年 第31回リオデジャネイロオリンピック
自転車男子ロードレースに出場した、イラクのゴルバルネザド選手。競技中に転倒して死亡した。
スポーツ選手にとってオリンピックは、夢の舞台。しかし、スポーツには事故や怪我がつきものである。スピードのでる競技などは見ていても怖くなるが…命がけといっても過言ではないと思う。
雑学まとめ
今回の雑学では、オリンピック初の死者を出すという、ストックホルムオリンピックのマラソンでの悲劇を紹介した。
今と違って、気温を予測することもできなかっただろうし、体に異常を起こした選手に対する対応も、迅速にできなかったのかもしれない。
マラソンは、オリンピックの花形競技の一つともいえるほど人気がある。過去に死者が出たという悲しい出来事があったことがきっかけで、トレーニング方法やレースのやり方を改善していき今があるのだろう。
長い道のりを、ひたすら自分と戦いながら走るマラソン選手を、もっと応援したくなった。