パラシュートといえば飛行機から飛び降りたりする際に、安全に地面へ着地するために使用する道具であるが、スカイダイビングでもやらない限り一般人にはさほど馴染みのないものかもしれない。
筆者も何となくテレビを見ていて「パラシュートが開かない、上空○mからの奇跡の生還」といったハプニング番組でハラハラしている程度の認識ではある。そういえばパラシュートって、たしかレオナルド・ダ・ヴィンチが発明してたよなぁ…と思い出した。
パラシュートについて調べたら意外に奥が深かった…。今回はパラシュートの雑学を解説していこう。
【歴史雑学】飛行機よりも先にパラシュートが発明されていた
【雑学解説】世界最古のパラシュートは平安時代には存在していた!?
驚いたことに、パラシュートの原型となる物はなんと、852年には完成していたのだという! ライト兄弟が飛行機の有人飛行に人類史上初で成功したのが1903年。千年近くも前にパラシュートはあったのだ。
852年といえば日本は平安時代、遣隋使として小野妹子が船でドンブラコしていた頃から少し後のことだ。当時のパラシュートは現在のものとは見た目も違い、布を木枠で補強をしたものであったとされる。
記録では、852年にアッバース・イブン・フィルナスという人物がスペインのコルドバにある花嫁の丘という場所に建つ塔から飛び降り、着地に成功しているという。
そして、現代のパラシュートの形に近いものを開発したのは、レオナルド・ダ・ヴィンチである。ダ・ヴィンチの図面にはピラミッドの形に縫い合わせた布に、ロープをつけたパラシュートのようなものが描かれている。現代の形にそっくりである。
実際にはダ・ヴィンチよりも10年前に同じ無名のイタリア人がそれにそっくりなパラシュートの絵を描いているため、ダ・ヴィンチはそれを参考にしたのだろうか? ちなみに、ダ・ヴィンチのパラシュートは実際に実験したところ、安全に降りられることが証明されている。
ところでフィルナスもダ・ヴィンチも、なぜこんなものを考えていたのだろうか? 彼らに共通するものは「空を飛びたい」ということだ。やはり、空を飛ぶ際の緊急時に備えて思いついたのだろう。
しかし、ダ・ヴィンチの空を飛ぶ夢は破れ、パラシュートの使いみちも特別なかったために、なんとダ・ヴィンチが設計してから300年近く忘れ去られていた。
パラシュートは「守る」+「落下する」もの
再びパラシュートを設計するのは1783年のこと。
この時、フランスのルノルマンという人物が設計した落下安全装置に「パラシュート」と初めて命名された。パラシュートとは、イタリア語の「守る」とフランス語「落下する」をかけ合わせた造語である。
ルノルマンのパラシュートは主に火事になったときなどのトラブル時に、安全に脱出するために開発されたとされている。その2年後にはジャン=ピエール・ブランシャールという人物が熱気球からの脱出用に使えるのでは? と、実験を行っている。ダ・ヴィンチの時代とは違い、必要性のあるものとなっていたのだ。
上記のパラシュートは全て木の枠で補強したパラシュートであり、重くてかさばっていた。それでは現代の木枠がないパラシュートになったのはいつのことだろう?
1797年にガルヌランという人物が、木枠がなくても布を広げて降りられる設計のパラシュートを発明したのだ。飛行機が開発されると軍隊で主にパラシュートは多く使用されることになるが、全てガルヌランの開発したパラシュートがベースだ。
発明された最初はいろいろ問題もあったガルヌランのパラシュートは他の人々の手によってさまざまな改良が加えられ、現代のわれわれの時代にも受け継がれているのである。意外に原始的なものだったんだな、パラシュートって…。
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【追加雑学①】自分で発明をした新型パラシュートの実験で死亡した人物がいる
ガルヌランのパラシュートが発明されてから現代まで、パラシュートはさまざまな改良が施されてきた。その改良していくなかには悲しい結末になってしまったエピソードも少なからずある。
1910年のフランスで、フランツ・ライヒェルトという人物が、体に装着して使うことができるコートのような新型のパラシュートを開発した。実際に自分で装着して実験をしようと考えた彼は、1912年2月4日に、エッフェル塔の上から降下する実験を行う。
しかし、パラシュートは開くことなく、ライヒェルトは地面に叩きつけられ、帰らぬ人となってしまった。
この時の一部始終は、多くの報道陣が集まっていたこともあり、しっかりと撮影されていたのである。以下の動画はそのライヒェルトのパラシュートの実験の実際の映像だ。
【閲覧注意!】こちらの動画は、遠くから撮影されたものだが、人が亡くなる瞬間も含まれている。パラシュートの開発に関する実際の発明が見れる貴重な動画のため紹介しているが、閲覧には細心の注意を払っていただきたい。
こちらがライヒェルトの考えた新型パラシュートだ。実際には落下の際にパラシュートが開き、着地できるはずであった。
誰もがこの実験が成功すると思っていたのだろう。誰もライヒェルトを心配しているようには見えない。
もちろんライヒェルト自身がパラシュートを身にまとい、飛び降りようとしている時点で、彼からしても最高の発明品となるはずだったのだろう。とても悲しい事故である。
【追加雑学②】やっぱりパラシュートは大事…。落下傘無しで飛び降りて全滅した軍隊があった…。
ライヒェルトの事故は心が痛む内容であるが、次は正直「なぜ?」と思ってしまうトリビアだ。
1912年2月、ソ連の軍隊に起こった本当の話。当時はモスクワの南西部を輸送機で飛行していた彼ら。下は雪が積もった湿地帯が広がっている。
何を考えてしまったのか、隊長は低空飛行(高度10m程度)をしながら飛び降りれば下は雪だからパラシュートが無くても安全に降りられると判断。そのまま数千人の兵士たちを飛行機から降ろしてしまった。
結果、大半の兵士が骨折などの負傷、湿地帯にはまり動けなくなる事態に陥り、部隊は全滅してしまったのだという。
パラシュートは人類が発明した安全装置だ。何があっても飛行機から降りる際には着用しよう…。
雑学まとめ
パラシュートの雑学を紹介したが、いかがだっただろうか。その歴史は非常に古いもので、日本が平安時代であった頃に原型となるものが発明がされていた。仮に1700年代がパラシュートの始まりとしても、飛行機が空を飛ぶ200年前の話だ。
現在も使用されるパラシュートは、より安全に安定して降りられるよう改良されてきた。パラシュートを超える落下安全装置は現在も開発されていない。今のパラシュートこそが人間が考えつく技術の中でも最良のものなのだろう。
飛行機に乗る以上、自力で空を飛べない人類にとって、パラシュートは無くてはならない存在である。