氷の上は非常に滑りやすい。人間が氷の上でスポーツをする場合、その滑り利用することも多い。また、氷上で生活する動物でも滑ることはよくあるという。
しかし、ホッキョクグマ(シロクマ)は氷の上でも滑らない動物として知られている。ホッキョクグマが滑らないのには2つの理由がある。
なんとホッキョクグマは滑りにくいために研究対象となっており、さまざまなものが作られるヒントにもなっているのだ。今回はホッキョクグマが氷の上を滑らない理由についての雑学をご紹介しよう。
【動物雑学】ホッキョクグマが氷の上で滑らない理由
【雑学解説】ホッキョクグマの足の裏は非常に滑りにくい構造になっている
氷上で生活する多くのペンギンは、滑りにくい歩き方をするのがうまい。その歩き方をまねた「ペンギン歩き」は滑りにくい歩き方として紹介されることも多い。
そんなペンギンでも、氷の上で滑ることは珍しくない。歩かずに滑って移動するペンギンも多いのだ。しかし、ホッキョクグマは氷の上で生活しながら、ほとんど滑らない生き物として有名だ。
ホッキョクグマは獲物を捕るために水の中に入ることも少なくないが、足の裏が濡れた状態で氷の上へ上がっても、滑ることはほとんどないという。
ホッキョクグマの足の裏は、北極圏に住む生物の中でも非常に滑りにくいつくりになっている。近縁種のヒグマは足の裏に毛がほとんどないが、ホッキョクグマの足の裏はフサフサとした毛で覆われており、これが滑り止めの役割を果たしている。
しかも、ホッキョクグマの足が滑りにくい理由はこれだけではない。
足の裏が非常にザラザラしており、毛がなくても簡単には滑らないつくりになっている。これも他のクマにはない特徴だ。
足の裏の毛とザラザラ、この2つの特徴のおかげで、ホッキョクグマは氷の上を滑らずに歩くことができる。ホッキョクグマは、氷の上で生活するのに適した体に進化しているのだ!
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【追加雑学①】スタッドレスタイヤはホッキョクグマの足の裏を参考にして作られた
日本でも冬になると道路が凍結してしまうように、寒い地域で自動車を走らせるには滑りにくいタイヤが必要だ。鋲(びょう)を打ち込んだスパイクタイヤが使われた時代もあったが、路面を傷つけて粉塵が発生するという問題があった。
現在は非常に滑りにくいスタッドレスタイヤが、冬用タイヤとして主流になっている。このスタッドレスタイヤが開発された裏には、動物の足の構造が参考にされている。
垂直のガラスの表面に吸着して登っていくヤモリの足と、ホッキョクグマのザラザラした足の裏を参考にして、スタッドレスタイヤは開発されたという。
氷の上が滑りやすい理由は、氷がわずかに溶けて水の膜を発生させることにある。わずかな水が摩擦抵抗を減らして地面を滑りやすくするわけだが、スタッドレスタイヤには凹凸があるため水を吸収して摩擦抵抗を増やすことができる。
この特性は、ホッキョクグマの水を吸い込みやすいザラザラした足の裏を参考にしている。
下の動画は滑りにくい靴を撮影したものだが、ホッキョクグマを参考にして作られたものだという。
普通の靴は滑って歩きにくいのに対して、ホッキョクグマを参考にした靴は非常に滑りにくいことがわかる。
【追加雑学②】ホッキョクグマは氷がなくなると生きられない?
地球温暖化の影響で北極圏の氷が減少してきているため、ホッキョクグマの絶滅が心配されている。ホッキョクグマは氷の上で生きているため、氷がなくなると生活の場所がなくなると考える人は多い。
しかし、地球温暖化の影響が心配される以前から、暖かい時期になると北極圏の氷は減少している。氷の上で生活できなくなったホッキョクグマは、泳いで陸地に移動するのが当たり前のことなのだ。
地球は寒冷期と温暖期を常に繰り返している。過去にもホッキョクグマは急激な温度変化を乗り越えて生き残ったこともわかっており、温暖化の影響だけで絶滅するとは限らない。
ホッキョクグマは陸上で過ごす時間が長くなるほど体重が減少し、体調が悪くなる傾向にあることも分かっている。そのため、ホッキョクグマは陸地では絶食すると考えられていたこともあった。
現在では陸上で鹿の1種、カリブーなどを捕食していることが確認された。それでも、ホッキョクグマが陸上で十分な獲物を捕らえるのは難しいようだ。
ホッキョクグマが以前のように、急激な温度変化を乗り越えられるとは限らない。陸地には、意外なライバルも存在している。
陸の生活だとヒグマがライバル!?
ホッキョクグマが過ごす陸地にはヒグマも生息している。共存していくことになれば、ヒグマは獲物を取るうえでライバルになる。
陸上で獲物を取るのはヒグマの方がどうしても上手いのは当然であり、ヒグマとの生存競争に負けてしまうことも心配されている。
しかし、ホッキョクグマとヒグマとのあいだにはそれ以外の問題もある。ホッキョクグマとヒグマは交配するのである。
陸上での生活に適応できるホッキョグマもいるだろう。しかし、ヒグマと交配を行ったり、陸での活動を強いられて生存競争に負けていくことになれば、純粋なホッキョクグマは絶滅してしまうかもしれない。
雑学まとめ
ホッキョクグマが氷の上で滑りにくい理由についての雑学をご紹介した。ホッキョクグマの足は毛が長いから滑りにくいといわれるが、実際は足の裏自体もザラザラになっていて、他のクマに比べてより滑りにくい構造になっている。
ホッキョクグマの足の構造が非常によくできているため、人間も発想の参考にすることが多いようだ。絶滅が心配されているホッキョクグマだが、なんとかうまく乗り切ってもらいたいものだ。
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