「良薬は口に苦し」というが、その典型的な薬といえば「正露丸」であろう。あの独特のニオイは強烈だが、その効果は絶大であり、長く売れ続けているベストセラー商品である。
誰もがお世話になったことのある正露丸だが、一時期は体に悪い薬であるといわれていたのをご存知だろうか?
いったい、なぜ正露丸が体に悪いといわれたのか、その理由と真相についてについての雑学を説明したい。
【人体雑学】「正露丸」は体に悪い薬だといわれたことがある
【雑学解説】「正露丸」が体に悪い!は間違いだった
正露丸が体に悪いという説を発表したのは、1999年(平成11年)に発売された書籍「買ってはいけない」。
この書籍において、「正露丸の主成分であるクレオソートは、電柱などの防腐剤として使用されており、発ガンのリスクを高くする」として、正露丸の危険性を説いていたのだ。このため、一時期は学校の保健室から正露丸が姿を消す事態にもなったらしい。
これに対して、ラッパのマークの正露丸を販売している大幸薬品は、次のような反論をしている。
「正露丸に使われているのは、ブナやスギなどから抽出されたクレオソートであり、防腐剤として使用されるクレオソート(石炭から抽出されたクレオソート)とは別物である。そのため、健康に害はない」
このような論争があったためか、のちに厚生省によって、ブナ・スギなどから抽出されたものを「木(もく)クレオソート」、石炭から抽出されたものを「クレオソート油」を正式名称とし、区別するように通達がされている。
また、正露丸に含まれるフェノールが体に悪いのでは? という意見もあったが、大幸薬品は「正露丸に含まれるフェノールはごくわずかであり、健康に影響はない」と説明しており、正露丸の無害性をアピールし続けているのだ。
ちなみに、正露丸のあの独特なニオイは木クレオソートに由来するものであり、そのニオイを落とすために大幸薬品の工場には浴場が設置されているらしい。
おすすめ記事
-
パクリ商品…じゃない!正露丸は"ラッパのマーク"ではないものもある【大幸薬品】
続きを見る
スポンサーリンク
【追加雑学】「正露丸」を軍隊に持ち込んだのは森鴎外
正露丸は日露戦争において軍隊に持ち込まれ、読みは同じでもともと「征露丸」という名前だった…というのは、かなり有名なトリビアである。
では、軍隊に正露丸を持ち込んだのは誰なのだろうか? 正解は小説「舞姫」で有名な森鴎外である。
森鴎外といえば、子どもたちにキラキラネームをつけた逸話もある人物だが、小説家としてだけはなく陸軍の軍医としても活躍し、日露戦争に従軍していたのだ。
実は、森鴎外が正露丸を軍隊に持ち込んだのは、兵士の腹痛を抑えるためではない。
当時の陸軍では脚気による死者が多く、その対策に頭を悩ませていた。森鴎外は脚気の原因を未知の病原菌によるものであると想定し、チフスにも効果的なクレオソートならば脚気対策になると考えていたようだ。
しかしながら、脚気の原因はビタミン不足であり、正露丸の服用でも脚気による死者が減ることがなかったという。とはいえ、下痢対策としての正露丸はとても有効であり、日露戦争から帰還した将兵によってその効能は広く知れ渡ったそうだ。
脚気対策としては的外れだったものの、正露丸の知名度アップにかなり貢献していた森鴎外。正露丸を販売するメーカーとしては、森鴎外のお墓に足を向けて寝ることはできないだろう。
おすすめ記事
-
江戸時代に麦茶が流行した理由とは?実は栄養成分が豊富なんです
続きを見る
雑学まとめ
今回の雑学はいかがだっただろうか。あれだけ効果抜群な正露丸だが、体に悪いといわれたこともあったとは…。効果がありすぎるのが仇となり、悪い憶測を呼んでしまったに違いない。
とはいえ、その後は正露丸の安全性は証明されているようなので、安心してほしい。これからも腹痛のときには、正露丸のお世話になるのが正解のようだ。