世界史

始皇帝は水銀を薬として飲んでいた。不老不死への執着…。【動画】

雑学カンパニー編集部

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始皇帝は水銀を不老不死の薬として飲んでいたという雑学

水銀と聞くと、まず「理科の実験で使った」「社会の授業で水俣病の原因って聞いたな…」などと思い浮かぶし、その毒性も、今や義務教育でしっかりと教え込まれる。

このように今や猛毒という認識が常識の水銀を、薬として飲んでいた人物がいると聞いたらどう思うだろう。しかもその変わり者は、古代中国史に名を馳せる偉大な始皇帝! そう、『キングダム』に出てくる秦王・嬴政(えいせい)だ!

得体のしれないものを薬だと信じて飲むなんて…と思わされるが、そのぐらい、水銀の神秘は当時の人たちを魅了していた。今回はそんな水銀と古代中国に生きた始皇帝の雑学を紹介しよう。

【歴史雑学】始皇帝は水銀を不老不死の薬として飲んでいた

始皇帝は水銀を不老不死の薬として飲んでいたという雑学

信長さん
水銀が不老不死の薬と思われていた時代もあったのだ。個体から液体へ、そしてまた個体へ…さまざまに姿を変える水銀の神秘が、古代の人々に不死をイメージさせたのだろう。

秀吉くん
今では水銀ってめっちゃ危険なものって認識が広がってるっすけどね。無知って怖いっすわ!

【雑学解説】始皇帝が求めた「不老不死の水銀」とは?

「もうこれ以上欲しいものはない」

そんな状況になったとき、次に人が求めるものはやはり永遠の命なのだろうか。紀元前3世紀、古代中国の天下人となり、すべてを手に入れた始皇帝もまた、永遠の命を求めた一人だった。

そして今や毒としての認識が当たり前の硫化水銀が、当時は不老不死の象徴とされていた。もちろん誰も毒だとは思わず、始皇帝もそれを服用していたという伝承があるのだ。

不老不死を求めた始皇帝が行き着いたのは道教の"練丹術"

中華統一を成し遂げた始皇帝は、不老不死を手に入れようと考え、当時の中国に浸透していた"道教"の教えに辿り着く。

道教はちょっと異色の宗教で、信仰する者が最後に目指すところが不老不死だったのだ。道教の教えに従って精進すれば、不老不死の仙人になれると信じられていた。

というか紀元前6世紀にこの思想を広めた老子自身が、不老不死だなんていわれていたのだとか。

990年生きたとか、インドに渡って仏陀に教えを説いたとかいろいろ伝承が残っているが…まさかそんなの信じてたの…? キングダムの政はもうちょっと思慮深い気が…。

という話はいいとして、始皇帝はまずこの道教に精通する仙人をあてにしたが、そんな人物が見つかるはずもなく、最終的に道教から派生した"練丹術"という、薬の調合法に辿り着く。

これを参考にして作られた薬が硫化水銀の元となる、辰砂(しんしゃ)という鉱物から作られていたのだ。

形を変える美しき硫化水銀

硫化水銀が不老不死の象徴とされていた理由は、この物体の不思議な特徴にあった。硫化水銀は辰砂の状態では、血液のような真っ赤な色に輝く、水晶のような見た目をしている。

…めっちゃ綺麗。当時の人はこの真っ赤な色を、「命の色」のように捉えていたのかもしれない。

そしてこの鉱石を熱していくと、銀色の液体となっていく。水銀と聞いて多くの人が連想するのはこれだろう。

秀吉くん
へぇ~、重そうなのに鉄球って水銀の中に沈まないんっすか?!

水銀は物体としての密度が高いため、動画のような液体の状態でも鉄球が沈まない。この様子にしても、科学的に理由があるとわかっていても不思議に思えるものだ。

そこからさらに熱していくと、今度は赤黒い砂状(条件によっては黄色)になる。さらに過熱すると黒色に、もっと過熱すると最後にはまた銀色のあの液体に戻る。

つまり水銀は熱するごとに、鉱物→液体→鉱物→液体と姿を変えていくのだ。

変化を繰り返してまた元に戻る。その様子に古代中国の人たちは命の循環を感じたのだといわれている。得体の知れない物体でも薬にしてしまうのだから、思い込みとは恐ろしいものだ…。

ちなみに始皇帝は水銀を摂取し始めてから約10年後、50歳で亡くなっている。この時代の平均寿命は35~50歳といわれているから、特別早死にではないようだが…水銀を飲まなければもっと長生きできたかも?

信長さん
水銀を飲んでいてこの寿命ということを考えると、もともと屈強な肉体を持っていた男なんだろうな。

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日本にも水銀は不老不死の薬として伝わった

水銀が薬として日本に伝わったのは飛鳥時代の話。飛鳥時代といえば、遣隋使・遣唐使などで中国の文化を取り入れようという動きが活発だった。水銀が不老不死の薬として伝わったのも、その流れからだろう。

かの持統天皇も水銀を愛飲していた。察するにこの時代、水銀を手に入れられる権力者の多くが水銀中毒で亡くなっているはずだ。

秀吉くん
不老不死どころか自分で死を早めてるじゃないっすか…。

【追加雑学①】不老不死に異常なまでにこだわった始皇帝

不老不死にこだわった始皇帝に関する雑学始皇帝は生前、3回も暗殺の危機にさらされている。彼が不老不死を求めたのは、単に欲のためというより、何度も死にそうになったその経験が関係しているのだろう。

「俺、水銀飲んでるもんね! 殺せるもんなら殺してみろよ!」みたいな感じ? 水銀を飲んでいた以外にも、彼には不老不死をめぐるエピソードがいくつか残されているぞ。

永遠の命のために家来を日本へ派遣

始皇帝の家来である徐福は、永遠の命の秘薬を求め、3000人もの若者を率いて日本へ向かった。しかし秘薬がみつからず皇帝に顔向けできなかったのか、単に住み心地がよかったのか…彼はそのまま日本に定住してしまったようだ。

秀吉くん
日本はいいところっすからね!

徐福が伝えた技術が日本を大きく発展させたという伝説も、各地に残っているぞ! 日本へ行くように命じた始皇帝に感謝しなければ…。

以下は和歌山県新宮市にある、徐福公園の様子。日本へやってきた徐福はこの地を住処にしたといわれている。

公園内にある徐福の墓は江戸時代に和歌山藩主・徳川頼宜によって建立されたもので、明らかに中華風な門などは1994年になって整備された。

遥か2,000年前の偉人への感謝の気持ちが表せる頼宜さんは、きっと器のでかい藩主だったのではないか。新宮駅の目の前なので、観光で行くのも気軽である。

墓に流れる水銀の川

始皇帝が眠っている広大な地下墓地・始皇帝陵には、かつて水銀の川が流れていたことが知られている。今はもちろん、とっくに蒸発してなくなってるけどね。

そもそも始皇帝が水銀を飲んでいたという伝承が信じられるようになったのは、後世の研究によって彼の墓から自然界ではおよそ存在しえない濃度の水銀が発見されたからだ。

お墓にまで水銀を流し込むとは…いや、もう死んでますよね? といいたくなるところだが、ともあれこれで始皇帝が水銀に神秘を感じていたことは確実だったといえるようになる。

以下の動画で始皇帝陵と、その周辺の兵を弔った兵馬俑(へいばよう)の様子が紹介されている。これは…キングダム好きの血が騒ぐやつや…! 飛信隊の像も、姜廆(きょうかい)の愛刀・緑穂(りょくすい)っぽい剣も出てくる!

兵馬俑は1974年に地元の農民が井戸を掘ろうとして偶然発見したという。こんなんいきなり出てきたら腰抜かすぞ…。

紀元前の世でこれだけの規模の墓を作ってしまうんだからとんでもない。現在は博物館と一緒に西安で公開されているぞ!

アクセスとしては、「西安空港→西安駅→兵馬俑直行のバス」というのが早そうだ。所要時間はだいたい2時間ぐらい。都市部から離れているだけに少々時間はかかるが、足を運ぶ価値は十分ある!

【追加雑学②】ヨーロッパでは水銀は薬として使われた

16世紀のヨーロッパでも、水銀が薬として使われた。当時のヨーロッパでは梅毒が流行しており、その治療に水銀が注目されたのだ。

その方法は腫瘍ができた患部に塗布する、または水銀を蒸発させたものを吸引するなど。しかし、水銀中毒者が多発したことで、この治療法は肯定派・否定派の論争を呼ぶことになる

水銀中毒になると神経が麻痺するため、よだれがダラダラと垂れ流しの状態になってしまう。ヨーロッパでは、このよだれの垂れ流しによって梅毒が排出されると考えられていた。…他に治療法がなかったとはいえ、信じられないような理屈である。

水銀治療は日本にも輸入され、杉田玄白が記録を残している。飛鳥時代などを経て、中毒死した者も多かったことから水銀の危険性は十分に認識されていたはずだ。それからまたしばらく時代を経たことで、忘れ去られていたのだろうか。

実際に梅毒に対しては劇的な効果があったという記録もあり、1776年頃まで水銀治療は行われていたという

信長さん
江戸時代まで水銀治療は行われていたのだな。しかし『劇的な効果があった』とは疑わしい…。
秀吉くん
効果を信じて水銀を服用していた人たちの気持ちを考えると、なんとも言えないっすね…。

もしかしたら実際に感染源を追い出すような作用もあったのかもしれない。しかしそのために水銀中毒になっていては本末転倒。どちらにしても死んでしまうではないか

「始皇帝と水銀」の雑学まとめ

「始皇帝と水銀」の雑学まとめ古代中国の覇者となった始皇帝は、不老不死への執拗な執着によって、猛毒である水銀までをだと信じ込んでいた。

根拠もないのに…と思わされるが、ヨーロッパや日本にも水銀を薬として使っていた時代はある。水銀の不思議な特徴には、やはりどこか人を惹きつけるものがあったのだろう。

信長さん
日本でも昔の白粉には水銀が含まれていたりしたし、けっこう身近な鉱物ではあったよな。
秀吉くん
まぁそうっすよね。今の時代の感覚とはけっこう違ったっすよね。

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