鳥類のように優れた視力をもつ動物は、上空から離れた獲物を見つけるためなど、その進化にしかるべき理由がある。人間に近い霊長類だって、木の枝を道具に使ったりするためには優れた視力が必要だ。
しかしこの世には不思議な進化を遂げた生き物もいる。なんでもイカは、必要もないのに非常に優れた目をもっているというのだ。しかもその性能をまったく活かせていないというから、無駄も無駄である。
今回はそんなイカの生態に関するトリビアをお届けしよう。考えれば考えるほど、謎の多いその姿に惹かれていくに違いないぞ!
【動物雑学】イカの目は高性能だが脳が発達していない
【雑学解説】イカは人間と同じ単眼をもつ、珍しい無脊椎動物
イカの目は、同じ無脊椎動物のなかでは群を抜いて高性能である。どれぐらい高性能かというと…以下のような感じだ。
- 視力は約0.6
- 人間と同じように、入ってくる光の量を調整するサングラス機能がある
- イカが人間と同じ大きさになったら、目はバスケットボールほどのサイズ。その分広範囲が見えている
色こそモノクロでしか判別することができないが、その性能を見れば、人間とほとんど遜色ないことがわかる。そう、実はイカは人間と同じ単眼をもっているのだ。
無脊椎動物というのは、ひとつの眼球からなる単眼ではなく、小さな眼が複数集まった複眼をもつ者が多い。単眼は複眼よりも解像度が高く、光の強弱を感知する能力にも長けている。イカはほかの無脊椎動物と比べて、かなり人間に近い世界が見えているのだ。
以下は江ノ島水族館のイカの水槽を紹介した動画だ。たしかに目が大きく、特徴的なことがわかる。
イカは人間と同じ情報量を得ていてもすぐ忘れてしまう
イカは目だけではなく、頭の構造も人間と似ているため、無脊椎動物のなかではかなり賢いとされる。「海の霊長類」などという通り名が付くほどだ。
それなら人間と同じように、道具を使ったり、文明を築いていったりするかも…? なんてトンデモな未来はおそらく来ない。イカは頭がいいといっても脳の容量が小さいため、その記憶は2日間しかもたないからだ。
人間と同じぐらい情報を受け取っているに関わらず、それを覚えておくことはできない…。まさに宝の持ち腐れ。豚に真珠ならぬ、イカに単眼である。
どうしてそんな奇妙な進化を遂げてしまったのか。イカは宇宙人のスパイで、目から受け取った情報を地球外に送っているのでは…などと言い出す人まで出てくる始末だ。なるほど、だからイラストの宇宙人はイカのような姿で描かれるのか!
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【追加雑学】体長10mを超えるイカ「ダイオウイカ」とは?
ダイオウイカは平均体長10mと、無脊椎動物のなかでも最大級といわれているイカだ。発見されたなかで最大のものは、体長17.5m、体重1トンにも及ぶ。
このダイオウイカも例にもれず巨大な目をもっており、そのサイズはなんと直径30cm近くもあるという。暗い深海において、光をより敏感にキャッチするために大きな目をもっていると考えられているぞ。
ダイオウイカは、クラゲなどをエサにする大きな魚を食べているという。クラゲはホタルと同じように、発光する性質をもっているため、その光を頼りに、ダイオウイカはお目当ての魚を見つけるのだ。物覚えは悪くても、優れた視力は決して無駄ではないのである!
それにしても、そこまで大きな体をもっているダイオウイカなら、脳の容量が大きくてもおかしくないのでは?
それならその視力もより有意義に活用できるかもしれない! などとワクワクさせられるが、彼らは深海に住むため、その生態もはっきりと知られていないのが現状だ。
以下は新潟県佐渡市でダイオウイカが発見された際のニュース映像である。海外の話かと思っていたら、日本にもいるのか!
ちなみに「このサイズなら、イカ刺しをたらふく食べられる!」なんて考えない方がいい。ダイオウイカは体に大量のアンモニアを含んでいるため、臭くて食べられたものではないのだ。
雑学まとめ
イカの目は単眼で、人間並みの優れた視力をもっている。残念ながら脳の容量が追い付かず、その性能をフル活用することはできないが、彼らがそれこそ人間並みの脳をもっていたとしたら、恐ろしい話だ。
海から引き揚げたイカが「何すんねん! ワシ泳いでただけやないか!」などと言葉を話しだしたら目も当てられない。いや…それもそれでおもしろいかも。