陸に住んでいる人間にとって、海には未知な部分が多く、海洋生物の研究にロマンを感じる大人たちは少なくない。
もちろん子どもたちだって海の生き物が大好きだ。水族館は絶好の家族サービススポットで、なかでもピョンピョンと飛び回るイルカやシャチのショーは大人気である!
そう、彼らが調教される前、野生のころからジャンプする習性をもっているのも興味深いところだ。野生のイルカやシャチやイカがピョンピョン飛ぶところなんて見れたら、それこそ感動だろうなあ…。
ん…? 今、なんか違うの一匹混ざってなかったか…?
…いや、マジな話、イカは飛べるのだ! 今回はそんな空飛ぶイカに関する雑学を紹介する。
【動物雑学】30メートルほど飛べるイカがいる
【雑学解説】まるでロケットのように空を飛ぶ「トビイカ」
「トビイカ」は、亜熱帯地方に生息するアカイカ科に属するイカ。種別的にはスルメイカの仲間で、全長30cmほどの、なかなかに大きなイカだ。日本では主に沖縄、小笠原航路の大島沖・八丈島沖・父島沖・母島沖で観察されている。
空を飛ぶから"飛びイカ"なのかと思っていたら、漢字にすると"鳶烏賊"と、なんかカッコイイ。しかしながらその名の通りびゅーんと空を飛ぶ、イカの可能性を超越してしまったイカである。
なぜ彼らが空を飛ぶのか? そんなもん、そこに空があったからに決まっているだろう!
…というのは嘘だ。彼らが空を飛ぶのは、捕食者から逃れるための一手段だという。なるほど、空へ飛びだせば凶暴なサメやシャチも手が出せない。トビイカもよく考えたもんだ。
ただ…トビイカの飛行能力をイルカやシャチのジャンプなどと一緒にしてもらっては困る。彼らはそれこそ弾道ミサイル並みに飛ぶ。
…いや、ちょっと言い過ぎた。でもロケット花火ぐらいには普通に飛ぶぞ!
トビイカは水面から勢いよく飛び出し、3秒ほど飛行する。飛行距離は30メートルから、長いものだと50メートル。速度はおよそ時速36kmと、だいたい、自転車でちょっと飛ばしたくらいの速さである。
ぶつかったらけっこう痛そう…いや、普通にケガしそうだ。
うん! これはぜひ飛んでいるところを見たい!
…と、動画で見られればよかったのだが、現状トビイカが飛ぶ姿の動画はなく、写真の連続撮影に留まっている模様である。以下の動画でトビイカの撮影に成功したときの様子を、北海道大学院の村松さんが語っている。
村松さんもトビウオと見間違ったと言っているように、もしかするとこれまでも、イカとは思われず見過ごされてきたのかもしれない。…やはり海の生物はまだまだ未知である。
トビイカの飛行テクニックがすごい
いったい、トビイカはどのようにして、イルカやシャチも敵わないぐらいの大ジャンプを繰り出しているのか。非常に気になるところだ。
実は彼らはやっぱりというか、想像通りかなり高度なテクニックを使っている。
- 水中を高速で泳ぎ、水を勢いよく吐き出して水面から飛び出す。このとき腕をたたみ、水の抵抗を少なくする
- 水を空中でも噴射し続けて加速する。広げた脚とヒレが翼の役割を担い、浮き上がるための揚力を得る
- 脚とヒレを広げて翼のようにし滑空する。鳥のようにバランスをとって空中でも姿勢を安定させている
- 脚をたたみ、姿勢を低くして着水する
…といった具合だ。
脅威のジャンプ力は水を吐き出した推進力によるもの。さらにたくさん生えた脚をパラシュート代わりにする。…空を飛ぶための段取りが完ぺきすぎてビビる。
ちなみにいうと実は…同じアカイカ科のスルメイカも空を飛べる。おなじみのイカとあって、個人的にはこちらのほうが衝撃がでかい…。
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【追加雑学①】日本を襲う記録的イカ不漁…トビイカが救世主となるか?
近年、日本近海におけるイカの不漁が問題視されていることを知っているだろうか。
農林水産省の漁業・養殖業生産統計によると、スルメイカの漁獲量は2015年以降激減の一途を辿り、10万トン以上を記録していたものが、16年には10万トンを下回るように。19年4~12月の漁獲量など、2.1万トンしかなかったという由々しき事態に陥っているのだ。
原因は中国や北朝鮮による違法なイカ漁や、イカが育ちにくい猛暑が続いていることによるという。
これによってイカの価格は年々高騰しているほか、2019年には毎年恒例の「函館いか祭り」における朝イカ販売が中止、山口県萩市の「須佐 男命いか祭り」は開催自体を中止するなどの影響が出ている。
以下は2019年の函館いか祭りの模様を映した動画だ。イカ丼めっちゃ美味そう!
こんな楽しいイベントも、この先中止になる可能性があるのだ。というか…このままでは日本でイカが食べられなくなってしまう!!
そこで今、イカ不漁の救世主として注目されているのがトビイカである。
食用としての今後が注目されるトビイカ
トビイカはこれまで、漁獲方法が確立されていないという理由で、食用としては着目されていなかった。しかし近年のイカ不漁の流れを受け、2017年に国際水産資源研究所が新しい食料資源として調査を実施。流通業者や加工メーカーを招いたシンポジウムが開かれている。
結果、北太平洋南西部の海域において安定的な漁獲量を得られる可能性が報告されたのだ。やっぱり小笠原諸島とか、そっち方面なのか。
会場ではトビイカの試食も行われ、各業者からは以下のような意見が寄せられたという。
- 刺し身はスルメイカよりも硬い
- スルメイカほど甘みはない
- 加工すれば商品化できるレベル
…なんかギリギリ及第点的な感じで、あんまりおいしそうな感じしないんだけど…大丈夫?
いやいや、これはみんながスルメイカの味に慣れてしまっているだけである。だってトビイカは沖縄ではよく獲れるため、スルメ代わりに食べられているぐらいだぞ! というか同じアカイカ科だし、どっちも飛ぶし!
以下の動画のように、夏の沖縄ではトビイカの天日干しが風物詩になっている。沖縄料理は独特な味わいの料理が多いので、ひょっとするとトビイカもそういった部類なのかも。
今後は沖縄のみならず、トビイカが全国の食卓に登場する未来も近いかもしれない!
【追加雑学②】不思議で面白い深海イカいろいろ
深海生物には、ユニークな姿をしたヤツらがたくさんいる。特に深海魚は総じてエイリアンみたいな見た目をしているイメージである。
でもね…エイリアンみたいなのばっかりじゃなくて、深海で暮らすイカには、とっても可愛い見た目をしている種類がいるのだ!
カリフォルニア沖で発見された「スタビ―・スクイード」は、どこぞのゆるキャラになっていてもおかしくないような見た目をしているぞ。
マジックで殴り書きしたようなクリクリの目玉が特徴的! ゴム人形と見間違えてしまうような見てくれである。
また、「ユウレイイカ」という、ちょっと変わった名前のイカも存在する。以下がその動画だ。
なるほど、たしかに暗い海底をゆらゆら漂っている姿は幽霊さながらである。ひゅ~どろどろ…という効果音が聞こえてきそう。
ロケット花火ぐらい飛ぶイカもいれば、深海に潜ればまた変わり者のイカがいる。ひとくちにイカといっても、ほんとに奥が深いのだ!
雑学まとめ
今回は空飛ぶ「トビイカ」についての雑学をご紹介した。イルカやシャチも真っ青な飛行技術を誇るトビイカ。
いつか水族館でトビイカショーが見れる日も…いや、それは観客にも被害が及ぶ可能性があるか…。ただ、一度その飛行シーンはお目にかかってみたいものである。
このほかにも、イカには興味深い姿や習性をもつ種類がたくさんいる。一度水族館に行って、自分のお気に入りのイカを探してみてはイカが?!
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