あなたは普段、恋人のことをどんな風に呼んでいるだろう。ほとんどの人はきっと普通に名前で呼んでいるよね。アメリカに行けば「ハニー」や「ベイビー」などの呼び方もあるが、日本でそんな呼び方をしているのはちびまる子ちゃんの花輪くんぐらいだ。
…ところで、アメリカのそれもなかなかに恥ずかしいが、実はイタリアはその比ではない。無限じゃないかと思うほど大量に、恋人の呼び方が存在するのだ。
今回はメジャーなものから、使っている人を見たことがないマイナーどころまで、イタリアにおけるさまざまな恋人の呼び方を、現地に住む筆者がお伝えするぞ!
【世界雑学】イタリア語の「恋人の呼び方」いろいろ
【雑学解説】愛と情熱の国・イタリアで使われる恋人の呼び方
イタリア人が恋人に使う言葉といえば、まずは「amore(アモーレ)」だろう。
アモーレはイタリア語で「愛」を意味し、愛しい相手への呼びかけに使われる。カップルだけではなく、親子間の会話でも飛び交う汎用性の高い言葉だ。プロサッカーの長友佑都(ながともゆうと)選手が使用したことで、日本でも知名度が上がったイタリア語である。
そして愛と情熱にあふれたイタリアの恋人への言葉は、アモーレ以外にもこれでもかと存在している。以下より順に紹介していこう。
美しさや可憐さを表した恋人の呼び方
数多ある恋人の呼び方のなかでも、比較的よく使われるのが美しさや可憐さを表す言葉だ。ざっと、以下のようなものが挙げられるぞ。
- 「tesora(テゾーラ)」:宝物
- 「stella(ステッラ)」:星
- 「anjela(アンジェラ)」:天使
- 「bella(ベッラ)」:美しい
- 「piccola(ピッコラ)」:小さな
- 「bimba(ビンバ)」:赤ちゃん
恋人を宝物や天使に例えてしまうとは、さすがイタリア人。日本だったらラブソングのなかぐらいでしかお目にかかれない表現である。「小さな」や「赤ちゃん」はアメリカ人が使うベイビーに近い感じもする。
ちなみにイタリア語では基本的に、語尾が「o」の場合は男性のこと、「a」の場合は女性を指す。たとえばテゾーラは女性に向けた言葉だが、テゾーロなら男性に向けた言葉という感じだ。
今回挙げる愛称も、ほとんどがこの置き換えで男女を使い分けることができる。一方、これに当てはまらない言い回しだと…
- 「Principessa(プリンチペッサ)」:お姫様
- 「Principe(プリンチペ)」:王子様
みたいなのもある。
かけがえのない存在であることを表す恋人の呼び方
恋人を唯一無二、かけがえのない存在として以下のような呼び方をすることも多い。ただ…日本人の私にはどれもちょっと大げさすぎる。
- 「Cara(カーラ)」:親愛なる
- 「La mia vita(ラ・ミア・ヴィータ)」:僕の人生
- 「Cuore mia(クオーレ・ミア)」:僕の心臓
- 「mia ○○(ミア・○○)」:僕の○○
- 「La mia ○○(ラ・ミア・○○):僕の唯一の○○
「mia ○○」の○○に入るのは、呼びかけている人の名前だ。
特にインパクトがあるのは「僕の心臓」だろう。これも日本人が言うとかなり重い…。
動物の名前を使用した恋人の呼び方
続いては動物の名前を使った恋人の呼び方だ。マンガの世界の話だと思っていた「僕の可愛い子ネコちゃん」がイタリアでは普通に存在している。
- 「gattina(ガッティーナ)」:子ネコ
- 「cagnolina(カニョリーナ)」:子イヌ
- 「farfallina(ファルファッリーナ)」:チョウチョ
- 「tartarughina(タルタルギーナ)」…子カメ…カ、カメ?!
「~イーノ/~イーナ」と語尾に付くものは「小さい」というニュアンスを含む。覚えておくと日常会話でも使えて便利だ。
このほか「アルマジロ」や「トガリネズミ」なんて表現もあるというが、友人のイタリア人は「リアルで使ってる人は見たことがない」と言っていた。…そもそもこれらの動物を見る機会もなさそうだし、いまいち意味もわからん。
男性に対して使われるものとしては、「tigrotto(ティグロット)」:子トラなども一般的だ。「男は皆トラになりたいからね…たとえ可愛い子トラでも!」とは、イタリア人男性談である。日本じゃオオカミに例えられるやつだ。
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食べ物の名前を使用した恋人の呼び方
なんとイタリアでは、食べものの名前ですら恋人の呼び方になる。意味不明なのもあるけど。
- 「zuccherino(ズッケリーノ)」:砂糖
- 「biscottiono(ビスコッティーノ)」:ビスケット
- 「merendina(メレンディーナ)」:おやつ
- 「formaggino(フォルマッジーノ)」:チーズ
- 「cipollina(チッポリーナ)」:小玉ねぎ
このほかにも、チェリー・ビスケット・塩・じゃがいも・にんじん・オリーブ・肉団子など…挙げ出すとほんとにキリがない。もうなんでもいい感じである。…正直、呼ばれてもうれしくない。
おもしろいなと思ったのは、男性の愛称である「panzerotto(パンツェロット)」。意味は「揚げピザ」で、ぽっちゃり系の彼氏に使う。…ただの悪口である。
もちろん女性には絶対に使ってはいけない。
「いや、男性でもこの呼び方はないっしょ」と言うと、「いやいや、揚げたピザはおいしいからね!」などというセリフが飛び出すのも、陽気なイタリア人の国民性である。
【追加雑学】適当に見えても実は意味があるイタリア人の恋人の呼び方
前述のように、イタリア人の恋人の呼び方には、動物や食べものなど一見して意味不明なものも多い。しかし彼・彼女らがそう呼ぶようになった背景を辿ると、どの言葉にもたいてい意味があるものなのだ。
筆者にもイタリア人のパートナーがいるので、彼が私の愛称にどんな意味を持たせているかを紹介していこう。
まず、定番のアモーレは外せない。感情が高ぶったときはだいたいアモーレだ。日本のみなさんも「好き」しか言葉が浮かんでこない場面があるように…?
そのほか筆者はナッツ類が好きなので、「子リス」を意味する「scoiattolina(スコイアットリーナ)」。にんじんをまるかぶりしたら、それ以来「子ウサギ」を意味する「coniglietta(コニリエッタ)」と呼びだすなど、由来がはっきりしている愛称がいくつかある。
しかし、そんな彼が一番愛用している愛称は「子ブタ」を意味する「porcellina(ポルチェリーナ)」だ。…破局を迫られても無理がないような響きにも聞こえるが、イタリアではこれが愛情表現になる。"子ブタちゃんのように愛嬌がある"みたいな感じ?
ただし、ただのブタを意味する「porco(ポルコ)」は決して恋人に使ってはいけない。こちらは一変して家畜扱いである。
イタリア語の「恋人の呼び方」の雑学まとめ
イタリアには、有名なアモーレ以外にも恋人への愛称が無限にある。もはやそのカップルのあいだで通じれば、なんだって愛情表現になるレベルだ。
とはいえあだ名だといわれれば、日本人だってけっこうなんでもありである。友だちから変なあだ名を付けられた経験がある人も多いんじゃないか。
イタリア人は愛情深い人種ゆえに、それが恋愛に結びつきやすいだけなのかも。