外でたまに見かけるテントウムシ。小さくて可愛い虫だが、実は人工衛星開発に関わっているらしい。しかし、テントウムシと人工衛星にいったいどんな関係が…?
というわけで、今回の雑学ではテントウムシと人工衛星について調べてみたぞ! 「テントウムシすごい!」とびっくりすること間違いなし。
ついでに、テントウムシを利用した新技術も紹介させてくれ! 農薬を使わずに害虫駆除ができるようになるかもしれないぞ。
【宇宙雑学】テントウムシが人工衛星開発に関わっている
【雑学解説】テントウムシの羽を折りたたむ仕組みが人工衛星のアンテナに応用できそう
どこにでもいるイメージのテントウムシだが、実は羽を折りたたむ仕組みは2017年まで解明されていなかった。東京大学などが、2017年5月に詳しいメカニズムを解明したと発表している。
テントウムシの羽は2種類あり、赤に黒の水玉模様がある硬い甲羅のような羽を「さや羽」、さや羽の中に収納されている半透明で薄い羽を「後ろ羽」と呼ぶらしい。
テントウムシは離陸時にさや羽の中から後ろ羽を広げて飛び立ち、着陸時には後ろ羽を器用に折りたたみ、さや羽の中に収納する。どんな仕組みになっているかなど考えたこともないが、実はものすごく複雑に後ろ羽を折りたたんでいるらしい。
YouTubeで詳しく紹介している動画があったので見てくれ。
メカニズム解析のために、そのままだとさや羽が邪魔で内部構造がよく見えないので、透明のさや羽を人工的に作り、テントウムシに移植して、高速度カメラを使って折りたたむ様子を撮影し解析している。
分かったことを簡単にいうと、後ろ羽の部分的な柔軟性を活かし、さや羽の内側の構造と後ろ羽の翅脈(羽の骨のように見える部分)をうまく使って後ろ羽に折れ線を作りながら、背中でこすりあげることで素早くコンパクトに収納することが可能になっているそうだ。
羽の折れ線部分の構造についても解析され、人工衛星アンテナにも利用されるテープ・スプリング構造というものが使われていたことが分かった。この構造は伸ばした状態でも安定していてそれなりの強度もあるうえに、必要があれば元の状態に折り曲げて、たたむこともできる。
後ろ羽の折りたたみ方にテープ・スプリング構造が使われていることにより、少ないパーツで複雑な折りたたみ方が可能になり、さらに、飛行時の安定性と羽ばたきに耐えられる強度をも兼ね備えることができているそうだ。
この複雑な折りたたみ方は、人工衛星用アンテナや医療機器、傘や扇子にいたるまで、形状を変化させるものに幅広く応用が期待されている。人間が考えている以上に、虫は複雑なつくりでできているのだろう。今後、テントウムシを見る目が変わりそうである。
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【追加雑学】テントウムシで害虫駆除する新技術も登場
テントウムシを使って害虫を駆除する新しい技術も登場している。こちらはテントウムシの生態を利用したものだ。
テントウムシは繁殖力が高く、飼育も簡単なうえに害虫アブラムシを食べてくれる。しかし自由に飛んで行ってしまうので、アブラムシ駆除にはあまり使えなかった。
ところが、千葉県立農大によって飛ばないテントウムシが「テントロール」という名前で商品化された。テントウムシや作物に害のない樹脂を使い、テントウムシの羽を固定することで約2カ月間は飛べなくなるらしい。
そのあいだに放した場所で、アブラムシを食べてくれるので害虫駆除効果があるというわけだ。2ヶ月が過ぎると樹脂は自然にとれるので、テントウムシはまた飛べるようになるぞ。
飛ばないテントウムシを使った研究はさらに続けられており、テントウムシに微生物を乗せる技術も開発された。
長いもを使って、飛ばないテントウムシの羽の上に糸状菌をくっつける方法だ。糸状菌は害虫であるコナジラミ類に対して高い殺虫効果を発揮するので、アブラムシだけでなくコナジラミ類も死滅させようというわけだ。
テントウムシはご飯にありつけて、農家は害虫が減らせるとは、まさにWin-Winの関係である。
雑学まとめ
今回の雑学ではテントウムシを活用した新しい技術を紹介したが、いかがだっただろうか。
テントウムシがここまで複雑に羽を折りたたんでいたとは…侮りがたしテントウムシ。
こうやって他の生物の仕組みを研究し、応用することで技術は進歩していくのだろう。
作物にもテントウムシにも害がない害虫駆除方法とは、研究者もうまいことを考えるものである。こういう研究が進めば、完全無農薬も夢ではないかもしれないぞ。