あなたは料理が得意だろうか。たとえレシピを知らなくても大丈夫。いまや世の中には料理本や料理アプリがあふれ、そのとおりに作ればちゃんとおいしく作れるようになっている。
ごくまれに料理本どおりに作ったつもりで失敗する人もいるようだが(筆者のことだ)、おいしいレシピがたくさんのった料理本は見ているだけでお腹が空いてくる。
そんな料理本、初めて考案されたのはなんと江戸時代! それも豆腐の料理本だったというから驚きである。その名も「豆腐百珍(とうふひゃくちん)」。いったいどんな内容だったのだろうか…? 今回は「豆腐百珍(とうふひゃくちん)」に関する雑学をご紹介していこう!
【歴史雑学】江戸時代に「豆腐百珍」という料理本が刊行され、空前の豆腐ブームになった
【雑学解説】本当に100種類の豆腐料理がまとめられた料理本
豆腐百珍という名前どおり、本当に100種類の豆腐料理がのせられている。およその作り方を現代に再現している方もいるが、なかなか手間のかかる料理法も多い。
料理方法はまず大まかに6つに分類されている。
- 尋常品(じんじょうひん)… 家庭でよく料理される方法
- 通品… 一般的によく販売されているもの
- 佳品… 見た目、味ともに優れた料理法
- 奇品… その名の通り一風変わった料理法
- 妙品… 奇品よりさらに見た目や模様がこっている料理法
- 絶品… 豆腐の真の味を引き出した絶妙な調和が味わえる料理法
例として、尋常品では「田楽」や「自家製がんもどき」、通品ではよく市販されている「焼き豆腐」や「おぼろ豆腐」がある。佳品には酒で煮たウニを塗って焼いた「雲丹田楽」など手間のかかる料理法があった。
なお、一風変わった奇品なら現代でもダイエット麺でとおる「とうふ麺」があるので驚きだ。妙品には上質の茶で煮たてた「茶とうふ」や、かつお出汁で朝から夕方まで煮続ける「煮抜きとうふ」。
気になる絶品には、なんと現代でいう湯豆腐にあたる「湯やっこ」、とうふをところてんのように突き出してうどんのように食べる「真のうどんとうふ」など。絶品には意外とシンプルな料理法がのっており、豆腐の奥深さがうかがえる。
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【追加雑学①】豆腐が庶民の口に入るようになったのは江戸時代からだった
豆腐百珍がこれほど流行した背景には、江戸時代になってようやく豆腐が食べられるようになった庶民の喜びがある。
江戸といえば豆腐売り。「棒手振り(ぼてふり)」という行商人が豆腐を担いで売り歩くのが風物詩なのだが、それまで豆腐は高級品だったのだ。
大豆を使って丁寧に固めた豆腐は寺院の精進料理としての歴史が古かったものの、傷みやすく貴重品だったので、庶民が口にできるようになったのは江戸後期からといわれている。今では安い豆腐だが、食べられるようになったときはみんな嬉しかったのだろう。
現在の一丁の約4倍もある特大サイズの豆腐が売り歩かれていたこともあり、さまざまな料理法が書かれた豆腐百珍は夢のような本だったのだ。
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【追加雑学②】「豆腐百珍」のおかげで料理本が続々登場
昔は本が大量生産できなかったこともあり、料理本という概念がまったくなかった。印刷技術が向上し、豊かな食文化が育った江戸時代だからこそ、豆腐百珍は誕生したのだ。
それまで料理方法をまとめた専門誌というジャンルはなかったのだが、豆腐百珍は一躍ベストセラーに! 豆腐料理ブームがおきるほど影響があったらしい。
あまりに好評だったので、翌年には「豆腐百珍 続編」「余禄」が発行され、最終的に豆腐料理の数は278品にもおよんだという。さらに「卵百珍」「鯛百珍」「甘藷(いも)百珍」といった類似本が続々と登場。いわゆる料理本の基礎を築いた。
雑学まとめ
「豆腐百珍(とうふひゃくちん)」についての雑学、いかがだっただろうか。お財布が寂しいときに助かる豆腐だが、江戸時代以前は庶民にとって高嶺の花。食べられるようになったのが嬉しくて料理本だしちゃった! という人々の喜びが伝わってくる。
日本は世界的にみても料理本が多いようで、その元祖が豆腐百珍といえるだろう。レシピを現代語に訳したものや再現している人の写真を見てみると、どれも食べてみたくなる。
真の味を引き出す絶妙な「絶品」を味わってみたい方は、まずは一番簡単な「湯豆腐」からチャレンジしてみよう。