戦国時代の日本にキリスト教を伝えた宣教師、フランシスコ・ザビエル。その功績からカトリック教会では聖人と讃えられ、今なお多くのキリスト教徒から敬われる人物だ。
そんなザビエルさん、とっても偉い人だとはわかっているのだけど…小学生にとってはネタにされる格好の餌食である。理由はそう、あの髪型のせいだ。
歴史の授業で出てきたときには「うわ! ハゲや!」と、みんなが口を揃えて言う。ついでに落書きもする。数十年後の自分の姿とは知りもせず(※個人の意見です)、誰もがハゲハゲとバカにしていたよなあ…。
今回の雑学は、そんなザビエルの髪型についてである。みんながハゲだと思っていたあの髪型は、実はハゲではないというのだ。
…いや、ハゲてるでしょ絶対! あれがハゲじゃないって…ならなんだっていうんだ…?
【面白い雑学】ザビエルの髪型は聖職者のヘアスタイルでした
【雑学解説】ザビエルの髪型は頭頂部を剃る「トンスラ」
鉢巻のようにグルリと横の髪の毛を残し、頭頂部だけを剃ったザビエルの髪型は、彼が生きた当時のカトリック教会修道士の定番ヘアスタイルで、その名を「トンスラ」という。語源は古典ラテン語で"髪の毛を剃る"を意味する「トーンスーラ」だ。
…定番ってことはみんなハゲ? なんで?
…と思うところ。6世紀イギリスの聖職者ベーダ・ヴェネラビリスは、自著『教会史』にてその理由を「世間と離別するため」と述べている。
トンスラの慣習が生まれた中世初期のヨーロッパ人男性の髪型は、長髪が一般的。そういった一般層との差別化のため、聖職者はあの髪型をするようになったのだ。
要は聖職者である自覚をもつため、あえて変な髪型にしているのである。お坊さんが丸刈りにするようなものと思えばわかりやすい。…トンスラのほうがだいぶ勇気いるけど。
トンスラは当初、「俺、聖職者だし!」と自発的にやるものだった。しかし13世紀を境に聖職者はこの髪型を強制されるようになっていく…。神に仕える者はもれなくハゲ。
数人やりだすと、「あの人たちはやってるのに君はやらないのか!」みたいになっていくよね。中世の聖職者さんたち…ご愁傷様です。
ちなみに見習い修道士が剃るのは小さな円で良かったとか。それ、あんまり緩和されてない気がするぞ…。
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ザビエルの髪型「トンスラ」は「キリストのいばらの冠」を模している?
ザビエルの髪型「トンスラ」は単に変な髪型というだけでなく、その形状にもちゃんと意味がある。どちらが正しいかははっきりしていないが、以下の2種類の説が挙げられているぞ。
- イエス・キリストが十字架に磔にされたときに、頭に被せられたいばらの冠を模している
- 初代ローマ教皇・ペテロが説教をしているときに、キリスト教を認めない人たちによって無理矢理あの髪型にされた
このうちペテロの説は13世紀イタリアの大司教ヤコブス・デ・ウォラギネの著書『黄金伝説』のなかにも記されており、そういう意味では信憑性が高い。
なるほど。でも…これって、どっちにしても苦い思い出じゃない? ペテロさんのやつとか、普通に陰湿ないじめだし…。
トンスラには「この悔しい気持ちを忘れてはならない」みたいな戒めの意味があるのかもしれない。
【追加雑学①】「そもそもザビエルは頭頂部を剃っていなかった」説も
ザビエルの髪型がただのハゲだとわかったところで、さらに驚かされ説もある。「そもそもザビエルは頭頂部を剃っていなかった」というものだ。…本当はハゲてるくせにトンスラと言い張ってたとか? ということではない。
日本で有名なトンスラ姿のザビエルの肖像画は、ザビエルの死から80年ほど後に日本人画家が描いたもの。これはモデルとして持ち込まれた銅版画を見ながら描いたとされており、写真のように正確な情報があったわけではない。
つまりほぼ想像で描かれたようなものである。極めつけに、ザビエルが属していたイエズス会では、聖職者がトンスラにする習慣もなかったというぞ。
こういった点を踏まえ、ザビエルは後世の者によってハゲの汚名を着せられている可能性がかなり高いのだ。
実際、ヨーロッパ各地に残されている肖像画では、むしろトンスラになっているもののほうが少ないぐらいである。というか、かなりイケメンに描かれた肖像画もある。
#ザビエル さん独特のあの髪型は #トンスラ と呼ばれ、十字架上のイエスが被った茨の冠を模したもの。ところがザビエルが属した #イエズス会 にトンスラの習慣はなく、実際のザビエルは違ったのではと言われています。有名な肖像画はザビエルの死後に描かれた想像によるものです。#キリスト教豆知識 pic.twitter.com/O75hCfzgFa
— 寝屋川キリスト教会【MB】 (@neyagawach) December 3, 2018
日本でも、大分県にある「フランシスコ・ザビエル像」にはしっかりと頭頂部の髪が生えている。
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【追加雑学②】ザビエルの右腕は死後60年経っても腐敗しなかった!
もうひとつ、ザビエルの驚きのエピソードを紹介しよう。「ザビエルの右腕は死後60年経っても腐敗しなかった」という話があるのだ。
キリスト教には「生きているときに信心深かった人は、神様から選ばれて聖人となり、さらに死後に不朽体になる」という考え方がある。
不朽体の条件は…
- 腐敗しない
- 微香が漂う
- 体の一部から出血
- 関節が硬直しない
というもので、なんとザビエルの右腕がこれに該当したのだという。
ザビエルの右腕は死後60年以上が経過してから切断された。通常は60年も経っていれば、腐敗して血も乾燥しているはずだが…ザビエルに関しては、切断した腕から赤い血が滴り落ちてきたのである!
この出血から遺体は不朽体と見なされ、ザビエルは死してなお、神様から選ばれた聖人であることを証明してみせたのだ。伊達にハゲてはいない。いや、ハゲてないんだけどさ。
ちなみにザビエルの死後、1554年にイギリスのセント・ポール大聖堂にて拝観が行われた際には、足の指を食いちぎって持ち去る参列者もいたのだとか。指は無事返却されたというが、なんか死んでからいろいろこねくり回されて可哀想に思えてきた…。
ザビエルの右腕は現在、イタリアのジェズ教会に安置されている。以下の動画では、教会の様子はもちろん、右腕もバッチリ映されているぞ!
イタリア旅行に行く予定がある人は立ち寄ってみるのもいいだろう。
「ザビエルの髪型」の雑学まとめ
今回は、「ザビエルの髪型はハゲではない」という雑学をご紹介した。
ザビエルはハゲではなく「トンスラ」という髪型だった。しかもトンスラでさえなく、普通の髪型だった可能性がかなり高い!
聖人であるザビエルの遺体は、接した人が苦しみから解放されるなど、さまざまな奇跡を起こしている。不朽体の右腕に近づけば、なにかご利益があるかも…?
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