ラジウムは、1898年に発見された。発見者は、「キュリー夫人」という呼び名で有名なマリー・キュリーと、その夫ピエール・キュリーの2人である。
キュリー夫妻は、ウランを含む鉱石から不純物を取り除き、ポロニウムとラジウムという2つの元素を発見したのだ。
ラジウムには、放射能がある。「放射能」と聞くと、よくわからないけれども危険なもの、という印象がある。強い放射線にさらされると、脱毛や皮下出血・白血球の減少など、人体に悪影響があると聞いたからだ。
しかし、それは放射能の研究が進んだ現在だからいえることなのだ。なにしろ、放射能が発見されたばかりのアメリカでは、放射線を放出する「ラジウム」を万能薬としていたというのである。
現在では取り扱いに注意が必要なラジウムが、万能薬として使用されていたとは…! 今回は、この驚きの雑学について調べてみた。
【人体雑学】アメリカではかつてラジウムが万能薬だった
【雑学解説】ラジウムは「夢の新薬」と言われた
ラジウムが放射線を放出していることは、当初から発見されていた。そして、その放射線こそがラジウムが万能薬とされた理由なのだ。
放射線は細胞を破壊する。そのため、皮膚疾患や悪性腫瘍を治療できる可能性があるとされたのである。
ラジウムはがん治療に役立つというキュリー夫妻の発表に、多くの病院がラジウム治療を始めた。
その間にもラジウムの人気は高まっていき、ラジウムを配合して長寿や強壮をうたった商品が続々と登場した。
しかし、そんなラジウム人気も長くは続かなかった。1920年代から、徐々にラジウムが人体に悪影響を与えることが解明され始めたのだ。
発見者のマリーはそれを否定していたが、自身の体調も徐々に悪化していた。そして、1934年に再生不良性貧血でこの世を去ったのである。
暗闇で青白く発光する性質があるラジウム。その神秘的な光も、ラジウムを万能薬と思わせるのに一役かっていたのかもしれない。
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【追加雑学①】ラジウムと放射能の関係性は?「放射線を発する能力」のことを「放射能」という
さて、ラジウムが万能薬とされた理由は、「放射線が、がん治療に役立つ」とされていたからだ。しかし、この「放射線」・「放射能」・「放射性物質」の違いをご存知だろうか。
似ているだけに混同してしまいそうなこの3つ。当然それぞれ違うものである。
話は変わるが、懐中電灯を思い浮かべてほしい。懐中電灯は光を発する道具である。そして、光を発する能力をもっているともいえる。
放射線・放射能・放射性物質もこの関係と同じなのだ。
ラジウムという放射性物質がある。ラジウムは放射線を発する物資である。そして、放射線を発する能力をもっている。
つまり、「放射線を発する能力」のことを「放射能」というのだ。
放射能はBq(ベクレル)、放射線による影響がどれだけあるかはSv(シーベルト)という単位で、それぞれ測ることができる。
似たような言葉だが、意味を取り違えないよう注意が必要である。
【追加雑学②】ラジウム226の放射能は1,600年で半減する
まず、ラジウムの後ろに突如現れた「226」について説明しよう。実は、天然に存在するラジウムには4種類ある。
ラジウム223・ラジウム224・ラジウム226・ラジウム228の4種類だ。これらは「同位体」と呼ばれ、同一の原子番号をもつが中性子数が違うため呼び分けられている。
キュリー夫妻が発見したのはラジウム226であるため、ここではラジウム226に注目していく!
放射性物質は常に放射線を放出しているが、時間の経過とともに放出しなくなる。ある物質の放射能が元の半分になるまでの時間を「半減期」という。
半減期は放射性物質によって異なる。たとえば、ナトリウム24の半減期は15時間なので、15時間後の放射能は当初の1/2となる。30時間後には1/4、45時間後には1/8…と放射能が減っていくのだ。
2日で1/8になるならばそれほどの害でもないように感じるかもしれない。しかし、物質によっては半減期がとんでもなく長いものもあるのだ。
ラジウム226の半減期は1,600年、トリウム232にいたっては半減するのに141億年もかかる。
私達の子孫の時代までに半減しないどころか、141億年となれば地球の存続すら危ういのではないだろうか。
雑学まとめ
今回の雑学で分かったように、ラジウムは本当に万能薬として販売されていた。それどころか、食べ物などに配合して誰でも気軽に経口摂取していたのである。
放射性物質が体内に入ると排出されることなく蓄積され、体内から細胞を破壊し続ける。恐ろしい話である。
放射能と元素の発見という素晴らしい功績によって、ノーベル賞の物理学賞と化学賞を受賞しているキュリー夫妻。新しい発見がどれほど難しいか、また「知らない」ということがいかに恐ろしいか、教訓になる雑学でもあったのではないだろうか。