「そんなこといつ言った? 何時何分何秒地球が何回まわったとき?」
子どもが言い逃れをするときの決めゼリフ…。懐かしいよね。
と、今でこそちょっとイラっとされるぐらいで済むこのセリフだけど、大昔、天動説が信じられていたころにこんなことを言ったら、「いや…地球回ってねーし」とひんしゅくものである。
そう、昔は天動説が信じられていて、今は地動説が当たり前になった。これは小学生でも知っていることだが、具体的にいつから天動説でいつから地動説なのか、知らない人って多いんじゃない? 実はけっこう最近まで、天動説が信じられていたりして…。
今回はそんな天動説・地動説の歴史に関する雑学に迫るぞ!
【歴史雑学】天動説と地動説の歴史とは?
【雑学解説】大航海時代の訪れにより、1000年以上信じられてきた天動説がくつがえる
まず、天動説と地動説について、それぞれの概念をおさらいしておこう。
太陽が東から登って西へ沈むように、空に輝く星々は刻一刻と動き続けている。この現象がどのようにして起こっているかを考えたとき、はるか昔の人々は以下のふたつの説を挙げた。
- 天動説…地球が宇宙の中心にあり、惑星が周りをグルグル周っている
- 地動説…太陽が宇宙の中心にあり、地球を含む惑星がその周りをグルグル周っている
それぞれの成り立ちを以下より辿ってみよう。
天動説
天動説では、地球は公転はおろか自転もせず、完全に固定された状態だ。単純に地球以外の星が地球の周りを回っているから動いて見えるという考え方である。
地球に住んでいても地球が回っていることなんて体感できないし、科学の発展していない太古の時代では、「見た感じ空が動いてるじゃん」というこの考え方はごく自然なもの。
紀元前からさまざまな思想家が唱えてきた天動説を研究し、初めて実用レベルに体系化したのが、2世紀ローマの学者・プトレマイオスだった。
ここから1000年以上に渡って、天動説は根拠ある真実として支持されていくのだ。地球が球体だという概念もないので、地図も以下の通り。
大航海時代前のヨーロッパ人の地図www
古代ローマのプトレマイオスの地図信じてたとか遅れすぎだろwww
いったいアフリカ大陸から伸びてるやつは何なんだろう pic.twitter.com/0MXZKTINBA
— Histrace 世界史ネタbot (@neta_Sekaishi) July 29, 2020
地動説
太陽系のあらゆる惑星が自転と公転をしており、太陽を中心にグルグル周っているというのが地動説。天体望遠鏡などで星の動きを詳細に観測できるようになった今では、常識となっている説だ。
地動説が唱えられるようになったきっかけは、15世紀半ばから始まった大航海時代にあった。
この時代まで人々はたしかな航海術をもたず、船で行き来できるのは陸の見える近海だけだった。それが方位磁石の登場により、空に浮かぶ星を目印にすることで、人々は陸の見えない大海原に出ることができるようになったのだ。
しかし、その際に利用する星図は天動説に基づいて作られたもので、実際の星の位置とズレが生じることが問題となった。
また1年の計算方法として古来から使われていたユリウス暦も天動説の星の動きから作られたもので、これも長らく使われていくうちに、実際の星の位置と10日ほどのズレが発生していることが問題視されていた。
大航海時代を境にこういった問題点が浮き彫りになりはじめ、多くの学者たちが熱心に天体を研究するようになった。その流れから、16世紀ポーランドのプトレマイオスという学者が、地動説を提唱するにいたるのだ。
【追加雑学①】プトレマイオスが唱えた地動説とは
プトレマイオスは、地動説に基づいて1年を365.2425日と考えると、1年経って同じ位置に戻ってくるはずの星の位置がズレないとし、この説の根拠を示した。
これを機に1年の計算方法は地動説基準に見直され、1582年より始まったグレゴリオ暦が現代まで続いている。ちなみに以前使われていたユリウス暦は1年を365.25日としていた。
ていうかそんな誤差を計算できちゃうプトレマイオスさんやばすぎ…。
このほかにもプトレマイオスは、火星の輝き方にも注目した。火星は観るタイミングによって、地球との位置関係から明るさが大きく異なる。
これを地動説で考えると、明るくなったときは地球に火星が近づいたとき、暗くなったときは地球から火星が離れているときと考えられる。しかし天動説だと、地球を中心に周る火星との距離は常に一定だ。
以下のツイートの図で火星と地球の距離を見比べてみるとわかりやすい。
https://twitter.com/Sakura_Saku1218/status/1229853360238383105
うん、たしかに天動説の軌道なら、地球から見た火星が極端に明るくなったり、暗くなったりはしないはず。当時は地動説の概念がないのに、こんな発想どこから思い浮かぶんだよ…。プトレマイオスの頭のなか覗いてみたい。
【追加雑学②】定着するのに300年以上かかった地動説
こんなに緻密な計算がされたうえ、新しい暦としても採用された地動説だが、定着したのは提唱されてから300年以上あとの18世紀ごろの話である。
さすがに1000年以上信じられてきたとあって、天動説はしぶとく、矛盾点を指摘して人々を納得させるのは容易ではなかった。みんなが口をそろえて言った地動説への反論は…
- 地球が動いてるなら、石を真上に投げて同じところに落ちてくるわけないよね?
- いやいや…地球が動いてたら、月が取り残されちゃうでしょ
という、引力という言葉を知らない時代ならではのもの。これらの理由が当時の科学では証明できなかったわけだ。
ガリレオやニュートンの発見で地動説は確信に近づく
まずは17世紀イタリアの天文学者ガリレオ・ガリレイ。彼は独自に天体望遠鏡を開発し、木星を中心にしてグルグルと周る4つの衛星があることを発見した。
木星がきれいに見えたので望遠レンズ付けて写真撮ってみた。
手持ちでガリレオ衛星撮れた! pic.twitter.com/UpuTvbfoIA— kataoka hiroshi (@ktokh) August 2, 2020
これを根拠に、地球と月がこの衛星と同じ関係性なら、取り残されちゃうこともないでしょ…ということを説明したわけだ。
また、コペルニクスが火星の明るさの変化に着目したように、ガリレオは観るタイミングによって変わる金星の大きさや満ち欠けにも着目した。
金星の満ち欠けに最初に気づいたのは、ガリレオ・ガリレイ。いまからおよそ400年も前のこと。天体望遠鏡が天文学を急速に発展させてくれました。彼のスケッチが残っています。 pic.twitter.com/JvSYISRLLn
— 縣秀彦 (@agata_naoj) February 17, 2017
極めつけは、リンゴが木から落ちるのを見てひらめいたという、アイザック・ニュートンの万有引力の法則。この法則によって真上に投げた石が同じ場所に落ちてくる理由も、月が動く地球に取り残されない理由も完全に証明されることになる。
このように科学が解明されていくにつれ、地動説は確信に近づいていったわけだ。
【追加雑学③】地動説が受け入れられなかったことには宗教的な理由も…
万有引力の法則が提唱されていない時代に、地動説が正しいと唱えるのはたしかに無理があるのかもしれない。しかしそれ以上にこの説が受け入れられなかった背景には、宗教的な理由があった。
というのも、そもそも科学的かどうかより、宗教思想として天動説が人々に根付いていたからだ。
外部から作用を受けなければ、物体の動きは一定に保たれる…という慣性の法則が当たり前の今でこそ、摩擦もなにもない宇宙空間で惑星が周り続けることも理解できる。
しかしそんな法則を知りもしない大昔の人たちは、惑星が周っている理由を神様の力だと信じた。
宇宙は神によって作られ、星々は神の力で周っている。そしてその円周運動の中心にあるのは、神の分身である人間の住む地球だという考え方だ。この思想はキリスト教でも正式に認められていたため、ヨーロッパの人たちのあいだでは強固なものだったのである。
地動説を唱える者は異端と見なされた
天動説を否定することは、当時としては神の教えを否定することだ。昔の人の宗教思想とは恐ろしいもので、それこそ地動説など唱えようものなら、異端者と見なされ、迫害を免れなかった。
実際、コペルニクスは迫害を恐れ、25年以上も地動説を発表しようかどうか迷っていたという。結局、悩んでいるあいだに「もう老い先短いな…」という歳になってしまったから、発表したわけだが…。
また、地動説をより確信に近付けようとしたガリレオは、異端裁判にかけられ投獄されている。有名な「それでも地球は回っている!」ってセリフも、今となっては当たり前すぎてまるで笑い話だ。
【追加雑学④】地動説を唱えている人は紀元前からいた
ここまで何度も触れてきたとおり、地動説は16世紀にコペルニクスが初めて提唱したというのが通説だ。
しかし実はコペルニクスが言い出すよりずーっと前の紀元前280年ごろ、古代ギリシャのアリスタルコスという天文学者が「地球は太陽の周りを周っているひとつの天体である」という、説を唱えたことがあるのだ!
当時の科学力から、どうやってその思想に行き着いたのか…。
ただこのアリスタルコスの説は、天動説を唱える人が多かったことや、2世紀になってプトレマイオスがそれを体系化したことで完全に忘れられてしまったのである。
天動説と地動説|雑学まとめ
今回の雑学では天動説と地動説の歴史を紹介した。
地球が回っているなんて、引力の概念がなければ「いや…回ってるわけないっしょ」となるのが普通だ。しかも宗教の考え方が強固な時代で、それが神の教えといわれれば、なおのことである。
私たちの周りには、まだまだ科学で証明しきれないことがたくさんある。当たり前だと思っていたあの事実が、数年後にはくつがえっていたなんてこともあるかもしれんないぞ!
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