電子記録媒体の技術の発達から、見かけることが少なくなったCD(コンパクト・ディスク)。しかし、電子化が進む現代でも、音楽の新譜はCDで販売されることも多い。
そんなCDの最大録音時間をご存じだろうか。そう、74分42秒だ。なぜ、こんな中途半端な時間になったかというと、これにはかの有名な作曲家、ベートーベンの交響曲「第九」が関係している。
今回は知っていると少しかっこいい(かもしれない)、知的な雑学をご紹介しよう。
【生活雑学】CDの最大録音時間の74分42秒である理由
【雑学解説】フィリップスVSソニー。CDの録音時間が決まるまで
CDはドイツの家電メーカー・フィリップスと日本のオーディオメーカー・ソニーとの共同開発によって作られたが、ここで、CDの最大録音時間戦争が勃発する。
開発当時、フィリップスはこれから来るであろう、カーオーディオの未来を見込んで、当時カセット式であったカーオーディオの規格に合わせ、カセットテープの対角線の長さである11.5cmサイズでCDの作成を考えたが、これにソニーが対抗する。
11.5cmサイズでは録音できる時間は60分。これではクラシックの演奏時間を下回り、全ての演奏を1枚のCDに録音することができないため、もっと大きくするべきだと主張した。
実はこの「クラシック音楽を全編録音できるようにせよ」というのは、当時のソニーCEO大賀典雄氏の友人であり、世界的なクラシック指揮者であるヘルベルト・フォン・カラヤンからの助言であるといわれている。
この助言にのっとり、世界中の音楽の演奏時間を調べたところ最長だったのが、ドイツの巨匠、フルトヴェングラーが指揮をとったベートーベンの「交響曲第9番ニ長調」で74分32秒。さらに、録音時間が75分あれば、95%のクラシック音楽が全編録音できることがわかった。
世界的指揮者カラヤンの名前を出されたフィリップスはこれを認め、CDは12cm・収録時間74分42秒を規格として開発されることとなったのである。
ちなみに、カラヤンの演奏するベートーベン「第九」は66分だったらしい。これでは60分以上の録音時間を望むのも無理はない。
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【追加雑学①】CDの構造
CDの構造について理解している人はどのくらいいるだろうか。CDは直径12cmのポリカーボネートで作られた円盤に細かい“くぼみ”をつけ、音声やデータを記録している。
CDプレイヤーはこの“くぼみ”に赤外線レーザーをあて、反射した光の明暗でデジタル信号を読み取り、アナログ信号に変換して音声を出力している。
その昔、レコードプレイヤーではレコードの溝に針を落として音声を出力していたが、それが電子化されたようなものだ。
音声を記録するものをCD-DA、データを記録するものをCD-ROMなど、実は細かい分類があるのだが、現代ではフラッシュメモリーなどの存在によりCD-ROMなどの活躍の場は減ってきているため、現代で見かけるCDのほとんどはCD-DAと思っていいだろう。
当初、日本では音楽CDとして8cmサイズのシングルCDも多く出回っていたが、近年ではコスト面や防犯面の不安から8cmサイズは撤廃され、12cmサイズのマキシシングルCDが多く出回っている。
雑学まとめ
今回は、CDの最大録音時間についての雑学をご紹介した。
当初ベートーベンの「第九」を基準に設定された74分は、現代の技術の発展により、サイズを変えず、80分まで録音できるまでに至っている。
ベートーベンの世界的楽曲は、我々にも馴染みの深いCDの録音時間にも影響を与えていたのだ。