世の中には、見たことも聞いたこともないようなものがまだまだたくさんある。むしろそんなものばっかりかもしれない。
そこで今回は、特別天然記念物になっている植物の雑学だ。アイラトビカズラという植物なのだが、この名前自体はじめて聞いた。当然どんな姿・形なのかもわからん。そもそも特別天然記念物と聞いて、「トキ」しか思い浮かばなかった私だ。
私のように、「特別天然記念物=トキ」しか出てこない人のために、この雑学をお届けしよう。
【自然雑学】日本に三本しか存在しない特別天然記念物「アイラトビカズラ」
【雑学解説】熊本県山鹿市相良地区のアイラトビカズラは、国の特別天然記念物
もともと中国の長江流域が原産といわれるアイラトビカズラ。まるで木の枝のようなつると、そこから垂れ下がるように紫色の大ぶりな花を付ける、つる性植物だ。
「つる」というと細く伸びたものが、植木鉢の支柱などをつたっているイメージだが、アイラトビカズラのつるは、もはや「つる」とはいえないレベル。とにかくつるなのに太い。
中にはつるの幹囲が50cmを超えるものもあるという。しかもつるなのに色も茶色なので、ちょっと細めの木の幹のようだ。
中国から伝わり日本国内でも多く見られていたが、のちに熊本の相良地区の1本以外は絶滅したとされていた。
当初はこの1本しか確認されていなかったため、1940年(昭和15年)に国の天然記念物に、そして1952年(昭和51年)に特別天然記念物になった。この相良地区のアイラトビカズラは樹齢1000年ともいわれている。
しかし2000年に長崎の九十九島にある無人島の時計(とこい)島で、さらに2010年に熊本県天草市の倉岳町でも自生するアイラトビカズラが発見され、現在日本には3本のアイラトビカズラが存在している。
実際のアイラトビカズラの様子を紹介しよう。
いや、すごいね、花のボリューム。これは圧巻だ。2~3コの花がぶら下がっているなら、おそらくかわいらしいのだろうが、ここまで花が集まると、正直ちょっと怖い。
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【追加雑学①】アイラトビカズラは伝説の花?
現在、相良地区にあるアイラトビカズラは、人間の手で環境を整えて管理されている。そのため今は毎年花が咲くらしいのだが、本来は数年に1度しか花が咲かないという。
何年も花が咲かないことから、仏教の世界で言い伝えられている、数千年に一度しか咲かない優曇華(うどんげ)とも呼ばれる。
仏教でいう優曇華は、数千年に一度咲き、咲いたときには金輪王や如来が現れるとも伝えられる。そしてそれになぞらえたアイラトビカズラもまた、開花すると国家的事変が起こるといわれ、実際1929年(昭和4年)に開花したときには、その翌年に満州事変が起こっている。
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【追加雑学②】アイラトビカズラの成長の早さを生かした緑化計画
アイラトビカズラは、びっくりするほど成長が早い。地植えの場合、その成長が2~3年で30m前後といわれている。プランターに植えて針金などを設置した場合でも、1年で7mほど伸びるらしい。
そんな成長の早さを生かして、ビルなどの壁面緑化にアイラトビカズラを使うところが増えているという。壁面緑化には、外壁の温度を下げてヒートアイランド現象を緩和させたり、外観を印象的に見せたりするなどの効果がある。
アイラトビカズラ以外のつる性の植物でも、針金などにつるを絡ませて葉を茂らせ、緑を増やすことはできるのだが、どうしてもあまり高い壁には向かなかった。そこまで成長できないのだ。
対してアイラトビカズラはとにかく成長が早く、つるが絡まるものさえあればどんどん伸びていくので、20~30mの中高層建造物に対しても壁を覆うことが可能になったのだ。
雑学まとめ
なかなか普段はお目にかかれない、特別天然記念物のアイラトビカズラについての雑学をご紹介した。これで、「特別天然記念物は?」と聞かれたら、トキ以外にも答えられるものが1つ増えたではないか。
アイラトビカズラがあるのは熊本と長崎。花の見頃は4月下旬から5月初旬のゴールデンウィークあたりらしいので、九州地方に旅行する際には実際に見てみるのもおすすめだ。
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