仏教において閻魔大王は、死後の行き先を決める裁判官とされている。死者が極楽へ行くべきか、地獄へ行くべきかを、その人生での善行や悪行を元に決めるのが仕事である。
その役割自体は多くの人が知っているだろうが、彼がどうしてこのような仕事に就いたのかは知らない人も多いだろう。
「え? 元からそういう設定の人なんじゃないの?」といいたくなるが、閻魔大王が死後の行き先を司るようになったことにも、きちんと理由がある。今回はそんな、知っているようで知らない閻魔大王に関する雑学を紹介しよう。
【歴史雑学】閻魔大王は死後の世界を最初に発見した人といわれている
【雑学解説】住み分けをするために今の仕事に
今となれば閻魔大王は仏教の神様というイメージが強いが、大本をたどればヒンドゥー教の神様だ。ヒンドゥー教での閻魔大王の名前は「ヤマ」といい、妹の「ヤミー」と共に人間の祖となったといわれている。
ヒンドゥー教の聖典「リグ・ヴェーダ」では、ヤマ(閻魔)は最初に死んだ人間となっている。つまり彼は死後の世界を最初に発見した人間だった。そしてそこから、死後の世界を管理する役目を担うようになったのだ。
閻魔大王といえば地獄のイメージがあるが、ヤマが最初に発見した死後の世界は、いわゆる天国だった。
最初は死者も少なかったので、天国で平和に暮らしていたが、死者が増えるにつれて、悪人も天国に入ってくるようになる。これでは平和なはずの天国の秩序が乱れてしまう…。
そんな天国の状況を目の当たりにしたヤマは、悪人と善人の住み分けをするために地獄を作ったのだ。そして、「誰が天国に行き、誰が地獄に行くべきか」を決める人が必要になり、ヤマがその仕事を請け負うことになった。
つまり閻魔大王は最初は天国の管理者だったが、さまざまな死者が増えることにより、地獄での仕事に転職したということになる。
現代では恐ろしいイメージをもってしまいがちな閻魔大王。しかし彼は「良い人が安心して天国で過ごせるように、悪い人が地獄で罰を受けるように」と、自ら人々から恐れられる仕事をしているのだ。
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【追加雑学】なぜ閻魔大王には嘘が通用しないの?
「嘘をつくと閻魔大王に舌を引っこ抜かれる」という話を聞いたことはないだろうか? 閻魔大王には、どんな嘘もお見通しである。しかし、どうして嘘が通用しないのか。
それは閻魔大王が死者の裁判をするとき、「浄玻璃鏡(じょうはりのかがみ)」という道具を使うからだ。
この浄玻璃鏡は、死者が生前に行ったことを映し出すことができる。人の悪口をいったり、テストでカンニングをしたり…どんな些細なこともわかってしまう、ちょっと恥ずかしい道具である。
またこの鏡は死者本人の人生だけでなく、死者の人生が他人にどんな影響を及ぼしたのか、その他人がどう思っていたかということも分かる。
自分の人生が映し出されるのは怖い。そのうえ他人からどう思われていたかというのは、知りたいような…知りたくないような…。
浄玻璃鏡にヤバイ過去が映し出されないためにも、胸を張れるような生き方を心がけたいところだ…。
雑学まとめ
閻魔大王についての雑学をご紹介してきた。閻魔大王は、もともとは最初に死んだ人間であり、その先で見つけた死後の世界の管理人だった。しかし死後の世界にも住み分けが必要となったことから地獄を作り、死者の行き先を決める「閻魔大王」になったのだ。
天国の秩序を守るため、きっちりと死後の行き先を決めなければならない…だから閻魔大王は厳しい裁判を行う。
恐ろしいというより、「めちゃくちゃ真面目な人」ではないか!
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