歯がなくなっても食べ物が食べられようにするアイテム…それが入れ歯だ。使っていないという人でも、1度は入れ歯を見たことがあるだろう。
今では医療技術も進歩して、見た目が自分の歯と見分けつかないくらい自然な入れ歯ができているが、昔の入れ歯は木でできていたことを知っているだろうか? 木の入れ歯…ちょっと想像がつかない。
そもそも入れ歯って日本だけだったんだろうか? 果たして、いつから使われていたんだろうか? 今回は木でできた入れ歯に関する雑学を紹介していくぞ。
【人体雑学】昔の入れ歯は木でできていた
【雑学解説】日本の入れ歯は室町時代から始まった
日本で入れ歯が登場したのは今からはるか昔、室町時代にさかのぼる。この当時の入れ歯は「木床義歯(もくしょうぎし)」と呼ばれており、全てが木で作られていたのだ。
木でできた入れ歯なんて、口の中でガタガタして外れちゃうんじゃないの? と思う人も多いだろう。その辺の対策もしてある。
なんと今でいう入れ歯安定剤のようなものまであったのだ。さすが日本人、きめ細かいところまで考えている。昔から日本人は、細かいところにまで気配りをしていたのだな~と、感心してしまう。
ちなみに、当時の入れ歯安定剤は、日本古来から伝わる和紙。この和紙を厚めにカットして水に濡らし、木製の入れ歯と歯肉の間に装着するだけというシンプルな使い方である。和紙がふやけて入れ歯を安定させてくれるだけでなく、入れ歯装着の痛みも和らげてくれる実用的な方法だった。
もし和紙がなかったら、痛くてたまらなかっただろうな…。
木製で硬いという以外は、実に素晴らしい出来栄えの入れ歯。なんと現代の入れ歯とほぼ同じ機能をもっていた。当時の木床義歯は左右4本ずつ、女性用のものは当時の習慣を取り入れてお歯黒まで塗ってあったというから大したものだ。
ちなみにこの当時、世界で使われていた入れ歯は外見重視で食べ物を噛むことがほぼできなかったという。その点、日本は実用性抜群で見た目も悪くない。
当時から日本の技術が高かったことが想像できる。実に素晴らしい。
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【追加雑学①】入れ歯作り専門の入れ歯師がいた
室町時代から入れ歯は存在していたが、当時の入れ歯はとにかく高価で身分の高い人しか作れなかった。一般庶民に入れ歯が普及するようになったのは、江戸時代中期以降。
この頃になると、入れ歯を専門に作る「入れ歯師」が登場した。実はこの入れ歯師、もともとは仏師といって仏像作りの職人だ。
始めは軽い気持ちで始めたが、びっくりするほど需要が増えていき、ついには入れ歯作りの専門になったというわけだ。言い方は悪いが、より儲けられる仕事を選んだということである。
さてこの入れ歯師、もともと仏像を作っていたのだから、医学的な知識は全くない。そのため江戸時代には、今でいう歯医者の役割をもつ「口中医」もいたのだとか。口中医と入れ歯師、なんだかややこしい。
口中医は江戸時代の一般庶民からすれば費用が高く、気軽に利用できるような存在ではなかった。そんな一般庶民のヒーロー的存在が、入れ歯師だったというわけだ。
当時かなり需要があったということは…裏を返せば、それだけ歯のトラブルがあったのかとびっくりしてしまう。江戸時代の人々も歯磨き習慣はあったらしいが、歯磨きをしても歯が抜けることのほうが多かったということなのだろうか…。
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【追加雑学②】明治に入り、木製の入れ歯からゴム製へ
日本が木製の入れ歯からゴム製の入れ歯へと進化していったのは、明治7年(1874年)。鎖国をやめて20年ほどたったころで、横浜に来航開業したアメリカ人歯科医師がゴム製の入れ歯を紹介したのが始まりといわれている。
ちなみにこのころ、世界ではとっくにゴム製の入れ歯が使われていた。もしもアメリカ人医師が来航開業してくれなかったら、ひょっとして今でも日本だけ木製の入れ歯を使っていた可能性もある。そう思うと、アメリカ人医師に感謝の気持ちが湧いてくる。
なにはともあれ、日本にもゴム製の入れ歯が無事広まっていった。それにともない、今まで使われていた木床義歯は「皇国義歯」という名称に変わり、少しずつ姿を消していくことになる。
医術の進歩のためとはいえ、木床義歯が消えていくのは寂しい気がするが、仕方がないことなのだろう…。
もっとも、木床義歯と話すことができたのであれば、「今まで働いてきたから、ゆっくり休ませてくれ」と言っていた可能性もある。そうだとすれば、木床義歯の願いはやっと、叶えられたというわけである。全部、妄想だけど…。
【追加雑学③】人類と入れ歯の付き合いは紀元前から?
現在では入れ歯のお手入れも簡単になっているが、木製だったころは入れ歯のお手入れも大変だったといわれている。実際、海外で昔使われていた入れ歯は動物の歯を使っていたため、悪臭が酷かった。
海外の人々はこの悪臭を少しでも隠そうと、香水を強めにふりかけていた。するとどうなるか? 香水と入れ歯の臭いが混ざり合い、なんともいえない強烈な臭いになるのである。
香水の匂いは、自分ではなかなか気づかないものだ。この記事を読んでいて現在香水を使っているそこの君、周りの人が顔をしかめたらそれは香りが強すぎるということだ。十分注意してほしい。
話がそれた。
動物の歯や木を加工してみるなど、さまざまな進化を遂げてきた入れ歯だが、そもそもどこからその歴史は始まったのだろうか? 調べてみると、入れ歯と人類の歴史は長かった。
なんと紀元前5世紀頃の墓から、今でいうところの部分入れ歯が発掘されている。どうやらこんな大昔から、人類は虫歯や歯周病と付き合ってきたらしい。
紀元前5世紀頃に、部分入れ歯という発想があったことは驚きだ。どんな時代にも、アイディア豊富な人がいるということか。尊敬してしまう。
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【追加雑学④】アメリカの初代大統領の入れ歯は重さ1.3キロ
ここで世界に目を向けてみよう。海外で入れ歯を使っていた有名人として名前が挙がるのが、アメリカ初代大統領のジョージ・ワシントンである。
ワシントンは28歳という若さで入れ歯デビュー。大統領になったときには自分の歯が1本しかなく、それ以外は全て入れ歯。入れ歯を語るうえでは外すことができない重要人物である。
ワシントン大統領が使用していたという入れ歯が、これまたインパクト抜群だ。まず、使用していた入れ歯の重さが1.3キロ。
1.3キロ…。砂糖1袋以上の重さである。口の中に砂糖1袋。相当重かったに違いない。
その後も何個か入れ歯を作り、最後は象牙で作られた入れ歯になっていた。ところがこの象牙で作られた入れ歯には問題があった…。入れ歯をバネで結んでいたため、油断するとバネの反動でポコッと口の外へ飛び出してしまうのだ。
大統領が難しい話をしている最中に、入れ歯が飛び出したなんてなると威厳なんてあったもんじゃない。そのため、ワシントンは入れ歯が飛び出さないように、常に固く口を結んで過ごすようになった。その映像がこちらだ。
2分ごろに出てくるワシントンの口元に注目して欲しい。
しっかりと口元を結び、表情もどことなく緊張しているように見えないだろうか? 実際、ワシントンは油断すると飛び出てくる入れ歯のせいで晩年は怒りっぽくなっていたという。
常に入れ歯が飛び出ないように気を使っていたのだ。かなりのストレスが溜まっていたに違いない。それは怒りっぽくもなるだろう。
ワシントンは、口を開けないようにするため演説を避け、人に会うのも嫌がっていたという。よっぽど口を開けたくなかったのだな…。
雑学まとめ
入れ歯についての雑学、どうだっただろうか? まさか、木で歯を作っていたとは…。そして、入れ歯の歴史がこんなにおもしろいとは知らなかった…。
入れ歯は便利だが、やはり自分の歯がベストだ。いくら現代の入れ歯がお手入れ簡単になったとはいえ、できれば入れ歯のお世話にはなりたくないものだ。
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