「動物の冬眠」と聞くと読んで字のごとく、寒い冬を暖かい穴の中で眠って過ごす場面を思い浮かべる人が多いだろう。
特にクマのような大きい動物は、冬眠前に食いだめをして、冬の間はずーっと眠っているようなイメージだ。しかし、実際はずっと眠っているのではなく、起きてボケーっとしているのだという。
我々が休みの日にやってしまいがちな、「起きてはいるものの、ゴロゴロしていた」というようなニュアンスだろうか…。一冬越すレベルでそれが許されるのは、ある意味うらやましいかも…。
人間でも長く寝ていると疲れてしまう「寝疲れ」なんていうものがある。そういう点で、クマは合理的な冬眠をしているのかもしれない。
今回はそんなクマの冬眠についての雑学をご紹介しよう。そのハイスペックな身体の仕組みに驚くこと間違いなしだ!
【動物雑学】クマの冬眠は寝ているのではなくボケーっと過ごしている
【雑学解説】クマは冬眠中に出産できるぐらい栄養を蓄えられる
クマの冬眠は眠って過ごすのではなく、起きてボケーっとしているというが、起きているということはおなかが空くのではないだろうか? 人間も、どれだけ食いだめをしても、起きていればいずれは空腹を感じる。
また、喉が渇かないのか…おしっこやウンチはどうするのか…など、この他にも多くの疑問が浮かぶだろう。一体どのような仕組みになっているのかを見ていこう。
8月の終わりごろには冬支度開始
北海道のヒグマは、8月末ごろから寒い冬に備えて冬毛に生え変わる。そして秋になるとドングリや桑の実、山ブドウなどの木の実を一心不乱に食べ、毛皮の下にどんどん脂肪を貯めこむ。
このため込んだ脂肪を必要最小限のエネルギーに変えながら、冬眠の時期をボケーっとして過ごすのだ。
寝床づくり
寒くなってくるとお尻が入るぐらいの穴を掘り、そこにお尻をはめて温まりながら眠る。
自分で掘った穴にお尻をはめて寝るとは…なんとかわいい姿だろう! 「くまのプーさん」みたいな姿を想像してしまうが…野生のクマはそんなにのほほんとしていないか。
そして、雪が降るとお尻だけではなく、全身が入るように穴を増築・改装する。数時間掘り続けた穴は、まるで壁を塗ったような仕上がりになるのだとか。劇的ビフォーアフターさながらだ!
ちなみに、自分で穴を作らず、そのへんにある適当な穴を見つけてこもるクマもいる。クマ界にもとんだちゃっかり者がいたものだ。
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12月になったら
12月になると、クマザサの茎を噛みちぎって穴に積み上げ、冬眠用の布団を作る。それと同時に、これまた冬眠には欠かせないクマザサを食べるのだ。
クマザサには解毒・血液浄化作用があり、冬眠用に食べた高カロリー・高たんぱくのものが、腸内で発酵して悪臭を放つのを防いでくれるのだとか。頭いい!
穴にこもる直前、十分に食事をとったら最後に松やにを食べて、なんと肛門をふさいでしまう。冬眠中、トイレはどうしているのかと思っていたが、実は一切フンをしないのだ!
ちなみに、大量に食べたクマザサのおかげで、フンを出さなくても体内に毒素が溜まることはない。4か月間も冬眠するわけだから、人間でいえば危険なレベルの便秘である。しかしクマは大丈夫だというから、本当によくできた仕組みだ。
冬眠が明けると、アクの強い山菜や下痢に作用するミズバショウの根っこなどを食べて、たまっていたフンを強制的に排出。そしてクマザサをもう一度食べて体内の毒素を消す。クマは山の植物に関する知識をマスターしているのだ。
冬眠中に出産!
なんとクマは冬眠中に出産することもあるという! 出産経験のある人ならわかると思うが、妊娠・出産はとてつもなく体力を消費する。それを栄養補給ができない冬眠中に行うとは…。
しかもクマは基本的に夫婦別室で冬眠する。栄養補給もままならないなか、ひとりで出産してひとりで育てるなんて、どれほど過酷なことか…。
冬眠前にため込んだ脂肪を使い、4ヶ月間、授乳までするそうだ。それほどのエネルギーを蓄えられることに驚かされる。
そして冬眠が終わると、お母さんクマの体重は4分の3ほどになってしまう。エネルギーを蓄えられるといっても、やはり過酷には違いないようだ。
寒い冬が終わり、暖かくなった地上に冬眠明けのクマが出てきたときの動画を発見したぞ!
「あと5分寝かせて…」みたいな顔がかわいい。食欲と睡眠欲の間で揺れていたのかもしれない。
【追加雑学】クマの冬眠の研究が、人間の病気治療につながる!?
前述したとおり、クマが冬眠のために行っていることはなかなかにレベルが高い。冬眠中のクマの身体の仕組みはかなりハイスペックで、研究することで人間の病気治療のヒントになるという話もあるほどだ。
以下より注目されている点に触れていこう。
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なぜクマは動かなくても筋肉が減らないのか
哺乳類は食べ物を食べられないと、内臓や筋肉を分解して必要な栄養素を作り出す。絶食し続けると、筋肉からたんぱく質が流出し、筋肉が小さくなっていくのだ。人間でも、食べないダイエットは身体に悪いとよくいう。
しかし冬眠中のクマは、排出するはずの尿素を膀胱から再吸収して分解、そこから窒素やたんぱく質を作り出す…ということをやってのける! この機能により、クマは動かなくても筋肉が減らないのである。
なぜクマは冬眠明けも骨が丈夫なままなのか
哺乳類は骨に適切な負荷がかからないと、新陳代謝のバランスが崩れ、カルシウムがおしっこと一緒にどんどん流れ出してしまう。寝たきりの人や宇宙飛行士などは、こういった影響で骨がもろくなってしまうという。
クマも冬眠中は寝たきりなわけだが、おしっこをしないので、血中に溶けだしたカルシウムが流れださない。
つまり骨に負荷がかからず新陳代謝のバランスが崩れても、血中にカルシウムが留まるため、細胞が骨を作り続けられる。よって骨も弱くならないのだそうだ。
なぜ冬眠中のクマは水を飲まなくても平気なのか
冬眠前に蓄えた皮下脂肪は分解すると水と二酸化炭素になり、冬眠中のクマの1日に必要な水分量700mlを作り出すことができる。約4か月の間、事前に蓄えた脂肪だけですべてまかなえてしまうなんて…とってもエコだ!
このようなクマの冬眠の仕組みを研究することが、肥満や糖尿病、骨粗鬆症や筋肉萎縮などの病気治療につながると考えられている。なかには実際に実用化されている研究もあるぞ!
私たちが冬眠できるような身体になるときも、もしかするとくるかもしれない。
雑学まとめ
クマの冬眠についての雑学をご紹介してきた。クマは冬眠の4ヵ月間、無駄なエネルギーを消費しないようにただただじっとしている。本当に眠るときもだいたい浅い眠りだという。
一年の半分もボケーっとして過ごせるなんて、なんとうらやましいんだ…と思ったが、飲まず食わずで深い眠りにつくこともなく、何もしない4か月と聞くと一気に過酷に思えてくる。
その身一つで冬を越すクマさんをすごいと思うと同時に、人間でよかったなと思ったひとときだった。