生き物は、消化器官である胃をもっているのが当たり前だと思うかもしれない。しかし、コイは胃をもたない魚である。
胃がないと消化が大変だと考えるのが普通だろう。たしかに胃がないと消化能力は劣るのだが、そのせいでコイはものすごい勢いで食料を求め続けるのだ。
コイにはあまり恐ろしいイメージはないだろう。凶暴な魚というわけでなく、コイ同士で争うこともない。しかし、コイは国際的に恐れられる生物なのだ。
今回の雑学では、コイとそのほかの胃のない魚についてご紹介しよう。
【動物雑学】コイには胃がないので満腹感を感じない
【雑学解説】コイは胃がないせいで悪食といわれている
生物は胃をもっているのが普通である。生物は食べたものを胃で消化することで、効率的に栄養素を吸収することができる。
さらに、胃は食べ物を貯蔵する役割もある非常に重要な器官である。しかし、コイは胃をもたない「無胃魚」と呼ばれる種類の魚である。
コイは食道と腸が直接繋がっており、食べた物はすぐに腸に入ることになる。つまり満腹感を感じることがない。そのため、猛烈な勢いで目の前にあるものを食べ続ける。コイが何でも食べてしまう「悪食(あくじき)」と呼ばれるのは、満腹感を感じないことが原因である。
腸の入り口で多少消化液が分泌されることは分かっているが、そこまで強力ではないため、胃のある魚に比べると消化能力は低い。当然、栄養の吸収も良いとはいえないのだ。だからこそ、どんどん食べてどんどん排出していくのがコイという魚なのである。
下の動画は餌に群がるコイの様子だ。
腸に入る余裕があるのならいくらでも食べようとするし、目の前にあるものならどんなものでも飲み込んでしまうのだ。コイはそこまで大きな魚というイメージはないかもしれないが、海外には3メートルに達するパーカーホというコイもいる。
ここまで大きくなると、とんでもないものを飲み込んでしまいそうである。とはいえ、パーカーホは珍しい草食のコイなので、なんでも飲み込むわけではないのが救いだろう。
また、数が激減しているということで、手に負えないことが多いコイの仲間の中では、繫殖力は強くないようだ。
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【追加雑学①】コイは生態系を破壊する魚として恐れられている
コイは日本ではポピュラーな魚だ。中国から輸入された魚とされていたこともあったが、数百万年前の地層から化石も発見されている。そのため、現在は日本の在来種と考えられている。
しかし、コイは問題視されることが多い、外来生物以上に生態系を破壊する危険生物なのだ。
どんなものでも食べてしまう強烈な食欲に加え、大きくなるとコイの天敵はほとんどいなくなる。そのため、もともとコイが住んでいない水域にコイを放つと、周辺の生物を食べ尽くしてしまうことも考えられる。
その生命力は非常に強く、陸に上がってしまったとしても簡単には死なない。おまけに環境の変化に強く、汚れた水を好むうえに、低温にも強い非常にたくましい魚なのだ。
繁殖能力も高いため爆発的に増えるという。下の動画は、コイが大量発生した様子が映っている。
アメリカでは、コイの一種のコクレンやハクレンが増えて問題になっている。スペリオル湖・ミシガン湖・ヒューロン湖・エリー湖・オンタリオ湖の五大湖に、これらのコイが侵入する可能性が危惧されているのだ。
もし五大湖にコイが入り込んだ場合、固有の魚が絶滅してしまうかもしれないと恐れられているのである。
コイは、国際自然保護連合が決めた「世界の侵略的外来種ワースト100」の中に入っている。魚類は、ワースト100の中に8種が入っているが、コイはこの8種の中に名を連ねているのだ。
【追加雑学②】胃のない魚は他にもいる
コイのような無胃魚は珍しいと思われるかもしれないが、実際はそうではない。無胃魚はそれほど珍しくもないという。
身近な魚の中ではサンマ・イワシ・フグ・フナ・金魚などはすべて無胃魚である。無胃魚は胃がないため内容物が内臓に残りにくい。そのため、サンマの内臓は美味しいと紹介されることも多いのだ。
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無胃魚はもちろん食欲旺盛だが、すべてがコイのように危険生物として問題視されているわけではない。やはり、コイの生命力と繁殖力があるからこそ問題になるのだろう。
ちなみにフナや金魚は、コイの仲間である。金魚は侵略的外来種ワースト100に入れられているわけではないが、野生化すると、周囲の生態系を破壊する危険な生物である。コイと同様に強い生命力と高い繁殖能力を持ち、最も厄介な繁殖型水生生物の1つとみなす専門家もいるのだ。
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雑学まとめ
今回はコイについての雑学をご紹介した。外来生物が生態系を破壊するとして問題視されることが多いが、日本の在来種のコイのほうが、ほとんどの外来生物よりも厄介なのは驚きだろう。
問題視されるブラックバスと同じく、コイは侵略的外来種ワースト100に入っているのである。
日本にはもともと野生のコイが多いが、安易にコイを放流すると、日本の川でも生態系に与える影響は甚大だという。コイの仲間である金魚の大量発生が問題になることも多い。たとえ昔からいる魚だとしても、安易に放流すると大変なことになる場合があるのだ。
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