ゴールデンウイーク・お盆・年末年始、長期の休暇は学校や仕事から解放され、羽を伸ばせる貴重な時間である一方、遠出を考える人をほぼ100%といっていいほど悩ませるのが渋滞だ。
現代では渋滞はもはや現象として捉えられ、偶発的なものではなく、人が車に乗って移動する以上、自然発生するものだといわれている。
実はこの渋滞による日本の経済損失は12兆円ともいわれており、日本経済に大きな被害を与えている。これはなんとかせねばと立ち上がった物理学者・西成活裕氏が「渋滞学」という新たな研究分野を発展させ、研究を重ねた結果、アリの行列に渋滞解消のヒントを得たという。
アリの行列を見たことがある方は多いと思うが、アリの行列が渋滞しているところはあまり見たことがないのではなかろうか。何を隠そう、今回はアリの行列についての雑学だ。
そう! アリは渋滞しないのだ!
【動物雑学】アリの行列は渋滞しないのはなぜ?
【雑学解説】アリの行列にヒントアリ!?渋滞しないメカニズム
まず、知っておきたいのは渋滞のメカニズムだ。当たり前のことだが、人間が運転する車は人間の意志によって動いている。そして、渋滞を作る原因はこの人間の意識の中にある。
高速道路渋滞の主な発生地点はザク部(下り坂から上り坂に変わる谷の部分)・トンネルの入口付近・合流地点・料金所で、共通して意識的または無意識的に速度を落とす地点であることがわかる。
たとえばザク部では下り坂を降りた車が、上り坂に差し掛かった際に必然的に速度が落ちる。後続の車は上り坂に差し掛かる前の車との車間距離が詰まってしまい、自身も速度を落とすためにブレーキを踏む。
以降、後続の車は車間距離を詰めつつ、ブレーキを踏んでいくことになるのだが、このブレーキの連鎖が自然渋滞発生の原因である。
しかし、アリの行列だってザク部などがあれば渋滞するのでは? なぜアリの行列には渋滞が発生しないのだろうか?
これは移動しているのが「人が運転する車」と「アリ本体」という操作性の違いもあるが、大きな違いは車間距離である。
我々人間は道路が混雑してくると、少しでも早く目的地に着きたいという気持ちでついつい車間距離を詰めてしまいがちであるが、アリは混んできても車間距離… もとい蟻間距離を詰めないのだ。
そのため、アリの行列は前を行くアリにゆったりと余裕をもって後続が続くため、加減速の判断がしやすく、前のアリが減速しても後ろが詰まることはない。これが、アリが渋滞しないメカニズムである。
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【追加雑学】脱渋滞に役立つ「ACC」とは
車の運転をするすべての人が、アリのように車間距離を意識すればこの世界から渋滞はなくなるのかもしれない。これを叶えてくれそうなのが、自動運転装置「ACC」だ。
ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)は正式名称を「定速走行・車間距離制御装置」というもので、その名の通り、車間距離を一定に自動走行してくれる機能である。一定の車間距離をとってくれることも魅力的だが、最大の武器はブレーキの判断スピードである。
たとえば、前の車がブレーキを踏んで速度を落としたとき、後ろの車がブレーキを踏むまでに人間の判断スピードでは1秒以上かかる、遅い人では5秒以上ともいわれている。1台の車が1秒遅れると、その後ろの車はそれ以上に遅れることとなり、この連鎖により渋滞があっという間に広がっていく。
この判断スピードがACCの場合0.5秒以内で処理できるため、後続の車もACC搭載であれば0.5秒以上遅れることはなく、一定の車間距離が保たれる。これにより渋滞の発生を防ぐことができるのだ。
現状では高級車などにしか搭載されていないが、やがてほとんどの車両に搭載される時代になれば、渋滞はなくなっているかもしれない。
雑学まとめ
今回はアリが渋滞しない理由を、雑学として紹介してきた。
急いでいるとどうしても詰めたくなってしまう車間距離だが、実は車間距離に余裕をもつことが渋滞解消に繋がるとは、まさに急がば回れである。多くの車が車間距離を詰める中、詰めない車が一台でもあれば、その後ろの渋滞は少なからず解消されるということだ。
週末など、車で出かけた際は車間距離を一定に保つ運転を試してみて欲しい。
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